伊号式潜水艦。

ゆみすけ

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防潜網を抜けたぞ。

これが、日本製潜水艦を視て建造した能力なのだ。

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 「空気は?」と、再度聞く・・・
「半分ほどです。」と、返答だ。
 つまり、30分ということかな・・・
「航海士、出口は?」「あと、少しです。」
 もう、あと少しは聞き飽きたのだ。
潜水艦は忍耐と根性がないと・・・乗ってられないのだ。
 窓がない・・・閉所恐怖症では、潜水艦は無理である。
がまん出来ないヤツは、隊員には指名してはならない。
 採用テスト期間が潜水艦の隊員が長いのは、そのためである。
そのテスト期間に振り落とすのである。
 かく言う、松本中尉も2週間ほど、閉所で耐える訓練をこなしたのである。
松本中尉は、引きこもりの・・・今で言う、おタクだったのだ。
 まあ、現在でいう変態なのである。
それで、閉所での孤独に・・・めっぽう強かったのだ。(群れないのが、おタクなのだ。)
 訓練が終わったときに・・・「まだ、半月はいけるぞ。」と・・
試験官は、まだおタクの概念がなかったから・・・変態なんだと、わからなかったようでが・・
 そして、アラン艦長は、それほどでもない・・・狭い司令室で、冷や汗が・・・
ところが、松本艦長は・・・なんともないようである。
 この閉塞感も・・・堪えてるようには、見えないのである。
なんと、忍耐強い軍人なんだ、と感心しきりのアラン君なのだ。
 「さすが、松本キャプテンは平気なんですね。」と、アラン君が・・・
「そうか、オレはなんともないんだが。」と、平然としている松本君だ。
 それは、大いなる勇気をアラン艦長へ与えたのである。
ここで、何が何でも耐えねばならない・・・と。

 「計算では、この上に防潜網があるはずです。」と、航海士が計算尺で・・・
「なんだ、やっとか・・・」と、内心でホットするアラン君がつぶやく。
 「潜望鏡は引っかからないな。」と、潜望鏡が収納されていることを確認する松本君だ。
なんと、アラン君は忘れていたのだが・・・
 潜望鏡は収納されていた。
なんせ、深度40なのだから・・・である。
 「一度、潜望鏡で確認したいが?」と、アラン艦長に許可を取る・・・マーガレット2号の艦長はアラン君だ。
松本艦長はサポート役なのである。
 「そうですね、潜望鏡深度まで浮上だ。」「アイアイサー。」
「ゴボ、ゴボ、ゴボ。」と、空気が海水をメインタンクから押し出す。
 浮力が上がり、潜水艦は徐々に浮上する。
船体へ防潜網は、絡まないようだ。(完全に抜けたようだ。)
 「深度20、15。」「深度固定しろ。」「アイアイサー。」
マーガレット2号は潜望鏡深度へ。
 「潜望鏡をあげろ。」と、アラン艦長が指示だ。
もう、完全に自分を取り戻したようだ。
 キャプテンハットのツバを反対へ・・・潜望鏡のレバーを倒して、接眼レンズを覗いた。
1周して、艦の周りを確認している。
 「機関員から艦長。」「なんだ?」「そろそろ、蓄電池が・・・」
「あと、どれだけだ。」と、アラン艦長だ。
 「なんとも、防潜網で蓄電池を使いましたので・・・」と、機関員が忠告する。
「このまま、ポーツマスまでは無理だな。」と、アラン君が決する。
 つまり、潜行を続行してポーツマス軍港付近までは無理と判断したのだ。
「ここは、ドイツ野郎へ返事をしょうじゃないか。」と、松本艦長がイラズラ心だ。
 つまり、防潜網は無駄だったと・・・

 「まだ、駆逐艦などがキール軍港を探し回ってるようですよ。」と、アラン君が潜望鏡を進める。
「うむ、どうだろうか・・・」と、松本君が覗いてキール軍港方向へ潜望鏡を廻した。
 「まだ、3隻ほど・・・ウロウロしてるぞ。」
キール軍港内では、駆逐艦が潜水艦の検索に躍起になっているようである。
 「蓄電池の充電も必要だ、それに換気も・・・」と、アラン君が・・・
「ここは、ヤツらに挨拶くらいしないと失礼だからな。」と、ニャリと笑ったアラン艦長だ。
 「よし、浮上して換気、充電だ。」「アイアイサー。」
汚れた空気が換気されると聞いた返答は、隊員らへ元気が戻ったことを知らせる。
 「浮上と、同時にジーゼルへ切り替え、最大戦速だ。」と、アラン艦長が指示を飛ばす。
「メインタンク、ブロー。」「タンクブロー了解です。」
 「ブワッ、ゴボ、ゴボ。」と、派手に海水がメインタンクから排出される。
潜望鏡深度からの浮上だ・・・あっというまだ。
 「ジーゼル切り替え。」「切り替えました。」「最大戦速だ。」「最大戦速、了解です。」
ジーゼルエンジンがうなりを上げる。
 なんせ、英国ロールス・ロイス社製の18気筒3000馬力のジーゼルエンジンだ。
いままで、廻していたモーター動力は970馬力が最大で、蓄電池が少なくなっていたから・・・
 おそらく、100馬力程度での潜航だったのである。
あきらかに速度が上がるのを体で感じる艦長2名だ。
 
 「おい、ソナー員、反応は無いか?」「なにも聞こえません。」
「そんなはずは無いぞ。」「潜望鏡の目撃があったんだ。」
 「耳を皿にして、探すんだ。」 眼を皿なら、わかるんだが・・・
「防潜網があるから、敵の潜水艇は袋のネズミのはずだぞ。」
 「絶対に、逃がすなよ。」
「見つかりませんでは、通らないからな。」と、駆逐艦のハンス艦長が激を飛ばず。
 「いつまでの、潜っていられんはずだ。」「潜望鏡が見えないか、見張りを怠るなよ。」
3隻の駆逐艦は互いにぶつからないように操船が・・・
 そこへ、見張りの水兵が・・・
「あそこに、浮上してますよ。」と、軍港沖を指さす。
 「なんだと、どこだ。」と、双眼鏡を向ける駆逐艦の艦長だ。
「あそこだ、最大戦速だ。」と、激を飛ばす。
 ドイツ軍駆逐艦、リーデンは速度をあげる。
「行けーーーっ、逃がすな。」と、リーデン艦長のハンス少佐が叫ぶ。
 「ここで、潜水艇を拿捕すれば、オレは英雄だ。」と内心思う、ハンス少佐だ。
まだ、ドイツ側は英国が潜水艇ではない、潜水艦を建造したなんて、露ほども知らないのである。

 

 
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