伊号式潜水艦。

ゆみすけ

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ところで、サイトウ技官殿?

潜水艦の交換部品は、どうするのですか?

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 連日の水上戦車の砲身交換やら、車内改修に時間を浪費している技師の・・・ひとりが・・・
「そういえば、技官殿?」と、あらたまって聞いたのだった。
 「この潜水艦の交換部品は?」と、木箱を示す。
輸送船で運ばれてきた部品の木箱が格納庫に山積なのだ。
 「・・・・・」と、サイトウ技官は見なかったことに・・・
「技官殿!」と、催促である。
 「ん、なんだ?」と、今気づいたかのような・・・サイトウ君だ。
「あの、木箱は?」と、潜水艦用の交換部品の山を示す。
 「うむ、その、なんだ。」と、言い訳する言葉を考える時間を・・・
「どうなんですか。」と、技師らが繰り返す。
 「うむ、水上戦車の次だな。」と、言い訳をいう技官だ。
「いまは、ドーバー越が最重要課題なのだ。」と、もったいをつける技官である。
 「あっ、技官殿。」「なんだ?」
「これは、新型のアクデブ・ソナーじゃないですか。」と、木箱のお品書きを示すのだ。
 ポーツマス軍港の潜水艦工廠では・・・潜水艦の建造が・・・進んでいるのだ。
「うむ、潜水艦の補佐や補修が本来の任務だからな。」「英陸軍の下請けではないからな。」
 と、反省しきりの技官だ。
しかし、受けた仕事はやらねばならない。
 「よし、とにかく水上戦車の改修を急いでくれ。」「おう!」
やっと、マツモト艦長やアラン艦長らの出番が・・・くるかも・・・だな。

 マッカート少佐が工作船トヨダへ来訪だ。
「なんですと、合同の抑止訓練ですと。」と、アリタ艦長だ。
 「え、え、ドイツ軍へ見せつけてやりましょうぞ。」と、意気込むマッカート少佐である。
なんせ、少佐はドイツ軍のドーバー越を・・・なんとか乗り切った男だ。
 英陸軍の期待は大である。
いつのまにか、情報部なんだが・・・陸軍の回し者に・・・なり果てたようだ。
 しかし、ドーバー越を防いだ将官として、本年度の叙勲の筆頭なのである。
ナイトの称号も・・・あるやもしれぬのだ。
 大女王様のナイトとなれば・・・大英帝国の栄えある要員として認められても同然なのである。
ちなみに、我がマツモト艦長はマーガレット王女のナイトであるから・・・マーガレット王女が、手放さない限りは・・・不動なのである。(マツモト君の意思は・・・関係無いのである。)
 「大々的な演習で、ドイツ軍の戦意を喪失させてやりましょうぞ。」と、マッカート少佐だ。
「わかりました。」「大々的に、やりましょう。」と、合同演習の合意するのだ。
 英陸軍と日本海軍の陸戦隊の合同演習は英国民にも宣伝されて・・・栄えある、天覧演習となった。
つまり、大女王様が閲覧遊ばされることとなったのだ。
 これは、英陸軍にとり名誉回復のチャンスである。
過去に英陸軍は大女王様へ反旗を・・・それで、王立という名称が使えないのだ。
 それで、海軍との差が・・・ショボイ、英陸軍なのである。
「この演習で大女王様から大儀を承れば・・・晴れて王立の名称が許されるやも・・・」と、画策する少佐なのである。

 見学者多数の大演習となって、ドイツのスパイも多々紛れ込んできたのだ。
当然、ドイツ陸軍も話は聞いてるのだ。
 ヴォルター男爵は、「ドーバー越は、英軍の演習しだいだな。」と、再考するようである。
なんせ、日本海軍の陸戦隊の戦力というか・・・能力がドイツ軍はつかめていなかったからだ。
 英陸軍なぞ、鼻で飛ばすドイツ陸軍だが・・・戦う相手の情報は大いにこしたことはないのだ。
そして、水上戦車の改修は・・・なんとか演習に間に合ったのだ。
 20両の改造水上戦車が20両だ。
もちろん、予備車も用意してあるのだ。
 ここで、問題だ。
日本海軍の陸戦隊は隊長が少尉なのだ。
 ところが、英陸軍の戦車隊の隊長は大尉なのである。
2階級も上なのだ。
 英陸軍はスミス大尉が戦車隊長だそうだ。
「おい、英軍は大尉だぞ。」「うむ、我が陸戦隊は・・・」
 新垣少尉は・・・知らんフリだ。
アリタ艦長が・・・「では、スミス大尉が統合司令ということですな。」と、マッカート少佐へ・・・
 つまり、英陸軍の隊長兼、統合司令とするなら陸戦隊のメンツは建つからだ。
階級を揚げたいアリタ艦長だが・・・勝手なことはできないからね・・・
 そして、大演習の打合せだ。
「敵は、どうすんだ。」と、なったのだ。
 まさか、ドイツ軍へ参加してくれなんて言えないからだ。
「ふむ、なら鹵獲した海底戦車を使えば。」と、意見だ。
 「それは、いいんだが・・・」「隊員が居ないぞ。」
ドイツ軍の海底戦車はドイツのⅣ号の改造版だ。
 操縦などは、英陸軍の戦車と似たようなモノである。
「どうせ、ドイツのスパイも多量に紛れ込んでくるだろうて・・・」
 「そいつらに、見せつけてやろうぞ。」
「それで、肝心の戦車隊員は?」
 「うむ、戦車学校の学生で、どうだ。」
「それは、いいアイデアだ。」
 「学生に演習は、いい経験になるからな。」
こうして、鹵獲した海底戦車も役に立つときがきたのである。

 演習には、模擬砲弾が使われる。
これは、爆発の噴煙だけが勇ましい・・・日本の戦隊モノの背後で爆発して、場面を盛り上げる火薬を使っているのである。
 派手に爆発するんだが・・・威力は、ほとんど無い。
それでも、直接人間が喰らえば・・・当たりところが悪いと、即死だ。
 戦車には、キズひとつ付かないが・・・
そして、命中すれば、その場所が白く粉が付着するのだ。
 それで、当たった場所で判定が・・・そこで、破壊判定がでると、停止して白旗を掲げるのだ。
そして、隊員は演習が終わるまで・・・その戦車内で待機するしかない。
 「まあ、鹵獲した海底戦車は39両しかないが・・・一応、全車両が動くように修理はしてあるぞ。」
鹵獲した海底戦車は動力と本体の接合部が離れてるだけで、修理はカンタンだったのである。
 修理は日本人技師らがやったので、修理前より動きは良くなったそうだ。
変速機やエンジンの整備も万全なのである。
 そこは、さすがドイツ軍の戦車である。
英国のマークⅣ型とは比べ物にならないほどだ。
 39両の海底戦車の仮想ドイツ軍と改造マークⅣ型と水上戦車改の演習は明日ときまったのだ。
ドーバーの丘は大女王様のお立ち台から・・・兵站や見学者向けの売店まで、準備は整ったのである。
 
 
 
 
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