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なんて、複雑な発射シークエンスなのだ。
数人の息のあった連携プレーが必要なのだ。
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魚雷の発射方法は複雑である。
レバーや圧力バルブが10や20ではないからだ。
そして、レバーやバルブは順番があるのだ。
その発射方法は、1冊の本でも足りないほどなのだ。
それが、日本海軍の酸素魚雷なら、欧米人には無理だろう・・・
実際のところ、ドイツは日本海軍の酸素魚雷へ興味は示さなかったとか・・・
理由は、操作が複雑でゲルマン民族には無理だからだ。
手先の器用さは日本人に勝てる民族なぞ無い、それが現実なのである。
京都にある明治期の職人工芸品、展示の美術館があるが・・・それを見れば事実だと、わかるだろう。
現在では、操作がパソコン化されて、凡人でも可能だが・・・当時は、そうではないのだ。
それで、潜水艦の魚雷発射の実験はグルップ重工の技師が操作することとなったのだ。
ところで、魚雷は重いのだ。
そう、1トンはあるのである。
それで、クレーンで吊り下げて発射菅へ入れるのだ。
そして、発射菅の扉は、反対側が必ず閉まってるのである。
両方開いたら・・・海水があふれて・・・潜水艦はマジで浸水艦なのである。
先を海底へ突っ込んでご臨終なのだ。
そう、なのだ。 魚雷4発、同時発射は4トンのタンクから海水を出すのと同じなのだ。
うまく海水を4トン、入れないと潜水艦は先を海上へ・・・浮上してしまうのだ。
普通のフネにはない苦労が潜水艦には多々あるのである。
キール軍港の潜水艦桟橋に接岸した潜水艦の魚雷発射試験がはじまった。
まだ、艦名はつけていない。
しかし、潜水艇3号という名前が付いていたことから、自然と4号と軍内では呼んでるようである。
「軍事機密ゆえ、見送りは盛大にできないが・・・」と、海軍大臣がこぼす。
「いえ、最善を尽くします。」「うむ。」
「頼んだぞ、ハインリッヒ艦長。」敬礼する艦長だ。
「全員、搭乗しろっ!」と、叫ぶハインリッヒ艦長である。
47名の隊員らは、一斉に狭いハッチへ列をつくり乗り込んでいく。
そこは、訓練された軍人らである。 混乱なぞ無い。
「ジーゼル始動。」「微速前進。」「舵は・・・」
潜水艦4号は桟橋を離れて試験海域へ・・・同時に、観測艇が追従する。
つまり、空気の泡の具合を観察するためである。
まあ、観測艇なんて・・・単なるランチ(ハシケ)である。
いちおう、無線機と水中聴音器は積んでるみたいだが・・・
「こちら、4号です。」「よく、聞こえるぞ。」「いまから、潜行します。」
「連絡がとれないので、時間どうり発射する予定です。」(潜れば、電波が届かない。)
「観測艇、了解。」
「よし、ベント開け潜航するぞ。」と、ハインリッヒ艦長が警報を鳴らす。
数人の隊員がハッチから艦内へ・・・ハッチが完全にしまったか、二度確認する。
艦橋のハッチから艦長がハッチを閉めて・・・梯子を降りてくる。
「エンジン停止、モーター切り替え。」「ヤー。」
「潜舵、下げ30度。」「ヤー。」
潜水艦4号はブクブクと泡を吹きながら・・・潜航していく。
やがて、艦橋が海中へ、「深度5.」と、計測員が・・・「8,10、15,20。」
「潜舵戻せ。」「ヤー。」
「深度20で、安定しました。」
「航海士、位置についたか。」「もう、すこしです。」「うむ。」
そのころ、観測艇は潜水艦4号の推進音をとらえていた。
「おう、これが潜水艦4号の推進音か。」と、ソナー員が新たな推進音に感激していた。
なんせ、いままでの圧搾空気のエンジン推進とは異質だからだ。
「シュル、シュル、シュル。」と、聞こえるからである。
「グワン、グワン、グワン。」と、聞こえていたのが、豹変なのである。
「さすが、我が栄えあるドイツ帝国海軍だわい。」と、鼻高々なのである。
「おい、魚雷発射の音も聞き逃すなよ。」と、観測長が注意喚起だ。
