伊号式潜水艦。

ゆみすけ

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上陸したら、散開しろ!

このままでは、ドーバーを抜かれるぞ~っ! 援軍は、まだかっ!

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 警報が鳴る、英陸軍の防衛戦車隊の駐屯地だ。
先日の演習で疲れて寝入っていたことも・・・原因かもしれないが・・・
 なかなか・・・集合に時間がかかっているようだ。
「おい、どうしょう。」「海から上陸用舟艇が・・・」と、オタオタするポール1等兵だ。
 見習いのマイク2等兵は、「警報は出しました。」「ポール1等兵殿、退避しましょう。」と、いうが・・・
なかなか決定できないポール1等兵だ。
 「待て、逃げたら営巣行きだぞ。」「せめて、銃弾の1発くらいは・・・」
「そんな、相手は戦車ですよ。」「銃では歯が立ちませんよ。」「今なら、退避できます。」と、マイク見習い兵卒が叫ぶ。
 海岸から上陸用舟艇の前部渡り板が開いて・・・ドイツ軍の正規Ⅳ号戦車が続々と・・・砂浜へ・・・
「いいか、散開しろ。」「一か所に、固まるな。」と、無線で的確な指示を出すミカエル少佐だ。
 海底戦車が横に並んで、水上戦車の攻撃を集中して浴びた反省だ。
さすが、ドイツ陸軍だ。
 一度、犯したミスは繰り返さないのがドイツ陸軍だ。
30分あまりで・・・100両のⅣ号戦車は浜辺へ上陸できたのだ。
 そして、舟艇はドーバー沖で戦況を見守るのである。
ドイツ軍が撤退となったら回収しなければならないからだ。
 橋頭保を構築できれば・・・キール軍港へ帰投して、補給物資を搬送することとなる予定だ。
燃料の輸送や戦車の補修部品など、欲しいモノは多々あるからだ。

 「おい、あそこに監視所があるぞ。」 先に上陸して、ドーバーの丘を走行していたⅣ号戦車が監視所を見つける。
「トーチカだから、徹甲弾だな。」「英国での最初の砲撃だ。」「外すなよ。」
 慎重に狙いをつける砲手だ。
ここで、初弾を外したら・・・ゲンを担ぐ戦車兵にとり、初弾命中は幸先がイイからだ。
 「早く、退避しましょう。」「わかってるが。」と、まだ迷ってる監視員のポールと見習いのマイクだ。
Ⅳ号が狙ってるなんて・・・夢にも思ってない・・・それより、逃げるべきか、どうしょうか・・・優柔不断なのがポール1等兵が使えない所以なのである。
 「そんなことしてると、ドイツ兵にヤラれますよ。」と、ポール1等兵を引きずる見習い兵のマイクだ。
そして、ちょうど監視所であるトーチカを出たところで・・・敵の砲弾がトーチカ内部で炸裂した。
 砲弾の衝撃は・・・海岸に開いている窓から・・・噴煙が飛び出す。
ドアが外れた衝撃で飛ばされる両人だ。
 そこへ、上官が・・・いつまでも監視員が退避してこないので・・・様子見に・・・
「なに、やってるんだ。」「ポール1等兵。」
 「おまえは、先輩として優柔不断なのだ。」「だから、左遷されたんだぞ。」
と、上官が倒れている2名を介抱しながら・・・
 打撲傷で意識が遠のく・・・ポール君であった・・・ なんとか生きてるようだ。

