零式輸送機、満州の空を飛ぶ。

ゆみすけ

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実戦より苦しい演習だ!

訓練では、いくら泣いても死にはしない・・・

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 満州鉄道のタンク貨車が大連港からガソリンを運んできてくれた。
戦車のエンジンはジーゼルエンジンを使う日本軍だが・・・100式は大馬力(1200馬力)の飛行機用ガソリンエンジンを使っている。
 それで、燃料はガソリンなのだ。
ジーゼルはガソリンエンジンほど高馬力は造るのが難しいからだ。
 35トン近い100式戦車を走らせるには・・・飛行機用のエンジンが最適だったのだ。
エンジンはドイツ帝国のダイムラー社の12気筒液冷エンジンが原型だ。
 しかし、液冷は構造が複雑で整備も難しいから・・・カンタンな空冷へ改良したものだ。
そして、燃料噴射ポンプはカンタンなキャブレター方式へ・・・
 ドイツ帝国の技師が知ったら・・・卒倒しそうな改変なのである。
しかし、満州平原での修理を想像するに・・・カンタンな構造は必須なのである。
 兵器や武器は構造がカンタンな方が使いやすくて・・・修理も素人でもOKだ。
現に、100式はエンコしても戦車隊員らでカンタンな修理はできそうだ。
 
 演習場へ100式戦車が12両並んでいる。
そして、1両に4名の乗員が、合計48名整列している。
 「いいかっ、お前たちは満州でのソ連軍への切り札だ。」
「まず、先陣として空挺部隊が露スケの正面に降下する。」
 「そして、敵を足止めするのだ。」
「しかし、空挺部隊では戦車は荷が重いかもしれない。」
 「そこで、我ら100式戦車中隊の出番となるのだ。」
「いいか、空挺部隊は輸送機で数時間で前線だ。」
 「だが、戦車は最高速度が40キロだ。」
「奉天からモンモンハンまで飛ばしても半日はかかるだろう。」
 「だが、訓練で時間短縮はできるはずである。」
「我が皇軍は、恐れ多くも今上陛下から、わざわざ任命されて満州の地に派遣されたのである。」
 「万が一にも敗れては、恐れ多くも今上陛下へ顔向けができない。」
「我が皇軍に敗北の2字は無いのである。」
 「いいかっ、日本の恥にならないことを希望する。」
戦車隊司令が激を飛ばした。
 これは、下手な事はできないな・・・という隊員らの顔だ。
日本は恥の文化である。
 武士が恥をかいたなら・・・切腹ものなのだ。
つまり、腹切って詫びるのだ。
 これが、平民なら逐電(夜逃げ)だな・・・

 軍隊の訓練は行軍に始まり、行軍に終わるのである。
まずは、隊長戦車が先頭になり・・・行進する訓練である。
 一定の速度で走行しなければならない。
しかし、しかしだ。
 ここは演習場である。
つまり、満州平原のままなのだ。
 凹凸が少なくないのだ。
それで、戦車は遅くなったりするのだ。
 戦車の間隔が開けば・・・
しかし、戦車から周囲は見にくいものだ。
 窓は小さくて・・・視界は狭い・・・
「おい、3号。」「ハイ、3号です。」
 「おまえ、遅れてるぞ。」
「ハイ、わかりました。」
 「はやく、間隔を他と同じに・・・」
「なにやってるんだ。」
 「遅いことなら猫でもやるぞ。」(じゃあ、ネコにやらせてみろ・・・なんて、言えない。)
操縦士がアクセルを・・・
 車長が、「おい、前にぶつかるぞ。」と、操縦士の肩を足先でツツク。
「くそっ、八九なら・・・」と、苦しい言い訳だ。
 「100の6段ミッションは難しいんだ。」と、苦しい言い訳を・・・
八九式は3段ミッションでカンタンだったんだが・・・
 1200馬力の2500prmのエンジンを戦車で使えるようにした苦肉の策が6段ミッションなのである。
それで、荒れ地での巡航速度は40キロ毎時なのである。
 荒れ地での40キロなら・・・平坦な道路なら・・・70キロ毎時は出そうだ。

 午前中いっぱいを行軍訓練で潰した隊員らである。
「午後からは、凹凸走破訓練だ。」と、指示がでる。
 演習場には凹凸が造成してあるのだ。
もちろん、わざと造成したわけではなく・・・元からの凹凸なんだが・・・
 「いいか、無理すると履帯を切ってしまいかねない。」
「力技で走破しようとするな。」「あくまで自然体だぞ。」
 なんや、理解不能な説明だ。
なぜなら説明する幹部も、わかっていないからだ。
 「この訓練は履帯を切らずに凹凸を越える訓練だ。」
「1両づつ始めっ!」と、指示が飛ぶ。
 最初の100式が凹凸へ進む。
地面が凹んでから、急斜面の丘があるようだ。
 凹みに履帯を突っ込むと・・・でられなくなるのである。
どうして、わかるかって?
 それは、昨日に隊長車で経験してるからである。
、もちろん、内緒の試しなのだ。
部下に恥をみせたくないからね。
 
