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フローラの慰問
軍隊内の事故の傷病者
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ここは、ベルリンの郊外にある、軍隊病院だ。 手足を無くしたり、ゲガで満足に動けない兵隊が収容されていた。 軍隊は戦争をしなくても、訓練はかかさない。 むしろ、訓練が主だと言ってもいいくらいだ。 戦争のない平和な時代でも訓練は必要である。 孫子いわく、100年兵を育てるは、1日の戦いにある。 とくに、陸軍は歩兵が主だ。 それで、訓練で、ケガを負ったりする兵隊は少なくない。 その、傷病兵の病院だ。 とうぜんにリハビリも兼ねるのだ。 病院の広場は、歩行器や義足をつけたリハビリの兵らが日課をこなしていた。 そこに、政府のトラックと広報車が入ってきた。 「お、お、フローラさまだ。」 「また、慰問に来て下さった。」 トラックは慰問の食糧を積んでいるのである。 フローラが出迎えの病院長と話をして、中に入る。 フローラの後ろには独逸帝国の厚生省の役人が続く。 病室を院長の案内で廻るフローラだ。 病室はリハビリまでケガなどが回復していない兵が多い。 ひとり、ひとり、フローラは手を握り、励ましの言葉をかける。 落ちこぼれの無いように役人がチェックして、フローラの励ましが続く。 そして、昼食は慰問の果物や、嗜好品が配られるのだ。 その品の費用は、すべてフローラの給金から出ている。 国家予算ではない。 フローラは身分的には情報局を退職して、現在は厚生大臣である。 福祉すべてを取り仕切る大臣である。 まあ、名ばかりの大臣であり、役人が福祉や保険所などを運用しているのである。 フローラは軍事訓練や職業事故などで、働けなくなった者を慰問したり、軍隊病院の慰問を欠かさないのだ。 ちなみに、交通事故も含んでいる。 それに、独逸帝国に反対するヤカラのテロや攻撃で、ケガや身障者になった兵も含む。 そして、毎月の軍人墓地への献花も欠かさないのだ。 フローラはロンメロ夫人の役を十二分に果たしていたのだ。 それで、ロンメロも、文句なぞ、いえないのだ。 軍人が命をかけて、任務を遂行するためには、無くてはならないケアをフローラは果たしているのであった。 そのころ、日本から独逸帝国までの遠洋を航海する潜水艦イ号が1隻、呉軍港より旅立っていった。 それは、独逸帝国との不可侵条約で、潜水艦の交換を日本と独逸帝国とするためである。 ある程度、開示できる技術以外は取り外してイ号潜水艦はキール軍港を目指した。 同じ頃、独逸帝国からもUボートが日本を目指して出航しているはずだ。 遠洋航海はUボートは無理なので、給油艦が付随している。 戦時ではないから潜航することも無いのだ。 それに、潜航して他の国の領海に入ることは敵対行為であるのだ。 軍艦は、軍艦旗と国の旗を掲げなければならない。 国際法で、決まっているのである。 独逸帝国側も最新装備は外してくることは、日本側も承知であるのだ。 タヌキとキツネの騙しあいが国際社会のルールでもあるのだ。
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