184 / 497
これは、デゴイだ!
まんまと、乗せられるところだった。
しおりを挟む
「Uボートは、そのまま上を通り過ぎます。」 「うむ。」 「まてよ、っ。」 アラセ艦長はUボートのスクリュー音を聞きながら・・・ 「普通すぎる、これでは、シナのUボートと同じではないか。」 仮にも日本の潜水艦乗りが運用している潜水艦だ。 これでは、まるでデゴイではないか。 「まてよ、これはデゴイだ、ヤラれたぞ。」 「安穏に構えていてはヤラれるぞ。」 「あまりに、動きが形式的過ぎるのだ。」 「さすが、艦長です。」 「誉めても、何も出んぞ。」 「では、Uボートは?」 「オレの予想なら、同じく海底で隠れているはずだ。」 「それでは、我が方と同じではないですか。」 「まあ、同じ日本人だ、考えることは似てくるからな。」 「では、どうしますか、これではラチがあきませんが。」 「それを、これから考えるんさ。」 神山潜水艦は海底で、作戦思案中だ。 さて、デゴイで、相手を煙にまいたUボートだ。 「ふむ、神山に動きはないか。」 「いまのところは。」 「デゴイに感づいたんだな。」 「相手は対馬基地だ、最前線だ。」 「それなりの猛者ばかりだ。」 「どうしますか?」 と副官だ。 艦長は独逸技師に問うた。 「海底に鎮座して、制限は?」 「そうですね、二酸化炭素濃度しだいですが。」 現在、動力を切っているから、二酸化炭素が還元できないのだ。 動力を動かせば空気はキレイになるが、神山潜水艦にUボートの動きが悟られるのだ。 まあ、それは双方が同じだ。 神山潜水艦も動力を切って海底に鎮座だろう。 「総員、なるべく動くな、酸素消費を減らせ。」 とUボートのカトリ艦長は指令した。 しかし、これでは我慢比べだ。 潜水艦は動力で、二酸化炭素を海中に溶けさせていた。 そして、空気をクリーンに保つのである。 動力は無音ではない、それなりの音がでるのだ。 それで、双方は、相手に悟られないように動力を切ったのである。 これでは、第二次大戦で駆逐艦の爆雷攻撃から逃れる潜水艦と同じだ。 「二酸化炭素吸収缶を開けろ。」 「いいか、音を出すなよ。」 先に、動いた方が負けるのだ。 潜水艦乗りは忍耐と我慢ができないと務まらない。 呉の海軍潜水艦学校で、我慢と忍耐を先輩に叩き込まれたころが懐かしい・・・ 「艦長、ひとつ提案がありますが。」 と独逸技師が進言する。 「なにか、案でもあるのか?」 「え、え、Uボートは艦尾魚雷発射管があります。」 「ふむ。」 「そこから、忍者デゴイを有線で操り、さも海底鎮座から動き出したように装うのです。」 「そうか、では忍者デゴイとは?」 「有線で操作できるデゴイ魚雷ですが、発射管から手作業で排出すれば音はでません。」 魚雷は撃つとき発射音が出る。 これは、海水を発射管に入れるとき出るものだ。 まあ、ゴボみたいな音だ。 それを、機械ではなく手作業のポンプで、エッチラとやれば音はでないのだ。 ここは、艦尾魚雷室で独逸技師が指導して作業することとなった。 そこまでは、教養本に記述がないからだ。 先手はUボートから打つようだ・・・・・
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
西涼女侠伝
水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超
舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。
役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。
家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。
ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。
荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。
主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。
三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)
涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。
永艦の戦い
みたろ
歴史・時代
時に1936年。日本はロンドン海軍軍縮条約の失効を2年後を控え、対英米海軍が建造するであろう新型戦艦に対抗するために50cm砲の戦艦と45cm砲のW超巨大戦艦を作ろうとした。その設計を担当した話である。
(フィクションです。)
蒼穹(そら)に紅~天翔る無敵皇女の冒険~ 四の巻
初音幾生
歴史・時代
日本がイギリスの位置にある、そんな架空戦記的な小説です。
1940年10月、帝都空襲の報復に、連合艦隊はアイスランド攻略を目指す。
霧深き北海で戦艦や空母が激突する!
「寒いのは苦手だよ」
「小説家になろう」と同時公開。
第四巻全23話
本能のままに
揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった
もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください!
※更新は不定期になると思います。
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
蒼雷の艦隊
和蘭芹わこ
歴史・時代
第五回歴史時代小説大賞に応募しています。
よろしければ、お気に入り登録と投票是非宜しくお願いします。
一九四二年、三月二日。
スラバヤ沖海戦中に、英国の軍兵四二二人が、駆逐艦『雷』によって救助され、その命を助けられた。
雷艦長、その名は「工藤俊作」。
身長一八八センチの大柄な身体……ではなく、その姿は一三○センチにも満たない身体であった。
これ程までに小さな身体で、一体どういう風に指示を送ったのか。
これは、史実とは少し違う、そんな小さな艦長の物語。
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる