20 / 253
ガマン大会かよ・・・
逃げられない・・・ガマン会だ。
しおりを挟む
「よしっ、150まで潜航するぞ。」と、松本艇長が決断した。
「・・・・」 隊員らは沈黙を貫いた。
よく、ガマンしたものだ。
なんせ、ドイツから英国へ亡命する者を潜航艇で運ばねばならないからだ。
欧州のドイツから英国まで潜航しっぱなしで航行できる自信が艇長にはあったのだ。
なんせ、上海沖から公海上までの片道27カイリ(約50キロ)を潜航しっぱなしで運行できたのだ。
速度は5ノット(10キロ毎時くらい)だが・・・
電気モーターも蓄電池も、空気ボンベも問題なく潜航艇を運行できたのだ。
その自信は大きいのである。
日本海軍は潜航艇を実用化した海軍なのである。
欠点は魚雷が完成してないことくらいである。
なかなか、うまく水中を走行しないのだ。
安定装置がうまく働かないのだ。
地球ゴマの原理である、ジャイロを安定装置へ仕込んだのだが・・・なかなか信号を伝達できないのである。
「深度計。」「だだいま、110。」「115.」「120.」
「カーーーーン。」と、でかい水圧音が・・・
おもわず、天上を見る隊員らだ。
潜航艇の骨格の骨組みが見えるだけだが・・・
「下げ角、戻せ。」「了解。」「潜舵、水平。」「よ~そろ~。」
150まで潜航する前に潜舵を戻しておく。
なぜなら、水中では遅く働くからである。
舵を切っても船が方向を変えるには、時間がかかる・・・のだ。
「ギ、ギ、ギ。」と、しなる音が・・・これは、ヤバイかも・・・音が違うのだ・・・
「モーター停止。」「了解です。」
「ちくま号、停止しました。」
「艇長、深度150です。」「うむ。」
「ギ、ギ、ギ、ギ。」と、しなる音が消えない。
「耐圧計は?」「まだ、行けます。」 しかし、だ。 もう、正直、これ以上潜るのはゴメンだ、の隊員らだ。
「ベント開け。」「浮上だ、電動機作動。」「上げ舵30度。」「よ~そろ~。」
「ウィーーーーン。」と、電動モーターが廻りだした。
圧搾空気をバラストメインタンクへ・・・そして、メインタンク内の海水が排出される。
潜航艇は徐々に海面めざして浮上していった。
「圧壊危険深度150もクリアできたぞ。」と、松本艇長が自信を見せる。(冷や汗がにじんでる。)
もちろん、圧壊深度が150は余分を見て隊員らへ伝えてあるのだ。
数値は正直ではないのだ。
とくに、制限数値などは・・・余分を考慮してあるのである。
でないと、無理な潜航をヤル恐れがあるからである。
技師いわく、「本当は耐圧試験で200まで耐えるように設計したんだが・・・マジで200まで潜ったら、圧壊くらいではすまないからだ。
隊員らの殉職や戦死は御免なのである。
なぜ、水圧に耐えられたのか・・・それは、内部に円筒の耐圧構造だからである。
もちろん、高張力特殊合金の金属骨格の所為でもあるんだが・・・
全長が30メートルの小型であるからでもあるのだ。
そして、深度試験のあと・・・潜航艇はクレーンで潜水母艦へ降ろされた。
さっそく、船体の検査である。
この検査は、潜航艇がクレーンで甲板へ降ろされるたびに行うんだが・・・
今回の深度耐圧試験は・・・技師らの冷や汗で始まったのだ。
なんと、船体の直径が・・・3センチ短くなっていたのだ。
水圧は均等にかかる・・・深度10メートルで1気圧の重さがかかる。
深度150メートルでは15倍ということだ。
潜航艇の全体の表面積に15倍の重さがかかるのである。
最高の強度を保つように円形の内殻なのだが・・・外部の船体は円形ではない。
水上では波を切りやすいボート型の船殻なのである。
もちろん、甲板もあるから(甲板は木製だ。)全体で水圧から船体内部を保持しているのだ。
さすがに、水圧で鋼鉄が・・・数センチ圧縮されたのである。
もちろん、海上へ浮上しても、大きさは元には戻らない。
船体の長さが・・・3センチ短くなっただけだ。
その後、数回にわたって150メートルの深度へ潜ったが・・・3センチ、短くなっただけで固定したようだ。
「まあ、締まっていいんじゃないか。」と、いい加減なことをいう、主任技師である。
正直、なんともできないからであるが・・・
