伊号式潜水艦。

ゆみすけ

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被害はなかったのだが・・・

どこが、故障したのか不明だ。

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 「よし、逃がさないぞ。」「最大戦速だ。」と、叫ぶアラン艦長だ。
しかし、爆発の余波が・・・まだ、まだ、終わらないようだ。
 ジーゼルエンジンが動いていないような・・・後部の排気筒から排気ガスが出ていないような。
「おい、どうしたんだ?」と、音通通信で機関室へアランがいう。
 機関長が、「艦長、すこし待ってください。」「いま、点検してます。」
「うむ、わかった。」と、。返事するしかないアランだ。
 追跡に蓄電池でのモーター推進は使えないのだ。
蓄電池が、なくなると潜航ができないからだ。
 潜水艦の蓄電池はスマフォの電池と同じなのである。
電池の無いスマフォは、タダのかまぼこ板なのだ。
 ハエ叩きにも使えないのだ。
海上での運用はジーゼルエンジンなのである。
 「おい、早くしないと敵が行ってしまうぞ。」と、急き立てる艦長のアランだ。
しばらくして、機関長から、「艦長、ジーゼルエンジンが原因不明ですが、動きません。」
 「なんだと。」「再始動を急げ。」と、言うしかないアラン君だ。
先任が、「艦長、たぶん先の爆発で、なんらかのショックでの不具合かと。」
 「うむ、少し待つか。」と、言うしかできないアラン君だ。

 「おい、爆発したぞ。」「あ、あ、しかし敵艦は、まだ浮かんでるぞ。」
「でも、追ってこないようだ。」「なんらかの被害があったんだぞ。」
 ドイツ潜水艇5号は、必殺の電気推進魚雷を追跡してきた英海軍の潜水艦へ・・・
まさに、窮鼠猫を噛むなのだ。
 そして、ネコは動かなくなったのだ。
「さすが、必殺電気推進魚雷だ。」と、ハイネマン艇長は一息である。
 「今のうちに、逃げるぞ。」
「蓄電池が残っていません。」「仕方がない、人力だ。」
 「オールで漕ぐしかないぞ。」と、ローマ軍のガレー船ではないのだが・・・どこからかオールを出してきて・・・潜水艇5号は・・・3ノツト程度で東へ・・・進みだしたのだった。
 時速5キロほどだ。 ヒトが歩く速度である。
ハイネマンは舵を・・・あとの6名がオールでエイサッサだ。
 英国とドイツ帝国は開戦はしていない・・・それで、拿捕されても・・・臨検される程度と・・・
しかし、ポーツマス軍港でのテロ犯人だと判断されたら・・・拿捕では、すまないだろう。
 最悪、ロンドン塔で幽閉か・・・(それは、無いだろう。)

 「おい、まだ再起動はできないのか。」と、アラン艦長だ。
機関長が、「やってはいるんですが、機嫌が悪そうな・・・」と、言い訳だ。
 どうやら、爆発した魚雷の衝撃で電気装置が接触不良なのだ。
そうなると、点検箇所は多くなる・・・再起動に時間はかかりそうなのだ。
 「これでは、いかんぞ。」「そうだ、マツモト艦へ連絡しろ。」と、アランが・・・
「この付近にいるはずだぞ。」と、通信士へ音通だ。
 「アイサー。」と、通信士だ。
アラン君にとり、困ったときのマツモト君なのである。
 もちろん、マツモト艦はアラン艦よりの追跡中の無線連絡でアラン艦へ方角を変えていたのだが・・・
アラン艦が敵の攻撃で動けないとは・・・まだ、知らないのである。
 「了解です、現場の位置を詳細に送られたい。」と、マツモト艦の通信員からだ。
「アラン艦の位置は〇×〇×だ。」
 「こちら、マツモト艦、了解だ。」
「アラン艦は引き続き、再起動の予定だ。」「以上。」と、無線連絡は終わった。
 しかし、機関長が再起動を試みるも・・・ウンともスンともいわないアラン艦のジーゼルエンジンである。
そして、ドイツ潜水艇5号は・・・約3ノットで、なんとかキール軍港へ逃げ込もうと・・・躍起になっているのである。
 もちろん、ドイツ潜水艇5号は無線でキール軍港へ救援要請は出してるのだが・・・そして、キール軍港からのダグ・ボートは軍港から出向してるのであるが・・・フネというものは時間が掛かるのだ。
 サンダーバード1号なら、いざ知らず。
ドイツ帝国のタグ・ボートである。
 まあ、それなりなのである。(おそらく、半日は・・・)
ハイネマン艇長以下、7名の乗員は最低半日は、ローマ軍のガレー船の真似をしなければならないようだ。

 「こちら、マツモト艦です。」「アラン艦、どうぞ。」と、無線が入る。
「こちらアラン艦です、どうぞ。」
 「いま、艦橋が見えた、そちらから見えるか、どうぞ。」「いいや、こちらからは見えない。」
「了解、敵に位置は、どうだ。」
 「アラン艦の西方を、ゆっくり移動している。」と、台風ではないが・・・まだ、アラン艦から潜水艇は見えるようである。
 まあ、約3ノット程度だ。 そんなもんだろう・・・
しかし、ハイネマン艇長以下、7名のドイツ海軍軍人は必死にオールを漕いでいたのである。
 英仏海峡と言っても、海であり波は高いのだ。
ドイツ潜水艇5号は、人力で無駄な抵抗を・・・やめるわけにはいかないのである。
 

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