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トヨス自動車。
どうして、トヨスが・・・
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鎌倉造船会長は、唖然とした。 あの、天下のトヨス自動車が潜水艦比べに参加と新聞にデカデカと描いてある。 三段抜きだ。 「相手が悪いわ。」 なんせ、天下のトヨスだ、以前にコーヒーを裏で廻してもらうのに苦労した経験があるからだ。 (イ号潜水艦にコーヒーを入れた件。) あれから、潜水艦艦長らの評判も上々なのだ。 部下の動きが違うとか。 兵器より、コーヒーかと思ったほどだ。 しかし、戦場で生きる意欲はウマイ飯にかぎる。 それは、兵でなくともわかるのだ。 本来は自動車会社だ。 それが、あのコーヒーを開発したのだ。 おそらく、最大のライバルだ、ヨツビシなぞ相手にもならんだろう。 下手を打つと鎌倉が落選だ。 どうする、どうすれば。 これ以上、須藤博士に負担はかけられない。 海底軍艦開発は鎌倉とて公にできない軍事機密だ。 しかし、相手がトヨスだ、海底軍艦のノウハウなしでは勝てはしない。 「総理に許可を取るか。」 会長は総理にアポだ。 「わしだが。」 「あの、鎌倉ですが・・・」 「お久しぶりです、先日の会合ではお世話に・・」 「いえ、あの総理、潜水艦比べの。」 「あ、あ、トヨスの件ですか。」 「え、え、・・・」 「しかし、超伝導電磁モーターは海底軍艦だけの。」 「わかりますが、相手がトヨスですから。」 「うむ、すこし時間をいただきたい。」 「そうですか、では後ほど。」 会長は、「あきらめざるをえんか。」 と落ち込んだ。 こちらは、ヨツビシ重工だ。 「なに、トヨスが、いやウチには天下の糸河博士がいるのだ、負けるもんか。」 鼻息が荒い。 なんせ、失敗から起死回生の帝王の、もう落ちないオトコ糸河先生だ。 負けるなんて思っていない。 しかし、トヨスには裏に、あのシュタイン博士が居るのだ。 あの、お局士官が妻の、泣く子も黙るオトコだ。 日本の三大科学者が競演する一大イベントとなった。 そして、米国は潜水艦比べに賞をだすと提案してきた。 つまり、米国にもカマせろだ。 とうぜん、新型イ号も米国でも運用となりそうだ。 ソ連やシナは蚊帳の外で、寂しい想いだ。 鎌倉造船米国支店は米国のアイソン博士を須藤博士のチームへ派遣した。 米国も本気のようだ。 イマドコ衛星欧州支部からは、ヨツビシへ光速演算機の開発チームを派遣するらしい。 まさに、科学者らの学問戦争となったのだ。 単なる潜水艦の話がデカくなったものだ。 新聞では、潜水艦がヨツビシだから宇宙へ飛ぶとか、トヨスが造ると陸を走るとか好き勝手に描いているが。 この騒動は、世界が日、米、英陣営で平和が保たれているとの図式が明らかと成ったのである。 現にソ連やシナは手も足もでないのだ。 指をくわえて観てるだけだ。 軍事技術で抑止力を背景に世界の戦争を防ぐ、まさに山田総理の思惑どうりになってきた。
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