そして、潜水母艦(大鯨)は中2日おいて、欧州へ・・・遠路の船旅となったのである。
航路はインド洋からスエズ運河経由で地中海を抜けて・・・英国のポーツマス軍港へ寄港したのだ。
半月の航海だった。
そこは、潜水母艦といっても軍部のフネだ。
英国から急かされていただけに、最高速での運行となったのである。
なお、大鯨の甲板上にはちくま号が見えないようにカバーが当然掛けてあるのだ。
英国は潜水艦の開発を一度は試したんだが・・・ビクトリア女王の一言でお釈迦になったことがあった。
ビクトリア女王いわく、「海中に潜んで攻撃なぞ卑怯なことは、我が大英帝国はやりません。」との激である。
まさに、鉄の女王のビクトリアだ。
しかし、亡命者救出は卑怯な攻撃ではない。
それは、女王も理解していたが・・・潜水艇が開発がとん挫してしまい・・・
隠密理に救出できなくなってしまったのだ。
そのとき、日本の潜水艇のウワサだ。
ドイツ帝国も潜水艇を開発中だが・・・仮想敵国だ。
それに、亡命者はドイツ帝国の虜囚なのだ。
上海港からの満州国の姫の救出劇は英国へも・・・ウワサとして聞こえていたのである。
緘口令を敷いた日本海軍だが・・・ヒトの口に戸は立てられないものである。
「・・・・」 隊員らは沈黙を貫いた。
よく、ガマンしたものだ。
なんせ、ドイツから英国へ亡命する者を潜航艇で運ばねばならないからだ。
欧州のドイツから英国まで潜航しっぱなしで航行できる自信が艇長にはあったのだ。
なんせ、上海沖から公海上までの片道27カイリ(約50キロ)を潜航しっぱなしで運行できたのだ。
速度は5ノット(10キロ毎時くらい)だが・・・
電気モーターも蓄電池も、空気ボンベも問題なく潜航艇を運行できたのだ。
その自信は大きいのである。
日本海軍は潜航艇を実用化した海軍なのである。
欠点は魚雷が完成してないことくらいである。
なかなか、うまく水中を走行しないのだ。
安定装置がうまく働かないのだ。
地球ゴマの原理である、ジャイロを安定装置へ仕込んだのだが・・・なかなか信号を伝達できないのである。
「深度計。」「だだいま、110。」「115.」「120.」
「カーーーーン。」と、でかい水圧音が・・・
おもわず、天上を見る隊員らだ。
潜航艇の骨格の骨組みが見えるだけだが・・・
「下げ角、戻せ。」「了解。」「潜舵、水平。」「よ~そろ~。」
150まで潜航する前に潜舵を戻しておく。
なぜなら、水中では遅く働くからである。
舵を切っても船が方向を変えるには、時間がかかる・・・のだ。
「ギ、ギ、ギ。」と、しなる音が・・・これは、ヤバイかも・・・音が違うのだ・・・
「モーター停止。」「了解です。」
「ちくま号、停止しました。」
「艇長、深度150です。」「うむ。」
「ギ、ギ、ギ、ギ。」と、しなる音が消えない。
「耐圧計は?」「まだ、行けます。」 しかし、だ。 もう、正直、これ以上潜るのはゴメンだ、の隊員らだ。
「ベント開け。」「浮上だ、電動機作動。」「上げ舵30度。」「よ~そろ~。」
「ウィーーーーン。」と、電動モーターが廻りだした。
圧搾空気をバラストメインタンクへ・・・そして、メインタンク内の海水が排出される。
潜航艇は徐々に海面めざして浮上していった。
「圧壊危険深度150もクリアできたぞ。」と、松本艇長が自信を見せる。(冷や汗がにじんでる。)
もちろん、圧壊深度が150は余分を見て隊員らへ伝えてあるのだ。
数値は正直ではないのだ。
とくに、制限数値などは・・・余分を考慮してあるのである。
でないと、無理な潜航をヤル恐れがあるからである。
技師いわく、「本当は耐圧試験で200まで耐えるように設計したんだが・・・マジで200まで潜ったら、圧壊くらいではすまないからだ。
隊員らの殉職や戦死は御免なのである。
なぜ、水圧に耐えられたのか・・・それは、内部に円筒の耐圧構造だからである。
もちろん、高張力特殊合金の金属骨格の所為でもあるんだが・・・
全長が30メートルの小型であるからでもあるのだ。
そして、深度試験のあと・・・潜航艇はクレーンで潜水母艦へ降ろされた。
さっそく、船体の検査である。