 「おお、トーチカを初弾命中だぞ。」と、砲手が叫ぶ。
「うむ。」「よし、散開して進むぞ。」と、初弾命中で勝てる自信が満々のドイツ戦車隊だ。
 戦意というものは、ほんの少しの戦果でも、大きくふくらむものだ。
フランスのカレ―市から上陸用舟艇で侵攻してきたドイツ陸軍、戦車隊にとり・・・
 「英軍なにするものぞ。」なのである。
内心、おそるおそる上陸して、ドーバーの丘へあがってきたⅣ号戦車だ。
 監視所を爆破したことは、「英軍なぞ、我がドイツ陸軍には歯が立たないぞ。」と、気概が・・・膨らむのだ。
現場の兵士にとり、戦いはじめたら・・・生きるか死ぬか・・・なんて、考えてる暇なんて無いのだ。
 もう、必死で・その場・その場に対処するしかないのだ。
栄えあるドイツ陸軍に徴兵された兵士など、いないのだ。
 全員が自ら志願して・・・ドイツ帝国の栄光の礎になるために・・・Ⅳ号戦車に搭乗しているのである。
徴兵で兵隊をなんとか確保している海軍とは・・・その差は、天地の開きなのである。
 無双ドイツ陸軍、機甲師団の名を聞いて・・・泣く子も黙るのは当然なのだ。
じりじりと・・・進軍するⅣ号戦車、100両だ。
 どうした、英陸軍は・・・先の大演習は何だったんだ!
「おい、集合してる暇はないぞ。」「各員は隊員を集めたら、どの戦車でもいいから・・・」
 「はやくしろ!」「とにかく、エンジンを掛けろ!」
「敵襲を、陸軍本部へ打電しろ・・・」と、今頃な話だ。
 ドーバーの駐屯地から・・・有線連絡が・・・モールス信号で・・・
・・・ーーー・・・と、SOSである。
 電信員は、電文なぞ考えてる暇なんて無い。(司令部からの指示なんて・・・あるわけ無いのだ。)
それで、浮かんだSOSを・・・打電したのである。
 「くそっ、だから・・・待機戦車を・・・出しておくように・・・言ってたのに・・・」と、今更な発言だ。
大演習が成功して・・・大女王様からの「大儀じゃ。」の、お言葉が有頂天に英陸軍をさせてしまったようなのである。
 どうしても、油断はでてしまうのだ。
まさか、大演習が終了して・・・即、ドイツ陸軍の上陸作戦が・・・なんて、誰もおもっていなかったのだから・・・
 それで、派遣日本軍の陸戦隊の待機も無かったのだ。

 「そうだ、派遣軍へ援軍の打電を・・・」と、電信員が閃いたのだ。
本来なら・・・陸軍本部へ急報の打電を打ち続けなければならないんだが・・・「もう、通報はしたからな。」
 彼は、派遣日本軍のドーバーでの働きを知っていたのだ。
通信員として、無線の電文を送信していたからだ。
 上官の許可を取ることもなく・・・
「工作船トヨダへ、ドーバーが急襲された・・・救援を請う。」と、打電したのだ。
 24時間体制の派遣軍の工作船無電室は、もちろん即応なのである。
「おい、ドーバーへ侵攻だ。」「艦長へ速報だな。」
 「アリタ艦長へ急報だ。」伝令が・・・
「陸戦隊員、総員起こし。」と、次々と指示が飛ぶ。
 「工作船トヨダ、タービン圧。」「タービン蒸気十分です。」「うむ。」
アリタ艦長が、「ドーバー沖へ前進全速の用意。」と、指示を出す。
 「抜鋲よろし。」錨が収能される。
「船舷スクリュー始動。」
 「岸壁を離れました。」
「メイン・スクリュー半速。」と、アリタ艦長の指示が飛ぶ。
 「ドーバー沖へ、全速前進。」と、
「駆逐艦の随行は?」「え、え、附いてきてますよ。」
 そこは、日本海軍だ。 打てば響くのは当然である。
工作船の甲板では、水上戦車がエンジンをアイドル運転して・・・「敵は、おそらくドイツ正規のⅣ号戦車の可能性もある。」
 「各員、十分に用心のこと。」「間違っても、小隊を離れるなよ。」
「3両単位で敵に対処することだ。」
 「まともに、正面から当たっては勝てないからな。」
「無線は、互いの混信を防ぐために小隊の周波数を合わせろ。」
 注意事項が伝達される・・・

 

 
 
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