伊号式潜水艦。

ゆみすけ

文字の大きさ
上 下
17 / 253
潜航艇の軍事作戦とは?

潜航時間を伸ばすには?

しおりを挟む
 「で、今回の救出作戦はどうだった。」と参謀が、ちくま号艇長へ聞く。
「蓄電池が潜航速度を落とすことで、伸びたので往復50カイリあまりの潜航に耐えることができたのは、朗報です。」と、艇長がいう。
 「なるほど、いままでは25カイリ(46キロ)がギリだったからな。」と、参謀だ。
なんせ、公海上からの上海港までの潜航しての往復である。
 「それに、二酸化炭素量も思ったほど濃くなりませんでした。」と、艇長だ。
「そうか、二酸化炭素が濃くなると艇内の温度が高くなるからな。」と、参謀が危惧されたことを・・・
 「まあ、定員を減らせたので。」と、いままでより隊員は7名と減ったことが大きいのだ。
以前は14名だった。
 なぜなら、蓄電池の実用化とモーター推進の採用で人員を減らせることができたのだ。
以前は、水中で圧搾空気からエンジンを廻していたのだ。
 圧搾空気弁やエンジンの排出口など、常に調整しなければならなかったのだ。
その人員が・・・電気推進で減らせたのだ。
 それで、人員が減ればヒトが吐く二酸化炭素量も減るからである。
「それに、エンジンは五月蠅いですが、モーター推進は五月蠅くないですから悟られることもありません。」
 「なるほど、上海港は軍閥の見張りでいっぱいだったそうじゃないか。」と、参謀だ。
「シナの軍船(ジャンク船)で、港の入り口を封鎖してましたよ。」「しかし、さすがに海中は・・・誰もいませんでした。」
 「そうだろうな。」と、笑う参謀だ。
往復50カイリを潜航できるフネは日本海軍だけなのだ。
 海中では5ノット(約10キロ毎時)と、遅いが50カイリ(約90キロメートル)も運航できるのだ。
それも、潜ったままでだ。
 「危険地域からの邦人救出や、諜報員の派遣など使えそうだな。」と、参謀だ。 以前、情報部に居たからだ。
「情報は近代戦に欠かせないからな。」と、参謀がいう。
 エンジン潜航では、排気ガスが海上へ・・・そして、下手するとエンジン音が海上へ漏れるかも・・・
それが、電気モーター推進は、なんも感知できないのだ。
 もちろん、水中聴音器や音波反射聴音器があれば・・・
つまり、専門的な機材が必要なのである。

 「海軍工廠でも水中聴音器は研究してるが・・・まだ、まだらしい。」と、参謀だ。
「じゃあ、音波信号反射聴音器は?」
 「まだ、実用化のメドもたってないらしい。」と、参謀だ。
フランスの科学者が音波発振装置で水中の探査ができる装置を考えたらしいが・・・
 実用化のメドはたってないらしい。
反射音波の解析が・・・
 オシログラフも無い時代である。
ブラウン管での反射波の再現など、課題は山積だ。
 「つまり、潜航艇は無音潜航すれば無双ということですね。」と、艇長が・・・
「そうだな、だが魚雷の実用化が・・・」と、参謀が・・・
 「そうでした、水中での魚雷の発射が研究中だったんですね。」
「そうだよ、空気の泡で発射できるが多量の泡で潜航艇が発見されてしまうからな。」と、水中発射の盲点を突く。
 圧搾空気で魚雷を発射菅から押しだすことはできたのだが・・・
それに、魚雷がまっすぐに進まない・・・
 スクリューを2重反転にして、回転モーメントを打ち消すようには出来たんだが・・・
舵で調整するのだが・・・自動装置がうまく働かないのだ。
 要は、ジャイロの精度が不足してるんだが・・・
「工作精度の問題は、軍人では解決できないからな。」と、参謀が諦め話だ。
 工作精度は基礎工業分野だからである。
工作精度を上げるには、測定器から精度を上げなければならない。
 測定器から・・・まだ、数年先の話である。
 
 「しかし、参謀。」「うむ。」
「とにかく、敵の領域からの潜航艇での人員の救出や送り込みが可能になったんですよ。」
 「それは、おおきな成果だな。」と、納得の参謀であるのだ。
ここだけの話なのだが・・・潜航艇には魚雷は積んでいないのだ。
 魚雷は明治末期に欧州で開発されたが・・・
速度も遅く、使えない兵器だった・・・
 液体を混ぜ合わせて気体を発生させて、そのガスでエンジンを廻して推進するのだ。
潜航艇で武器なら魚雷しか・・・無いから・・・なんとか魚雷を実用化しないと・・・


 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大東亜戦争を回避する方法

ゆみすけ
歴史・時代
 大東亜戦争よ有利にの2期創作のつもりです。 時代は昭和20年ころです。 開戦を回避してからのラノベです。

満州国馬賊討伐飛行隊

ゆみすけ
歴史・時代
 満州国は、日本が作った対ソ連の干渉となる国であった。 未開の不毛の地であった。 無法の馬賊どもが闊歩する草原が広がる地だ。 そこに、農業開発開墾団が入植してくる。 とうぜん、馬賊と激しい勢力争いとなる。 馬賊は機動性を武器に、なかなか殲滅できなかった。 それで、入植者保護のため満州政府が宗主国である日本国へ馬賊討伐を要請したのである。 それに答えたのが馬賊専門の討伐飛行隊である。 

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

B29を撃墜する方法。

ゆみすけ
歴史・時代
 いかに、空の要塞を撃ち落とすか、これは、帝都防空隊の血と汗の物語である。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

空母鳳炎奮戦記

ypaaaaaaa
歴史・時代
1942年、世界初の装甲空母である鳳炎はトラック泊地に停泊していた。すでに戦時下であり、鳳炎は南洋艦隊の要とされていた。この物語はそんな鳳炎の4年に及ぶ奮戦記である。 というわけで、今回は山本双六さんの帝国の海に登場する装甲空母鳳炎の物語です!二次創作のようなものになると思うので原作と違うところも出てくると思います。(極力、なくしたいですが…。)ともかく、皆さまが楽しめたら幸いです!

日は沈まず

ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。 また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。

獅子の末裔

卯花月影
歴史・時代
未だ戦乱続く近江の国に生まれた蒲生氏郷。主家・六角氏を揺るがした六角家騒動がようやく落ち着いてきたころ、目の前に現れたのは天下を狙う織田信長だった。 和歌をこよなく愛する温厚で無力な少年は、信長にその非凡な才を見いだされ、戦国武将として成長し、開花していく。 前作「滝川家の人びと」の続編です。途中、エピソードの被りがありますが、蒲生氏郷視点で描かれます。

処理中です...