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国境警備が・・・おろそかになりかねないぞ。

満州国、国境警備隊①

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 「おい、時間だぞ。」 「うむ。」
「おい、時間だって言ってるじゃないか。」 「うむ。」
 「こいつ、うわごとで・・・」 「遅くなるじゃないかっ。」と、まだ寝てる仲間の頭を揺さぶる。
さすがに、頭を揺さぶられれば・・・起きざるを得ないのだ。
 「う、う、ごめん。」
「まあ、いいから・・・はやくしろ。」 「うん。」
 もぞもぞと、寝台から・・・寝台といっても質素なモノだ。
なんせ、ソ連軍の砲撃で宿舎がヤラれて・・・仮の宿だからである。
 「ふう・・・さすがに冷えるな。」
満州でもモンモンハン近郊は北方だ。
 温暖な気候ではない。
どちらかというと・・・住みたくはない場所だ。
 「う、う、奉天が・・・」と、故郷を懐かしむ兵卒の永琳君だ。
騎馬隊志願だったが・・・採用試験で落とされて・・・国境警備隊へ・・・
 それでも、雇用が少ない満州国では勝ち組だ。
なぜなら、安定した兵士という仕事だからだ。
 遊牧は天候や家畜に左右されやすい、休みも無い。
なぜなら、家畜に休みはないからだ。
 畜産業は休みが無いと、同じだ。
家畜にエサを与えないと・・・ダメだからである。
 ところが、警備隊は7日に1度の休みがあるのだ。
勤務は24時間を3班に分けて、8時間交代だ。
 基本、単独の警備はダメなのだ。
単独だと・・・ソ連軍に殺られたら・・・知らせる隊員がいなくなるからだ。
 それで、片方が死んでも・・・相棒が・・・

 最近になり、通信機なる最新の装備が日本軍から配備された。
それは、背中に背負うが・・・重いんだが・・・
 その通信機なるモノは危険信号を警備隊へ電波という・・・眼に見えない魔法のようなモノでしらせることができるとか・・・
 それで、一人が敵兵へ追撃を・・・片方が警報電波を通信機なる装置から・・・発振するのである。
さすれば、その危険信号が警備隊へ・・・警備隊から奉天市の本部へ伝わるのだそうだ。
 「遅いじゃないか。」と、歩哨に立ってる仲間がわめく。
「すまん、すまん。」と、あやまるだけだ、言い訳すると怒られるからだ。
 「ほい、通信機だ。」と、渡される機械を肩に担ぐ。
「う、う、重っ!」 「なにを、いまさら。」
 「いいかげんに、慣れろよな。」と、伍長が苦言だ。
オレは単なるヒラの兵卒だからだ。
 最低、1年は勤務しないと・・・伍長にはなれない。
「いいか、奉天で大演習がある。」「それをスパイしにソ連軍がくるやもしれん。」
 「用心するようにと言われたばかりだぞ。」
「あ、あ、気を付けるよ。」と、永琳君だ。
 重い通信機が肩に喰い込む。 ガマンである。
通信機があるから・・・ソ連軍の侵攻を即・知らせることができるからだ。
 いままでは、走って知らせていたからだ。
それも、重い歩兵銃を持ってである。
 絶対に捨てるなって言われている歩兵銃だ。
ソ連軍へ渡ると・・・仲間を殺す武器となるからだ。
 シナ兵は捨てたがるそうだが・・・オレ達、満州軍はシナ軍とは違うのだ。
それに、歩兵銃は三八式歩兵銃といって・・・あの、日本軍と同じ武器なのだ。
 日本軍の印が入ってるのだ。
隊長から直に渡されてときは・・・感動に眼が潤んだほどだ。
 ソ連軍の銃とは雲泥の差なのだ。
聞くところでは、欧米の銃より頑丈だそうだ。
 「おい、明るくなってきたぞ。」と、伍長が日の出を・・・
「ん、なんか聞こえたが・・・気の所為かな?」と、伍長が・・・
 と、その時だ。
「ビューーーーーン。」と、銃弾が飛ぶ・・・
 「おい、通信機は?」と、伍長が叫ぶ。
「ハイ、用意します。」と、肩から降ろして・・・
 「早くしろ、敵の銃撃だ。」「伏せろ。」
「どこから、狙ってるんだ。」「わからんぞ。」
 伍長が双眼鏡で・・・しかし、薄暮時だ、イチ番見えにくい頃だ。
「通信機を・・・」と、伍長が叫ぶ。
 「ハイ、だだいま。」と、通信機を・・・
「おい、通信機が・・・」と、伍長が・・・
 なんと、狙撃されたのは・・・通信機だ。
オレが狙撃されたと、思っていたが・・・通信機に穴が開いてるのだ。
 「どうする?」と、伍長がいう。
「私が、ここで踏ん張ります。」と、兵卒の身分だからいうしかない。
 「それでは、おまえが死んでしまうぞ。」
「でも、知らせないと・・・」
 「おまえが、行け。」「おまえの方が足が速い。」と、伍長がいう。
「でないと、警備隊が全滅だ。」
 「はやくしろ、これは命令だ。」
「銃は、オレが予備に使うから置いてけ!」
 つまり、弾倉を替える手間が省けるからだ。
三八式は5連発だ。
 5発、撃ったら弾倉を交換せなばならない。
それが、数秒の手間が・・・ソ連軍は、そこを尽くのである。
 「はやくしろ。」と、怒鳴る・・・
無言で銃を上官へ渡して・・・・
 警備隊へ・・・走った・・・
満州平原で育ったオレだ。
 騎馬隊にあこがれたが・・・採用されなかった悔しさで・・・走る。
騎馬に負けるもんかっ!
 
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