伊号式潜水艦。

ゆみすけ

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ガマン大会かよ・・・

逃げられない・・・ガマン会だ。

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 「よしっ、150まで潜航するぞ。」と、松本艇長が決断した。
「・・・・」 隊員らは沈黙を貫いた。
 よく、ガマンしたものだ。
なんせ、ドイツから英国へ亡命する者を潜航艇で運ばねばならないからだ。
 欧州のドイツから英国まで潜航しっぱなしで航行できる自信が艇長にはあったのだ。
なんせ、上海沖から公海上までの片道27カイリ(約50キロ)を潜航しっぱなしで運行できたのだ。
 速度は5ノット(10キロ毎時くらい)だが・・・
電気モーターも蓄電池も、空気ボンベも問題なく潜航艇を運行できたのだ。
 その自信は大きいのである。
日本海軍は潜航艇を実用化した海軍なのである。
 欠点は魚雷が完成してないことくらいである。
なかなか、うまく水中を走行しないのだ。
 安定装置がうまく働かないのだ。
地球ゴマの原理である、ジャイロを安定装置へ仕込んだのだが・・・なかなか信号を伝達できないのである。
 
 「深度計。」「だだいま、110。」「115.」「120.」
「カーーーーン。」と、でかい水圧音が・・・
 おもわず、天上を見る隊員らだ。
潜航艇の骨格の骨組みが見えるだけだが・・・
 「下げ角、戻せ。」「了解。」「潜舵、水平。」「よ~そろ~。」
150まで潜航する前に潜舵を戻しておく。
 なぜなら、水中では遅く働くからである。
舵を切っても船が方向を変えるには、時間がかかる・・・のだ。
 「ギ、ギ、ギ。」と、しなる音が・・・これは、ヤバイかも・・・音が違うのだ・・・
「モーター停止。」「了解です。」
 「ちくま号、停止しました。」
「艇長、深度150です。」「うむ。」
 「ギ、ギ、ギ、ギ。」と、しなる音が消えない。
「耐圧計は?」「まだ、行けます。」 しかし、だ。 もう、正直、これ以上潜るのはゴメンだ、の隊員らだ。
 「ベント開け。」「浮上だ、電動機作動。」「上げ舵30度。」「よ~そろ~。」
「ウィーーーーン。」と、電動モーターが廻りだした。
 圧搾空気をバラストメインタンクへ・・・そして、メインタンク内の海水が排出される。
潜航艇は徐々に海面めざして浮上していった。
 「圧壊危険深度150もクリアできたぞ。」と、松本艇長が自信を見せる。(冷や汗がにじんでる。)
もちろん、圧壊深度が150は余分を見て隊員らへ伝えてあるのだ。
 数値は正直ではないのだ。
とくに、制限数値などは・・・余分を考慮してあるのである。
 でないと、無理な潜航をヤル恐れがあるからである。
技師いわく、「本当は耐圧試験で200まで耐えるように設計したんだが・・・マジで200まで潜ったら、圧壊くらいではすまないからだ。
 隊員らの殉職や戦死は御免なのである。
なぜ、水圧に耐えられたのか・・・それは、内部に円筒の耐圧構造だからである。
 もちろん、高張力特殊合金の金属骨格の所為でもあるんだが・・・
全長が30メートルの小型であるからでもあるのだ。
 
 そして、深度試験のあと・・・潜航艇はクレーンで潜水母艦へ降ろされた。
さっそく、船体の検査である。
 この検査は、潜航艇がクレーンで甲板へ降ろされるたびに行うんだが・・・
今回の深度耐圧試験は・・・技師らの冷や汗で始まったのだ。
 なんと、船体の直径が・・・3センチ短くなっていたのだ。
水圧は均等にかかる・・・深度10メートルで1気圧の重さがかかる。
 深度150メートルでは15倍ということだ。
潜航艇の全体の表面積に15倍の重さがかかるのである。
 最高の強度を保つように円形の内殻なのだが・・・外部の船体は円形ではない。
水上では波を切りやすいボート型の船殻なのである。
 もちろん、甲板もあるから(甲板は木製だ。)全体で水圧から船体内部を保持しているのだ。
さすがに、水圧で鋼鉄が・・・数センチ圧縮されたのである。
 もちろん、海上へ浮上しても、大きさは元には戻らない。
船体の長さが・・・3センチ短くなっただけだ。
 その後、数回にわたって150メートルの深度へ潜ったが・・・3センチ、短くなっただけで固定したようだ。
「まあ、締まっていいんじゃないか。」と、いい加減なことをいう、主任技師である。
 正直、なんともできないからであるが・・・

 そして、潜水母艦(大鯨)は中2日おいて、欧州へ・・・遠路の船旅となったのである。
航路はインド洋からスエズ運河経由で地中海を抜けて・・・英国のポーツマス軍港へ寄港したのだ。
 半月の航海だった。
そこは、潜水母艦といっても軍部のフネだ。
 英国から急かされていただけに、最高速での運行となったのである。
なお、大鯨の甲板上にはちくま号が見えないようにカバーが当然掛けてあるのだ。
 英国は潜水艦の開発を一度は試したんだが・・・ビクトリア女王の一言でお釈迦になったことがあった。
ビクトリア女王いわく、「海中に潜んで攻撃なぞ卑怯なことは、我が大英帝国はやりません。」との激である。
 まさに、鉄の女王のビクトリアだ。
しかし、亡命者救出は卑怯な攻撃ではない。
 それは、女王も理解していたが・・・潜水艇が開発がとん挫してしまい・・・
隠密理に救出できなくなってしまったのだ。
 そのとき、日本の潜水艇のウワサだ。
ドイツ帝国も潜水艇を開発中だが・・・仮想敵国だ。
 それに、亡命者はドイツ帝国の虜囚なのだ。
上海港からの満州国の姫の救出劇は英国へも・・・ウワサとして聞こえていたのである。
 緘口令を敷いた日本海軍だが・・・ヒトの口に戸は立てられないものである。
 
 
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