伊号式潜水艦。

ゆみすけ

文字の大きさ
上 下
56 / 253
再度のドイツ潜航艇の偵察か!

潜水艦ちくま2号の帰還・・・

しおりを挟む
 日本へちくま2号が帰国する時期がきた。
英海軍が潜水艦を完成させれば、帰国する手筈だったからだ。
 マーガレット2号艦は、ドイツ海軍への強行偵察に成功したので、日本海軍も潜水艦を戻すこととなったのだ。
いつまでも、潜航艇ちくま号に本土防衛をまかせてばかりでは・・・いけないからである。
 先任士官が臨時の艦長として、日本まで航海をすることとなったのだ。
なんせ、松本艦長が英海軍へスカウトされてしまったからである。
 「マツモト艦長、お元気で・・・」と、先任が別れの言葉だ。
「あ、あ、まさかこうなるとは、夢にもおもわなかったんだが・・・」
 「王女様の面倒見も大変でしょうが・・・」と、ニガ笑いの先任だ。
その問いに、なんも言えない中尉殿である。
 なんせ、騎士としての仕事が、簡易トイレの目隠し係だったなんて・・・死んでも言えないのだ。
しかしだ。 王女様のお花積みを覗かせるわけにはいかないのだ。
 大英帝国の王女様の恐れ多い、おマンコを他人の眼にさらすことはできないからだ。
そのためのメイド士官であり、2名の歴戦の勇士なのである。
 
 盛大なる送迎式典で、英海軍はちくま2号を送り出してくれたのだった。
あとに残るは、松本中尉のみである。
 フネは出ていく、ジーゼルエンジンの排ガスを残してだな・・・
予備タンクへ軽油を満タンにして、スエズ運河経由で日本への帰路に就いたのだった。
 ところで、あるヒトが予備タンクがカラになれば浮力タンク(浮袋)だ、潜行ができなくならないか・・・と、疑問符だ。
 いや、その心配はいらない。 なぜなら、メインタンクへ海水を余分に入れるだけだからだ。
そう、ちゃんと考えて建造してあるのだ。
 だから、長さが76メートルで、直径が6、3メートルなんだよ。

 フネは出ていく、排気ガスが残るで・・・ポーツマス軍港へ取り残された松本君だ。
「さて、どうするか・・・」と、心に隙間風が・・・・
 「マツモトキャプテン。」と、伝令が・・・自転車で・・・
ケータイの無い時代だ。
 携帯無線機も背中に背負って、重いのだ。
もちろん、松本中尉は持ってない。
 それで、伝令が桟橋までは自転車が速いのだ。
「姫様からの伝言です。」と、通信文を渡すのだ。
 そう、暇はないようだ。
あわてて、桟橋から・・・そこへ、スタッフ・カーだ。
 アランが窓から・・・「ここだ、早くしろ。」と、叫んでいる。
6歳の幼女姫のお守りは・・・ひと時の安らぎなんて無いんだよ。
 「オレは、まだ朝から食事が・・・」「オレもだよ。」・・・では、文句は言えない・・・
そして、まだ見てない通信文を・・・開いた。
 「午後から、用事があるから出頭よ。」と、姫様の筆跡だ。
子供を持った母親の忙しさが少しは理解できる二人だったのだった。

 ここは、キール軍港の軍司令部だ。
やっと、防潜網の騒動が納まってきたところである。
 海軍としては、これ以上の不祥事は明らかにできないから・・・あくまで、事故として防潜網事件は収めたのだ。
それゆえ、懲罰の対象者は居ないのである。
 もちろん、貸(かし)なのだが・・・大きな貸しだな。
しかし、しかしだ、予防策は取らなくてはならない。
 なぜなら、また英海軍の潜航艇が偵察へ・・・ノコノコやってくるかもしれないからだ。
「こんどこそ、袋のネズミだ。」と、軍司令が息巻いた。
 「司令官殿、やはり防潜網をなんとかしないと。」と、参謀が進言する。
「それは、わかるが、失くすわけにはいかんだろう。」
 「そうですが、ヤツらは防潜網を抜けたではないですか。」
「まだ、どうやって抜けたのか、わからんのか。」と、司令だ。
 「え、え、防潜網を引き上げて調べても、破れたところがないのです。」
「うむ、どうやって抜けだんだ。」と、司令だ。
 それが、わかれば苦労せんは!と、言いたい参謀だが・・・空気を読んで沈黙である。
「まあ、ともかく、事故調査委員会へ任せようじゃないか。」と、丸投げする司令部のようだ。

 さて、こちらは事故調査委員会だ。
面々は、シーメンス工科大学の教授のワトソン博士とボン工科大学のスタンフィード教授のグループだ。
 総勢、30名のドイツ科学の頂点が集まった委員会である。
まあ、こういう面々は事を難しく考える癖があるのだ。
 一般人が理解できない言い回しや理論で、こねくり回すのだ。
散々、こねくり廻さないと予算が十分に下りないからでもあるんだが・・・
 相手が英海軍だ。
なら、予算は底なしである。 対英となると、ドイツ銀行も財布の紐が緩むのである。
 その金が潜航艇開発へ流れるのだ。
なんせ、教授らは、全員が潜航艇開発のメンツなのだから・・・

 防潜網は、タグ・ボート2隻で開いたり閉じたりするのだが・・・
「まずは、我が潜航艇で実験を・・・」と、ワトソン博士が提案する。
 まあ、もっともな意見である。
ドイツ海軍は完成した1隻しかない潜航艇を・・・あまり、実験には使いたくなかったんだが・・・
 「では、実験を開始する。」と、軍港の出口で旗が振られる。
「よし、いいか潜航深度は20だぞ。」「わかっております。」
 あれっ、確か英海軍の潜水艦は深度40だったような・・・
1隻しかない潜航艇を事故で失くしたくないからの理由なんだが・・・深度は20で実験が開始されたのだった。


 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大東亜戦争を回避する方法

ゆみすけ
歴史・時代
 大東亜戦争よ有利にの2期創作のつもりです。 時代は昭和20年ころです。 開戦を回避してからのラノベです。

満州国馬賊討伐飛行隊

ゆみすけ
歴史・時代
 満州国は、日本が作った対ソ連の干渉となる国であった。 未開の不毛の地であった。 無法の馬賊どもが闊歩する草原が広がる地だ。 そこに、農業開発開墾団が入植してくる。 とうぜん、馬賊と激しい勢力争いとなる。 馬賊は機動性を武器に、なかなか殲滅できなかった。 それで、入植者保護のため満州政府が宗主国である日本国へ馬賊討伐を要請したのである。 それに答えたのが馬賊専門の討伐飛行隊である。 

空母鳳炎奮戦記

ypaaaaaaa
歴史・時代
1942年、世界初の装甲空母である鳳炎はトラック泊地に停泊していた。すでに戦時下であり、鳳炎は南洋艦隊の要とされていた。この物語はそんな鳳炎の4年に及ぶ奮戦記である。 というわけで、今回は山本双六さんの帝国の海に登場する装甲空母鳳炎の物語です!二次創作のようなものになると思うので原作と違うところも出てくると思います。(極力、なくしたいですが…。)ともかく、皆さまが楽しめたら幸いです!

日は沈まず

ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。 また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。

独裁者・武田信玄

いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます! 平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。 『事実は小説よりも奇なり』 この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに…… 歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。 過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。 【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い 【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形 【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人 【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある 【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。 (前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

B29を撃墜する方法。

ゆみすけ
歴史・時代
 いかに、空の要塞を撃ち落とすか、これは、帝都防空隊の血と汗の物語である。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

処理中です...