伊号式潜水艦。

ゆみすけ

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しかし、ドイツ軍はデゴイまであるのかっ!

侮りがたき、ドイツ海軍だ。

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 「しかし、ドイツ海軍は逃走用にデゴイまで、用意してるなんて・・・」と、驚くアラン中尉だ。
「これは、警備艇に用心するように言ったほうが・・・」と、アラン中尉だ。
 「え、え、わかりました。」と、キャップが無線で・・・
「3号艇、聞こえるか。」「こちら、3号艇です。」
 「敵は、デゴイまで用意している、十分に用心するように。」「3号艇了解です。」
「うむ、オレは電話で婆さんへ伝えておくから。」と、黒電話を取る。
 そして、「オレだ、先ほどと同じところだ。」
しばらくして、「女王陛下、不審潜水艇はデゴイで欺瞞攻撃をしてきました。」
 「当方は、用心するように・・・」「え、え。」「そうです。」「ハイ。」
「わかりました、ではそのようにいたします。」と、電話を切るアラン中尉殿だ。
 「キャップ。」「ハイ。」
「許可を取った、敵が攻撃したら反撃の許可は取ったぞ。」「了解です。」
 「なお、先に攻撃はしないようにとのことだ。」「了解です。」と、キャップが答える。
しかし、アランは女王のなんなんだ?
 まあ、あとで聞いてみるか・・・と、思案するマツモト君である。
まさか、女王の身内では・・・まさか・・・なら、下手すると、王子様じゃないか・・・
 もう、下手なタメ口は、アラン中尉には使えないな・・・と、思う、マツモト君である。

 こちらは、ドイツ潜水艇のハインリッヒ艇長である。
魚雷作戦で一度は警備艇を騙せたのだが・・・
 「艇長、エンジン音が複数、こちらへ向かってきます。」と、シナー員が叫ぶ。
もう、小声ではない。 そう、あわてふためいているのだ。
 「こちらの、モーター音を探知されたようです。」と、叫ぶソナー員だ。
「モーター停止、ベント開け。」「海底までだ。」と、艇長が叫ぶ。
 ブクブクと泡を出しながら、潜水艇は海底へ鎮座する。
そこは、軍港内の海底だ・・・あまり、深くはないからだ。
 「いいか。音をだすなよ。」と、ハインリッヒ艇長が小声でささやく。

 「モーター音停止しました。」と、警備艇のソナー員が・・・
「エンジン停止だ。」と、艇長が叫ぶ。
 無線で、「不審潜水艇はモーター停止しました。」と、伝える。
「警部本部、了解。」と、無線で返答する。
 アランが、「各、警備艇にむかっていた方向を伝えるように、無線だ。」「わかりました。」
そして、3隻の警備艇の方向が伝わった・・・
 アランが、海図に3本の方向線を引いた・・・
「なるほど、そこがヤツのいる場所だな。」と、キャツプが理解する。
 音を聴くだけの水中聴音器は居ることは、わかったても詳細な方向や深度までは、なかなか判明しないのだ。
しかし、3隻の警備艇のソナー情報から推測はできるのだ。
 「よし、こんどこそ逃がさんぞ。」と、気合を入れる警部本部の面々である。
「そうだ、水中機雷のデゴイがあってはずだが・・・」と、アランが言い出した。
 「あの、爆薬が装填してないヤツですか。」と、キャップだ。
「そうだ、あの試作した水中機雷だよ。」「それに、手榴弾を仕込んで投下してやるのさ。」
 「さすれば、さすがに浮上して降伏すると思うんだが。」「なるほど。」と、納得するキャップだ。
「おう、確か水上基地に、まだ置いてあるはずだったが。」「え、え、3発ほど置いてありますが。」
 「よし、そのデゴイに手榴弾を仕込んで、3号艇付近まで行くのだ。」
「わかりました、予備の警備艇に出るように電話します。」「頼む。」

 「わかりました。」「では、早急に対処します。」「頼んだぞ。」
警備艇の水上基地から、デゴイ爆雷に手榴弾を仕込んだ3発の水中機雷を予備艇が積んで、3号艇の現場まで出発した。
 そのころ、海底のドイツ潜水艇3号では・・・
「艇長、もう酸素が・・・」と、息苦しさが・・・かなり、二酸化炭素濃度が多いのである。
 「仕方がない、このままでは・・・モーター始動だ。」
「ヤ~ッ。」機関員の反応も元気が無いようだ。
 ドイツ潜水艇は、海底から砂煙を上げながら・・・軍港外へ・・・5ノットで進み始めた。
「おや、モーター音が聞こえますよ。」と、3号警備艇のソナー員が叫んだ。
 「位置は?」と、艇長が問うが・・・音を聴きとるだけの水中聴音器は位置までは特定が・・・難しいのだ。
特に、海底でモーター音が反射して・・・あちら、こちらから・・・聞こえるのである。
 それで、音をフネから発振して、その反射波で探るパッシブソナーの研究が進むのだが・・・
それは、この事件の後の話なのだ。

 「予備艇が到着しました。」と、3号艇の横へ水中機雷を持参した警備艇が・・・
「間に合うか?」と、水中機雷を受け取り・・・数発を水中に投げ込んだ。
 手榴弾はレバーを引くと3秒後に爆発する。
つまり、外見だけの爆弾が装填されていない水中機雷へ手榴弾をレバーを外して入れて・・・即、水中へ投下する作戦なのである。
 本来の水中機雷の爆薬では、量が多すぎて軍港内では危険なのだ。
それで、威力が少ない手榴弾を使うのである。
 「バウウウウ~~ン。」と、水柱が立ち昇る。
「やったか。」と、海面を注視するが・・・水柱が上がっただけだ。
 「よく、海面を見るのだ、なんか浮かんでこないかっ。」と、艇長が指示を出すが・・・
「なにも、反応はありません。」
 どうやら、逃げられてような・・・
「モーター音は?」と、ソナー員へ
 ソナー員は水中機雷が爆発するから、イヤフォンを外していたんだが・・・
あわてて耳へ・・・
 「モーター音は、小さいですが、まだ聞こえます。」
「どこからだ。」と、艇長だ。
 「海底の反射音で、特定は・・・」
「くそっ、4号艇、5号艇は検索へ移れ。」
 他の警備艇が動き回るが・・・反射するモーター音が次第に小さくなり・・・聞こえなくなったようである。

 
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