零式輸送機、満州の空を飛ぶ。

放牧しか無い国だって聞いたんだが、これが満州国か！

欧州へ満州国を魅せる・・・①

　大演習を観戦するために、わざわざ欧州から訪満したお歴々は・・・大連港が近代的なことに驚いていた。
「たしか、放牧が主な産業だったかと・・・」と、唖然とするお偉方である。
　訪満にあたり、事前に満州国たる国の知識は得てきたつもりだったんだが・・・
「これでは、我が国と変わらんでは無いか・・・」と、驚くフランス副大統領である。
　「ふん、まあまあだな・・・」と、ドイツ帝国の武官がうそぶく。
各国は観戦者として、当然に武官も同行させている。
　武官とは、軍人の役人みたいなものだ。
戦争などには、他国から観戦武官なる者が・・・
　日露戦争での日本海海戦にも、南米のアルゼンチンから観戦武官が・・・もちろん、観戦するだけである。
そして、なかなか詳しいレポートを記している。
　日露戦争での日本海海戦ほどの圧倒的勝利は有史以来・・・はじめてなのである。
各国の軍艦が、我が国へ・・・必ず、東郷神社へ参拝すると・・・勝ちにあやかりたいからである。
　それほどの、圧倒的勝利だったのだ。

　大連港の近代的なことに驚く各国の武官たちだったが・・・
奉天駅で、さらに腰を抜かすほど・・・驚くことに・・・
　大連港の桟橋から、すぐにある大連駅へ・・・歩いて数分だ。
駅のホームで・・・待ってる・・・と、到着時間に数秒の誤差で・・・奉天市までの送迎列車が・・・
　欧州の各国は鉄道が主な交通手段だった。
それで、各国は国の威信を示すために、最先端の機関車を開発して・・・他国へ優位を示そうと・・・
　それが、崩れた瞬間であった。
「・・・・・・」と、無言で入線してきた機関車と列車を・・・みつめる。（到着時間に数秒遅れたんだが・・）
　スマートな外観、そして・・・いかにも速度が速そうな・・・でかい動輪。
静かだが、力強い蒸気の音。
　日本の重工業を半分バカにしていた欧州の腰が高い・・・貴族どもが腰が砕けた瞬間であった。
「では、ご案内いたします。」と、ポーターが荷物を・・・
　車掌が客車のドアの外で案内を・・・
「うむ、ん、そうだな・・・」と、応じる欧州貴族連中である。
　まさか、これは満州では無く日本のだろうが・・・マジなのか・・・
王族や来賓の貴族連中がコンパートメント（来賓用個室）へ・・・
　「特急亜細亜号、ご乗車ありがとうございます。」「次は奉天市駅、午後１時ちょうどの到着であります。」
そして、英語での放送が～
　「午前１１時、発車いたします。」
普通なら、「ガタン。」と、機械音がして数回動輪が空転して動き出すのだが・・・
　なんも、ショックが無い。
しかし、ホームは移動している。
　こちらが停止して、ホームが動いてるように見えるのだ。
あまりに、動くときのショックが無いから・・・逆にホームが動いてるかのように・・・
　欧州貴族どもの期待と驚愕を乗せて・・・亜細亜号パシナ型は奉天駅へ・・・