この検査は、潜航艇がクレーンで甲板へ降ろされるたびに行うんだが・・・
今回の深度耐圧試験は・・・技師らの冷や汗で始まったのだ。
なんと、船体の直径が・・・3センチ短くなっていたのだ。
水圧は均等にかかる・・・深度10メートルで1気圧の重さがかかる。
深度150メートルでは15倍ということだ。
潜航艇の全体の表面積に15倍の重さがかかるのである。
最高の強度を保つように円形の内殻なのだが・・・外部の船体は円形ではない。
水上では波を切りやすいボート型の船殻なのである。
もちろん、甲板もあるから(甲板は木製だ。)全体で水圧から船体内部を保持しているのだ。
さすがに、水圧で鋼鉄が・・・数センチ圧縮されたのである。
もちろん、海上へ浮上しても、大きさは元には戻らない。
船体の長さが・・・3センチ短くなっただけだ。
その後、数回にわたって150メートルの深度へ潜ったが・・・3センチ、短くなっただけで固定したようだ。
「まあ、締まっていいんじゃないか。」と、いい加減なことをいう、主任技師である。
正直、なんともできないからであるが・・・
そして、潜水母艦(大鯨)は中2日おいて、欧州へ・・・遠路の船旅となったのである。
航路はインド洋からスエズ運河経由で地中海を抜けて・・・英国のポーツマス軍港へ寄港したのだ。
半月の航海だった。
そこは、潜水母艦といっても軍部のフネだ。
英国から急かされていただけに、最高速での運行となったのである。
なお、大鯨の甲板上にはちくま号が見えないようにカバーが当然掛けてあるのだ。
英国は潜水艦の開発を一度は試したんだが・・・ビクトリア女王の一言でお釈迦になったことがあった。
ビクトリア女王いわく、「海中に潜んで攻撃なぞ卑怯なことは、我が大英帝国はやりません。」との激である。
まさに、鉄の女王のビクトリアだ。
しかし、亡命者救出は卑怯な攻撃ではない。
それは、女王も理解していたが・・・潜水艇が開発がとん挫してしまい・・・
隠密理に救出できなくなってしまったのだ。
そのとき、日本の潜水艇のウワサだ。
ドイツ帝国も潜水艇を開発中だが・・・仮想敵国だ。
それに、亡命者はドイツ帝国の虜囚なのだ。
上海港からの満州国の姫の救出劇は英国へも・・・ウワサとして聞こえていたのである。
緘口令を敷いた日本海軍だが・・・ヒトの口に戸は立てられないものである。
1
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?
俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。
この他、
「新訳 零戦戦記」
「総統戦記」もよろしくお願いします。
黄金の檻の高貴な囚人
せりもも
歴史・時代
短編集。ナポレオンの息子、ライヒシュタット公フランツを囲む人々の、群像劇。
ナポレオンと、敗戦国オーストリアの皇女マリー・ルイーゼの間に生まれた、少年。彼は、父ナポレオンが没落すると、母の実家であるハプスブルク宮廷に引き取られた。やがて、母とも引き離され、一人、ウィーンに幽閉される。
仇敵ナポレオンの息子(だが彼は、オーストリア皇帝の孫だった)に戸惑う、周囲の人々。父への敵意から、懸命に自我を守ろうとする、幼いフランツ。しかしオーストリアには、敵ばかりではなかった……。
ナポレオンの絶頂期から、ウィーン3月革命までを描く。
※カクヨムさんで完結している「ナポレオン2世 ライヒシュタット公」のスピンオフ短編集です
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885142129
※星海社さんの座談会(2023.冬)で取り上げて頂いた作品は、こちらではありません。本編に含まれるミステリのひとつを抽出してまとめたもので、公開はしていません
https://sai-zen-sen.jp/works/extras/sfa037/01/01.html
※断りのない画像は、全て、wikiからのパブリック・ドメイン作品です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる