伊号式潜水艦。

ゆみすけ

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追え~っ、逃がすな!

とことん、ツイてないハンス少佐だ。

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 「いいか、あの潜水艇を絶対に逃がすなーっ。」と、叫ぶハンス艦長だ。
捜索していた他の駆逐艦も方向を変えてるから・・・気が付いたかな・・・
 「いいか、他のヤツらに捕られるなよ。」「最大戦速だ。」と、何度も最大戦速を叫ぶハンス艦長である。
しかし、フネという乗り物は自動車とは違うのである。
 なかなか、速度は上がらない、そして下がらないのである。
そして、なによりブレーキなんて無いから、すぐには止まれないのである。(スクリューの逆回転か錨を投下する。)
 新幹線が数キロ先まで停まれないと、同じである。(確か、4キロだったかな。)
軍港内を検索していたときは、10ノットほどだったが・・・
 最大戦速との艦長の指示だ。
機関員が最大の蒸気を動力へ送る・・・そして、その蒸気がタービンを廻して、スクリューが廻るのだ。
 あわてて方向を替えつつある2隻の駆逐艦を差し置いて・・・ハンス艦長の駆逐艦は先頭をひた走る・・・
このまま進めば、浮上した潜水艇を拿捕できそうだ。
 
 「よし、いいぞ。」と、艦橋で軍港の出口を見つめる。
出口の先に、浮いてるのだ。 なにが?
 そう、間違いなく潜航艇(まだ、潜航艇だと思っている。)に違いない。
「英国かフランスか、拿捕すればわかるのだ。」と、確信するハンス艦長である。
 フランスなら、思いっきり上から目線で・・・英国なら、恨み1000倍で・・・
戦時ではないから、捕虜というわけではないが・・・領海侵犯には違いないのである。
 ここで、ハンス艦長の指揮するドイツ海軍の駆逐艦を見てみよう・・・
排水量は3500トンだ。
 長さが78メートル。 幅が16メートル。
1000馬力の蒸気タービンが動力である。
 まあ、ポンポン船である。
主砲は35ミリの高射砲を艦用にしたものだ。
 潜水艇を開発が成功して、各国も研究している情報から、潜水艇対策として建造したフネだ。

 まあ、軍港内では戦艦、軍艦は巨大でダグボートで移動させるフネである。
船底も水深は深い・・・それで、軍艦用に浚渫(港の底を掘る。)するくらいだ。
 まあ、その深く掘ったところから・・・我が、マーガレット2号は防潜網の下をくぐったのだが・・・
防潜網・・・そうだ、キール軍港の出入り口には・・・確か、防潜網が・・・
 「いけーぃ。」「最大戦速だーっ。」と、叫ぶハンス艦長が・・・
まさか、まさか・・・・目の前の浮かんでいる潜水艇を見て・・・
 ハンス艦長のオツムには・・・防潜網の3文字は・・・あるわけない・・・
「グワン、ガシャン、ドウン。」と、機関が水蒸気を上げて・・・破壊された。
 「なんだ。」「どうしたんだ。」「敵の攻撃かっ。」
「これは、いかん。」と、駆逐艦の後部から・・・絡まった網と舵やスクリューが・・・グシャグシャと・・・
 そして、防潜網と駆逐艦がケンカしてしまったのだ。
「艦長っ、いかんです。」「防潜網が、からまりました。」と、部下の水兵らが、右往左往だ。
 まあ、なんともならないのは見ればわかるハンス艦長だ。
目の前の、美味しいエサに釣られて・・・周りをみなかった・・・のである。
 「バリ、バリ、バリ。」と、駆逐艦の後部と真ん中に亀裂が・・・
「うわーっ、浸水だ。」「艦長、浸水です。」 
 と・・・そこへ・・・2隻のあとを追ってきた駆逐艦が停止できないで・・・
「うわーーーーっ。」「ぶつかるぞ。」「海へ飛び込んで逃げるんだ。」
 「爆発に、巻き込まれるぞ。」と、危険を察知した水兵らが・・・海へ飛び込む。
そりゃあ、船体へ亀裂が入った艦に、他の艦がぶつかれば・・・どうなるかは・・・水兵なら、バカでもわかるのだ。
 
 「ドドドウウウンン。」と、3隻のドイツ海軍が建造したばかりの駆逐艦がクズ鉄へと・・・姿を替えたのだった。
 「・・・・・」と、何もいえない松本艦長だ。
さすがのアラン艦長も言葉がでないようである。
 不幸のどん底のドイツ海軍を、笑うなんてことは紳士である英海軍軍人はできないのである。
やがて、3隻の駆逐艦と、絡まった防潜網から・・・・駆逐艦には武器や砲弾が・・・
 そうなのだ、水兵らが海へ飛び込んだには理由があるのだ。
「バ、バ、バ、バ、バ・・・ドカ~~~ン、ん。」と、爆発が3回、3隻分の爆発が・・・
 キール軍港の出入り口で・・・
まさか、この爆発で軍港が閉鎖されかねないぞ・・・
 踏んだり、蹴ったりのドイツ海軍なのだ。
「まあ、ここで見たことは、公開しないようにするか。」と、松本君とアラン君が意見が同じなほどの・・・ドイツ海軍は恥と軍備を失ったのである。

 「防潜網は、ある程度の強さは必要だが・・・あまり強度があってもダメなようだな。」と、ドイツ海軍は身をもって経験したのである。
 じょうぶすぎることは、反って危険なこともあるモノなのである。
機器が破壊される危険があるとき、わざと壊れるところを造っておくこともあるのだ。
 重要なところを守るために、危険な破壊力が・・・そのとき、先に破壊されて・・・内部を守る仕組みを仕掛けることがあるのだ。
 現在の日本製乗用自動車が、そうなのである。
衝突したときに、派手に壊れるが・・・内部のヒトへの衝撃を和らげるために、ワザと壊れるのである。

 翌日の、ドイツ側の発表は・・・
「キール軍港で艦船事故、3隻が港内で衝突。」と、だけ発表された。
 まさか、潜水艦に港内へ侵入されて、逃げられた・・・なんて、ドイツ海軍の末代までの恥である。
そして、英海軍側も・・・あえて何も言わなかったところが、紳士の国の英海軍(王立海軍)なのである。
 ちなみに、英陸軍は王立が付かないのだそうだ。
 
 
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