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試合開始だ。
ベント開け、潜航だ。
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開始の合図の花火が上がる。 「ベント開け、潜航だ。」 ルーデッツ艦長が叫ぶ。 ヨツビシ重工が指導した、グルップ製Uボートが動き出した。 そして、鎌倉造船製のイ号潜水艦も、艦長の佐藤少佐が潜航を指示する。 次々とハッチから飛びこむ乗員らだ。 これは、あらかじめ甲板に居る人数が決められているのだ。 ハッチから、乗り込んでいく過程も試合なのだ。 「ほう、いまのところ差が無いぞ。」 と見物していた軍関係者だ。 「かなり、独逸帝国は気合が入っとるな。」 との感想だ。 「今から、これでは日本海軍も危ういぞ。」 との警告をだしている。 常勝日本海軍に暗雲か・・・ 「しかし、ヤケに速いぞ。」 と独逸帝国Uボートを評価する。 なお、現段階ではヨツビシ重工がUボート建造にかかわったことは内密である。 それは、ハンナとフローラとの内密の話であり、公にはしない取り決めである。 ヨツビシも総理からの話があったからである。 バレたら、総理もタダではすまない。 おそらく、野党からの突き上げで、政権交代もありうるのだ。 しかし、ヨツビシの助力は、独逸帝国への貸しになるから、民主化への介入ができるのである。 しかし、そんな内密な話は公にはできはしないのだ。 「深度50です。」 「そうか、何秒だ?」 「28秒です。」 「まあ、まあ、だな。」 とルーデッツ艦長だ。 そして、イ号だ。 「いま、深度50です。」 「何秒だ。」 「28です。」 佐藤少佐が、「くそっ、トントンか。」 と悔しがる。 また、ドローだ。 海上では、空母の甲板で見物人が、「また、引き分けか。」 「また、同じかよ。」 「出来レースじゃないだろうな。」 と疑惑が深まる声が大きい。 そして、独逸と日本潜水艦が浮上してきた。 今度は、速度検査である。 海上走行、海中での速度の競技だ。 海上は見れば、わかるが。 海中は、見れないから、潜水艦に浮遊ブイを附けて海上に出しての競技だ。 まずは、海上での競技だ。 イタリーVSベトナムやフランスVS米国は勝負が潜航時間で決まったが、独逸VS日本はドローなのだ、他の競技での優劣の決着となるのである。 海上走行速度もドローだ。 では、海中は・・・ これも、ドローだ。 まあ、双方とも日本の技術で造船したからだが。 そして、とうとう競技は、互いのソナーでの潜水艦の模擬戦闘にまで、なったのだ。 「これほどまでに、独逸の新型は?」 と驚く佐藤少佐だ。 まあ、ヨツビシのUボートへの助力は、しらないからだが。 模擬戦闘は、各見学者に画像を見せての海中の戦いである。 まあ、ゲーム画面を見てるようだが・・・ 魚雷は爆薬が抜いてあり、それが、艦に当たった段階で撃沈判定だ。 海中で、艦に穴が開けば、それで、終了だからだ。 双方とも、ソナーを使って探り合いだ。 もちろん、パッシブではない。 あくまで、アクテブソナーで、相手の推進音などを探るのである。 「まだか、まだ、わからんか。」 佐藤少佐は独逸のUボートが、これほど静穏とは・・・ 「とても、わかりそうに・・・」 ソナー員は、あせる。 独逸帝国も同じだ。 「イ号の場所は、まだわからんか?」 「いま、探っていますが・・・」 ところで、イ号のソナーは日本の電機メカーー製だ。 まあ、当然だな。 そして、Uボートのソナーは、グルップ製ではない。 とても、独逸製では、装備に間に合わないのだ。 それで、苦肉の策だ。 そうなのだ、双方の潜水艦はソナーが、同じ会社の物であるのだ。 だから、索敵能力が同じなのだ。 「これでは、新兵器である、海中機雷も使えないではないか。」 とルーデッツ艦長だ。 「もっと、感度を上げろ。」 と指示するが、「あまり、上げると海中の魚や生物の雑音が・・・」 そうなのだ、わからん、雑音が聞こえるだけなのだ。 「えっ、待ってください、今・・靴音が・・・」 なんと、艦内を歩くおとが 気を附けろ、イ号潜水艦、艦内を歩く音が漏れてるぞ・・・ 「その、位置をさぐれ。」 とルーデッツ艦長だ。 イ号、危うし・・・・・
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