伊号式潜水艦。

ゆみすけ

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これは、英軍には言えない兵器だな。

大量のケガ人が発生してしまった・・・

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 「まだ、噴煙が納まらないんだな。」と、飯山車長がイヤな予感が・・・
「いいか、周囲に注意しろっ。」「様子が変だぞ。」
 普通、エンジン音やら雑多な音が戦場はするものだからだ。
それが、エンジン音が無い・・・なんやら、わからない声が聞こえるだけだ。
 それも、叫び声ではないような・・・うめき声のような・・・
目の前の岩山を戦車が越える。
 「えっ!」と、飯山車長は固まったのだ。
目の前の絵ずらを見てである。
 ドイツ軍のⅣ号戦車が・・・整然と100両ほど・・・中隊単位で並んでいる。
まさに、それはイイとして・・・
 そこは、傷病兵の・・・多数のケガ人を介抱する・・・数人のドイツ兵が・・・
「おい、無線でケガ人多数、至急に衛生隊を呼べ。」
 衛生隊とは、戦場で疫病やケガ人に対処するための専門知識を持った国際赤十字が認めている部隊だ。
「敵は、とても攻撃できる状況ではないようだからな。」と、判断した飯山伍長である。
 
 やがて、4輪駆動のトラックから衛生兵らが・・・ヘルメットに赤十字マークがあるのだ。
もちろん、武器は持ってないのだ。
 消毒薬と包帯とモルヒネ注射をカバンに下げている。
モルヒネ注射は、助けられないケガ人の痛みを押さえて死んでいくためだ。
 ドイツ軍の戦車兵は陸軍の精鋭だ。
それで、国際法や戦時法を学んでいるし・・・無法な行為はしないようだ。
 現に、日本軍の衛生兵の指示に従ってるようだから・・・
それにしても・・・体にケガが無い者が・・・数人しか・・・
 ドイツ語が堪能なヤツに通訳をしてもらった・・・

 ドイツ兵、いわく・・・
とつぜん、頭上に変なモノが飛来して爆発したそうだ。
 その爆発の破片で戦列していたドイツ戦車隊員は、そのほとんどがケガを負ったとのことだ。
幸いに戦車ヘルメットが頭部を守ってくれたから・・・即死は無かったが・・・
 それでも、あちこちにケガを負ったモノが多数でたのだ。
「まさか、ダムダム弾ではないよな。」と、ドイツ兵が詰め寄る・・・ 
 ダムダム弾は、英軍がインドのダムダム地方で造っていた非道な殺傷弾である。
ピストルの銃弾に切れ目を入れて・・・撃たれたら、体内で粉々に弾頭が弾けるのだ。
 それで、ケガは酷くなり・・・不衛生な戦場で化膿して・・・感染症で苦しんで死ぬ兵も多かったのである。
それで、ハーグ陸戦条約で戦争での使用禁止兵器となったのだ。
 「くそっ、英軍のヤロウ、禁止されてるダムダム弾を・・・」と、悔しがるドイツ戦車兵だ。
「いくら、押されてるからと言っても、使っては国際法違反だぞ。」と、非難されるのだが・・・
 「当方は派遣軍だから、わからない。」との返答をするしかない衛生兵らである。
まさか、日本軍の新兵器の空中魚雷攻撃だ、なんて言えないからだ。
 軍事機密だし、敵に教えることはないからね・・・
しかし、衛生兵らは・・・内心、思ったのだ・・・なんて、エグイ非道な兵器なんだと・・・
 大量破壊兵器のはじまりかも・・・しれないのである。