「そろそろ、だぞ。」「了解です。」
こちらは、4号潜水艦だ。
「魚雷発射は、どうか。」と、艦内電話で艦長が・・・
「いや、いまやってる。」と、技師が苦戦だ。
「いま、やってます。」「うむ。」
かなり、遅れているようだ。
陸の上と海中は環境に差異がある・・・湿度、温度、海水圧など・・・いままでの、地上試験とはいかないものなのだ。
「ふう、やっと点灯したぞ。」と、技師が汗をぬぐった。
なかなか、安全ランプが点灯しなかったのだ。
魚雷をクレーンで発射菅へ・・・これは、事前に調整や推進薬を入れてからだが・・・
そして、発射菅の定位置へ魚雷を押しこむ。
尾栓を閉める。 そして、海水を流しこむ。 そして、発射菅の前フタを開けるのだ。
なぜなのか、空気の泡で魚雷を押し出すからだ。
大抵、発射菅の前フタを開けると・・・空気の泡が少しはでる。
潜望鏡を覗く艦長だ。
海面にブイが浮かんでいる。
まあ、標的である。
潜望鏡の目盛りから、目標までの距離を測る。
「距離、300.」「角度このまま。」「ヤー。」
やがて、赤いランプから青いランプが点灯する。
発射準備完了のランプだ。
初めての潜水艦の発射菅からの試射だ。
潜水艇3号では、魚雷は船体へ吊り下げていたからである。
地上試験(水槽での試験)では、魚雷は発射菅から発射できたのだが・・・
「魚雷、発射だ。」と、赤いボタンを押す。
すると、発射菅室の発射ランプが・・・技師が発射のレバーを引いた。
「ブシューーーー。」と、盛大に空気圧を駆ける音が・・・かなりの、大きな音だ。
その音は、潜水艦4号の司令室は当然だが・・・海面へ盛大に音が・・・そして、「ゴボ、ゴボ。」と、泡がアワワワワ・・・である。
「おい、聞いたか、見たかよ。」と、観測艇の観測員が・・・驚いた。
そして、発射された魚雷は空気の泡を吹きだしながら・・・「ゴボゴボゴボ・・・」と、かなりの速度で海中を走っていく。
それは、白い泡の軌跡で確認できるのだが・・・「まさか、ここまではっきり・・・」と、観測艇の観測員は驚いたのだ。
しかし、魚雷は標的のブイへ確実に進んでいくのだ。
「これは、使えるぞ。」と、観測長は確信したのだった。
レバーや圧力バルブが10や20ではないからだ。
そして、レバーやバルブは順番があるのだ。
その発射方法は、1冊の本でも足りないほどなのだ。
それが、日本海軍の酸素魚雷なら、欧米人には無理だろう・・・
実際のところ、ドイツは日本海軍の酸素魚雷へ興味は示さなかったとか・・・
理由は、操作が複雑でゲルマン民族には無理だからだ。
手先の器用さは日本人に勝てる民族なぞ無い、それが現実なのである。
京都にある明治期の職人工芸品、展示の美術館があるが・・・それを見れば事実だと、わかるだろう。
現在では、操作がパソコン化されて、凡人でも可能だが・・・当時は、そうではないのだ。
それで、潜水艦の魚雷発射の実験はグルップ重工の技師が操作することとなったのだ。
ところで、魚雷は重いのだ。
そう、1トンはあるのである。
それで、クレーンで吊り下げて発射菅へ入れるのだ。
そして、発射菅の扉は、反対側が必ず閉まってるのである。
両方開いたら・・・海水があふれて・・・潜水艦はマジで浸水艦なのである。
先を海底へ突っ込んでご臨終なのだ。
そう、なのだ。 魚雷4発、同時発射は4トンのタンクから海水を出すのと同じなのだ。
うまく海水を4トン、入れないと潜水艦は先を海上へ・・・浮上してしまうのだ。
普通のフネにはない苦労が潜水艦には多々あるのである。
キール軍港の潜水艦桟橋に接岸した潜水艦の魚雷発射試験がはじまった。
まだ、艦名はつけていない。
しかし、潜水艇3号という名前が付いていたことから、自然と4号と軍内では呼んでるようである。
「軍事機密ゆえ、見送りは盛大にできないが・・・」と、海軍大臣がこぼす。
「いえ、最善を尽くします。」「うむ。」
「頼んだぞ、ハインリッヒ艦長。」敬礼する艦長だ。
「全員、搭乗しろっ!」と、叫ぶハインリッヒ艦長である。
47名の隊員らは、一斉に狭いハッチへ列をつくり乗り込んでいく。