 1番目の戦車が凹みから・・・急斜面へ・・・
やはり、凹みへ突っ込んでしまったようだ・・・
 「なにやってるんだ。」
「バックして、やり直し。」と、偉そうに指示する隊長である。
 ところが、なかなかバックしても地面がぬかるんで・・・バックできない。
凹んだところは湿っていることが多いからだ。
 地下水がにじんできてるかも・・・だ。
「ぐずぐずしてると、露スケがくるぞ。」
 「2号車、ワイヤーで牽引。」と、指示する隊長だ。
「いいか、戦場は敵が、いつどこからかわからんからな。」
 「周りの戦車は見てないで、できることをするんだ。」
こうして、連携プレーが身についていくのである。
 「いいかっ、訓練ではまず戦死することは無い。」
「訓練は、やりすぎるということは無いんだ。」
 「・・・・・」なんも、言う元気がない隊員らだ。
マジで、疲れると・・・無言になるのだ。
 言葉も、しゃべれなくなるのだ。
こうして、無双日本軍戦車隊が・・・できあがっていくのだ。
 
 こうして、戦車隊の訓練もサマになってきたころ・・・
とうとう、空挺部隊との連携訓練が・・・・
 「いいか、設定は・・・」
副官が、作戦大要を述べる。
 「はじめに、定番の国境警備隊からの急報だ。」
「それで、奉天飛行場から九七式改が飛び立つ。」
 「それは、偵察だ。」
「何事も、偵察してからだからな。」
 「そして、零式が空挺部隊を乗せて・・・」
「演習場へのマル印へ降下する。」
 「その後、状況を戦車隊へ無線だ。」
「戦車隊は状況で作戦を都度変更すること。」
 「いいか、前線ではなにがあるかわからん。」
「その都度、適宜作戦変更はある。」
 「それに柔軟に対応する訓練だ。」
「なお、模擬弾か必ず確認を怠るな。」
 「味方を銃撃したら、罰ゲーでは済まんぞ。」
そうなのだ、味方を銃撃したら、良くて独房、悪くすれば軍事法廷の被告人なのだ。
 模擬弾ならゴムかプラなので、痛い~で済む。
実弾なら・・・最低でも45口径だから・・・出血多量で死だ・・・
 よほど運が良くないと助からないだろう。
ちなみに、戦車の模擬砲弾は派手な音が出るだけなんだが・・・
 空挺部隊の擲弾筒は火薬の替わりの噴煙が出るだけだ。
戦車用に模擬砲弾を研究中だが・・・なかなか、いい弾ができないのだそうだ。
 こうして、訓練は夕方に終了したのだった・・・

 戦車隊は隊列をつくり・・・車庫がある駐屯地へ・・・車庫と言っても単なる空き地だ。
24時間、満州軍の衛兵が守ってくれている。
 ようは、シナのスパイやソ連軍の手下のモンゴルスパイが爆弾や地雷を仕掛ける可能性があるからだ。
実は、以前に空挺部隊が痛い目に会ってるのだ。
 食堂に爆弾を仕掛けられて・・・食堂のおばちゃんが黒焦げに・・・
内地の火傷専門の病院へ搬送されて・・・リハビリ中らしいが・・・
 それで、モンゴル人のソ連軍スパイが逮捕されたんだが・・・拘留中に、何者かに毒殺されて・・・捜査は暗礁へ・・・
 食事に青酸カリが混ざっていたらしいが・・・どこで混入したかは・・・謎だ。
疑えばキリがないからだ。
 それに懲りた日本軍は歩哨を満州国へ要求したのだ。
つまり、門番である。
 許可証の無い者は、満州皇帝でもダメだ、という日本政府のお墨付きが・・・
それで、満州人には威張り腐ってるらしいが・・・まあ、防犯になれば、いいのだ。
 門番が戦車隊を見て・・・遮断機を上げる。
もちろん、敬礼である。
 しかし、イマイチなんだよね・・・満州人の敬礼は?
やはり、大和魂がある日本軍人とは雲泥の差があるようだ。
 ちなみに、歩哨は2名組で4時間交代の24時間制である。
つまり、満州国民の雇用に貢献してるのだ。
 なんせ、全員で120名ほどいるからだ。
門は1ヶ所ではないからだ。
 満州軍の騎馬隊の退役軍人の雇用に役だってるそうだ。
どこも、利権がからんでくる・・・
 ソ連軍の脅威は満州国永遠の課題でもあるのだ。
駐屯地の歩哨は、前線で戦わないから・・・退役軍人には人気があるようだ。
 なぜなら、三八歩兵銃を担いでるだけだからである。
もちろん、銃弾は装填してるそうだ。
 どこからソ連軍のスパイが・・・入り込んでくるか、わからないからね。
確か、兵站の輸送トラックの荷に紛れ込んで入ろうとしたスパイが串刺しに・・・・
 なんせ、ワンコが門には配備されてるからだ。
ドイツ軍から学んだそうなのだ。
 つまり、軍用犬である。
ドイツ軍はシェパード犬だが・・・我が皇軍は秋田犬だ。
 マタギが対熊用に育てたらしいが・・・熊の露スケには・・・じゅうぶんである。
「よし、明日は合同訓練だ。」
 「各員、気合を入れてかかれ!」「おう。」
こうして、戦車隊宿舎の夜は更けるのであった・・・
 

 
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