零式輸送機、満州の空を飛ぶ。

２両の空挺戦車、奮戦す！

奉天飛行場からの離陸。

　そのころ、奉天飛行場では・・・
「いいか、ワイヤーは確実に繋いだか？」
　「確認してます。」
「グライダー操縦士は？」
　「すでに、乗り込んでます。」
「うむ。」
　「こちら、藤堂だ。」
「ハイ、グライダーのシンドウです。」
　「輸送機との回線の再確認だ。」
「いいか、ワイヤーが切れたら降下しかできないからな。」
　空挺戦車のグライダーは降下しかできない。
理由は重いからである。
　上昇気を機体がつかんでも無理なのだ。
グライダーのワイヤーは零式輸送機とグライダーの２ヶ所で切断するのである。
　でないと、ワイヤーの重さが負担でからだ。
グライダーは空挺戦車の他には空中魚雷を搬送することができるのだ。（魚雷の投下は魚雷用の翼がある。）
　今回は、空挺戦車である。
戦車の乗組員は空挺戦車内に待機だ。
　グライダーの操縦士は降下したら・・・グライダーの保守点検が役目である。
なぜなら、このグライダーは繰り返し使えるからである。
　もし、最悪の事態なら・・・零式輸送機に再度、牽引して飛び立つこともできるのだ。
満州平原なら可能なのだ。
　そのために、零式輸送機は主脚が太くて頑丈に造ってあるのだ。
もちろん、引き込み式ではあるが・・・太い支柱なので半分しか主脚が入らないのである。

　「司令、準備できました。」「うむ。」
藤堂司令が、「１番機、２番機に次ぐ。」
　「敵は新型T-26と思われる。」「油断するな。」
「では、諸君らの健闘を祈る。」
　無線機のマイクを置きながら司令は、次の指示を出す。
「燃料輸送隊はハルピンへと指示を出せ。」「了解です。」
　零式輸送機が２両の空挺戦車を・・・ハルピンへ空輸、それと同時に輸送隊のトラックが奉天からハルピンへである。
　つまり、空挺戦車の補給である。
戦いは補給が切れたら負けるのだ。
　日本軍も先の大戦では、米軍へ痛い目にあってるのである。
補給の輸送船を米軍の潜水艦に沈めらまくったからだ。
　日本軍は民間人を攻撃なんて、しなかったんだが・・・米軍は日本の民間人や老人、幼児までも殺しまくったのだ。
　なんせ、白人は日本人を黄色い猿としかみてないからね・・・
「離陸を許可する。」と、管制塔からの指示が飛ぶ。
　スロット全開で、「ブ～ン。」が「ゴーーーーーッ。」と、エンジンはフル回転だ。
スルスルと機体が進む、やがてワイヤで結ばれたグライダーが曳かれる。
　エプロンを出て、滑走路へ・・・
一旦停止して、グライダーの様子を確認だ。
　「行くぞ。」と、機長がフロットのレバーを倒した。
速度２６０キロまで出ないと車輪は浮かない。
　グライダーをつないでるからか・・・なかなか浮かない輸送機だ。
「くそっ、ブーストを駆けろ。」と、操縦桿を握り叫ぶ機長だ。
　コパイ（副操縦士）がブーストレバーを引いた。
途端に、エンジン回転がレッドゾーンだ。
　時間制限はあるが・・・最高２３００馬力の１８気筒誉エンジンが吠える。
「ゴーーーーーッ。」と、双発エンジンのハミングで零式輸送機はグライダーをつないで・・・空へ・・・浮いたのだ。
　「ブースト解除、グライダーの様子確認だ。」と、次々と指示を機長がだす。
「こちら、１号グライダーだ。」「全員、異常なし。」「２号、同じ。」
　「１号機了解。」「２号機了解。」
２機の零式輸送機は空挺戦車搭載グライダーをつないで・・・ハルピンを目指す・・・