そこは、訓練された軍人らである。 混乱なぞ無い。
「ジーゼル始動。」「微速前進。」「舵は・・・」
潜水艦4号は桟橋を離れて試験海域へ・・・同時に、観測艇が追従する。
つまり、空気の泡の具合を観察するためである。
まあ、観測艇なんて・・・単なるランチ(ハシケ)である。
いちおう、無線機と水中聴音器は積んでるみたいだが・・・
「こちら、4号です。」「よく、聞こえるぞ。」「いまから、潜行します。」
「連絡がとれないので、時間どうり発射する予定です。」(潜れば、電波が届かない。)
「観測艇、了解。」
「よし、ベント開け潜航するぞ。」と、ハインリッヒ艦長が警報を鳴らす。
数人の隊員がハッチから艦内へ・・・ハッチが完全にしまったか、二度確認する。
艦橋のハッチから艦長がハッチを閉めて・・・梯子を降りてくる。
「エンジン停止、モーター切り替え。」「ヤー。」
「潜舵、下げ30度。」「ヤー。」
潜水艦4号はブクブクと泡を吹きながら・・・潜航していく。
やがて、艦橋が海中へ、「深度5.」と、計測員が・・・「8,10、15,20。」
「潜舵戻せ。」「ヤー。」
「深度20で、安定しました。」
「航海士、位置についたか。」「もう、すこしです。」「うむ。」
そのころ、観測艇は潜水艦4号の推進音をとらえていた。
「おう、これが潜水艦4号の推進音か。」と、ソナー員が新たな推進音に感激していた。
なんせ、いままでの圧搾空気のエンジン推進とは異質だからだ。
「シュル、シュル、シュル。」と、聞こえるからである。
「グワン、グワン、グワン。」と、聞こえていたのが、豹変なのである。
「さすが、我が栄えあるドイツ帝国海軍だわい。」と、鼻高々なのである。
「おい、魚雷発射の音も聞き逃すなよ。」と、観測長が注意喚起だ。
「そろそろ、だぞ。」「了解です。」
こちらは、4号潜水艦だ。
「魚雷発射は、どうか。」と、艦内電話で艦長が・・・
「いや、いまやってる。」と、技師が苦戦だ。
「いま、やってます。」「うむ。」
かなり、遅れているようだ。
陸の上と海中は環境に差異がある・・・湿度、温度、海水圧など・・・いままでの、地上試験とはいかないものなのだ。
「ふう、やっと点灯したぞ。」と、技師が汗をぬぐった。
なかなか、安全ランプが点灯しなかったのだ。
魚雷をクレーンで発射菅へ・・・これは、事前に調整や推進薬を入れてからだが・・・
そして、発射菅の定位置へ魚雷を押しこむ。
尾栓を閉める。 そして、海水を流しこむ。 そして、発射菅の前フタを開けるのだ。
なぜなのか、空気の泡で魚雷を押し出すからだ。
大抵、発射菅の前フタを開けると・・・空気の泡が少しはでる。
潜望鏡を覗く艦長だ。
海面にブイが浮かんでいる。
まあ、標的である。
潜望鏡の目盛りから、目標までの距離を測る。
「距離、300.」「角度このまま。」「ヤー。」
やがて、赤いランプから青いランプが点灯する。
発射準備完了のランプだ。
初めての潜水艦の発射菅からの試射だ。
潜水艇3号では、魚雷は船体へ吊り下げていたからである。
地上試験(水槽での試験)では、魚雷は発射菅から発射できたのだが・・・
「魚雷、発射だ。」と、赤いボタンを押す。
すると、発射菅室の発射ランプが・・・技師が発射のレバーを引いた。
「ブシューーーー。」と、盛大に空気圧を駆ける音が・・・かなりの、大きな音だ。
その音は、潜水艦4号の司令室は当然だが・・・海面へ盛大に音が・・・そして、「ゴボ、ゴボ。」と、泡がアワワワワ・・・である。
「おい、聞いたか、見たかよ。」と、観測艇の観測員が・・・驚いた。
そして、発射された魚雷は空気の泡を吹きだしながら・・・「ゴボゴボゴボ・・・」と、かなりの速度で海中を走っていく。
それは、白い泡の軌跡で確認できるのだが・・・「まさか、ここまではっきり・・・」と、観測艇の観測員は驚いたのだ。
しかし、魚雷は標的のブイへ確実に進んでいくのだ。
「これは、使えるぞ。」と、観測長は確信したのだった。
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