 こうして、試射した空中魚雷は・・・とうぶん、使用禁止の措置が・・・
もちろん、空中魚雷の情報が漏れないように緘口令が・・・
 まあ、6発は使っていまったから・・・もう、現地には無いんだが・・・
ちなみに、Ⅳ号戦車は爆発の破片が降り注ぎ・・・戦車の上面装甲は薄いから・・・エンジンや砲塔に穴が開いて・・・エンジンは、点火ブラグなどの配線が切れて動かない状態だったそうだ。
 つまり、敵の戦車の足を止めることはできるようだ。
アリタ艦長は、深夜の短波無線で暗号通信を使って、地球の裏側の内地と交信がなんとかできたようだ。
 深夜は短波の電波が電離層の関係で遠距離に届くからだ。
「いいか、空中魚雷は英国にも絶対に明かすなとの厳命が出た。」
 「漏れたら、日英同盟にヒビが入りかねないからだ。」
「我ら、派遣軍は英陸軍の応援要請で駆け付けたが・・・現場へ到着したら、この状態であった。」
 「そして、ドイツ兵を手当して、Ⅳ号戦車100両は鹵獲したとするぞ。」
「いいな、諸君!」と、アリタ艦長の厳命が出たのだった。
 空中魚雷の爆発が、敵の軽装甲の車両や歩兵に与える影響は・・・紛争程度には使えないモノなのである。

 1個戦車大隊が・・・ほぼ戦力を失ってしまったのだ。
それも、橋頭堡を確保して・・・戦車を整列させて・・・ミハエル少佐が・・・お立ち台へ上がろうと・・・
 それで、ミハエル少佐もケガ人の中に居たのだった。
精鋭部隊であり、戦車ヘルメットを全員が装着していたことが戦死がでなかった理由なんだが・・・
 多量のケガ人を現場で治療は・・・とても施設がないから・・・無理だ。
それで、工作船トヨダの格納庫が解放されて・・・400人あまりの治療ベットが置かれたのである。
 英国はナイチンゲールの生まれた国だ。
ナイチンゲールは看護婦として有名だが・・・統計学を衛生医療面で普及させた偉人でもあるのだ。
 医療施設の部屋やベット数から・・・その施設の設計から・・・すべてだ。(夜廻りの回数までもだ。)
英国のお偉いさんも、ナイチンゲールには逆らえなかったという・・・背後には英国大女王様がいたからだが。
 クリミア戦争などの戦病者は、現地の野戦病院の不衛生さで感染症にかかり、その多くが死んでいくのである。
その不衛生な野戦病院を改めて、野戦病院での死亡率を劇的に改善した人物がナイチンゲールなのである。
 
 「ふむ、衛生官殿。」「なんだ。」
「戦死者がいないのは不幸中の幸いですが、なぜでしょう。」と、マツモト艦長が聞く。
 衛生官は医療免許を持っており、大尉クラスの階級だからだ(衛生兵は看護師の資格だ。)
「あ、あ、彼らの戦車兵のヘルメットが爆発から頭部を守ってくれたのだよ。」
 と、ベットの脇に置いてある戦車兵用のヘルメットを見せる。
「うわ。」「ずいぶん重たいですね。」
 「まあ、9ミリ機銃弾を防ぐらしいからね。」
「なんと、我が海軍の対空ヘルメットと同程度とは・・・」
 日本海軍は対空戦闘時に水兵用の対空帽なるヘルメットがあるが・・・
それは、敵の艦載機の機銃に耐えるヤツだ。
 つまり、7,7ミリ機銃にである。
さすが、20ミリ機関砲は無理なんだが・・・(そうなると、厚さが戦車の装甲並みだ。)
 重たくて戦闘時しか使わないが・・・
「さすが、精鋭部隊ですな、全員が軍規を守っているとは・・・」と、マツモト艦長だ。
 そして、格納庫を見廻して・・・「これを、どうするんですか。」と、聞く。
このままでは、工作船が使えないからだ。
 「船だから、このまま本国へ送還させるか・・・英軍と話し合ってるそうだが・・・」
英国側も敵の傷病者なんて・・・めんどうなだけだからだ。
 まず、文句しか言わないからだ。
特に、ドイツ兵は捕虜になると待遇の苦情を散々言いたくるそうだ。(これは、事実だ。)
 たぶん、そう教育を受けてるんだろう・・・そして、取り調べでは階級と氏名しか言わないように教育されてるのだ。
 さて、この始末は・・・どうなることやら・・・




 

 
 
 

 
 
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