伊号式潜水艦。

九七式への対抗策。

これが、軍艦なのかっ・・・

　九七式戦闘機の経験が冷めやらない姫だったが・・・
陸軍の退役大佐にしてヤラレタ、もう１人の教育係（海軍退役）は軍艦を投入することで、起死回生を図ろうと画策していた。
　戦艦三笠は日露戦争で活躍した軍艦だが・・・大正から昭和となり旧式軍艦となり果てたのだ。
しかし、日露戦争の記念艦である。
　たやすくスクラップとは・・・できないのである。
それで、海軍としては訪問親善軍艦とすることとしたのだった。
　最新の戦艦は軍事機密も多い、しかし旧式艦は軍事機密が無い。
旧式の無線電信装置や動力を改造して・・・無線電話と石炭焚きを重油ボイラーへ改造したのだ。
　それで、乗員を減らすことできたのだ。
親善訪問のフネに予算は限られるからである。

　「おお、これが戦艦三笠か。」と、見上げる姫である。
ハシケからタラップでフネの甲板へ・・・
　軍艦へ訪問するのだ、それらしく歓待してくれる戦艦三笠である。
「姫様。」「なんじゃ。」
　「艦尾にある軍艦旗へ敬礼を。」と、乗り込むときの注意事項だ。
「うむ、承知した。」
　「あとは、敬礼されたら答礼を。」「うむ、わかった。」と、素直な姫である。
満州国の末席とはいえ、王族の姫だ。
　戦艦三笠は艦長クラス乗船と同等の歓待をしてくれたのである。
ちなみに、教育係の退役大佐は現、三笠の艦長と知り合いである。
　大佐は階級としては戦艦の艦長クラスなのである。
「お久しぶりです、歓待いたします。」と、三笠の真崎艦長だ。
　「あ、あ、今日は姫を同伴している、よろしく頼む。」と、石野教官が答礼する。
「なんじゃ、イシノの知り合いか？」と、姫だ。
　「そうです、後輩ですよ。」と、艦長だ。
「ほう、意外とイシノはヤルもんじゃのう。」と、姫が感心する。
　満州国も教育係に馬の骨は雇わないからね・・・

　「ここが、司令室か。」と、艦橋へあがった姫が・・・
「え、え、ここからフネのあらゆる命令を出すんですよ。」と、真崎君が説明する。
　三笠には艦橋の上に展望艦橋というか・・・露天の艦橋がある。
しかし、嵐など露天では・・・それで下に屋根つきの艦橋もあるのだ。
　ところで、司令室を何で艦橋というのか・・・艦橋・艦の橋？
それは、昔のガレオン船の頃には舵輪（舵）が舟のお尻にあったのだ。
　そして、船尾はフネ全体を上から見降ろせたのだ。
船長が指揮するのに都合がいいのだ。
　それが、近代の外輪船になり・・・フネのお尻では・・・不都合になったのだ。
そして、全体を上から見られるように、外輪船の外輪の上に左右に橋を渡したのだ。
　その橋の上で指揮を執るようになったのだ。
その名残で、司令室を艦橋というのである。
　露天の艦橋は伝統を重んじる英国海軍には最近まで使われていた。
嵐でもカッパを羽織って駆逐艦の艦長は指揮していたらしい・・・　

　そして、頃合いに・・・応接室で日本海軍伝統の海軍カレーが姫に・・・
給仕は海軍のオンナ士官だ。
　接待専門のお茶出し係である。
諸外国への親善訪問が多い、訪問親善軍艦ならではなのだ。
　そのオナゴの士官を見た姫は・・・もう、黙ってはいなかったのだ。
「なんじゃ、オナゴが海軍に士官として雇われているではないか。」と、驚く姫だ。
　以前、イシノに日本海軍へ入隊したいと要望した姫だが・・・
オナゴは軍艦には乗れないと・・・言いくるめられたのだ・・・
　しかし、眼の前にオナゴの士官が・・・階級章まで・・・なんと少尉だ。
しまった・・・と、後悔のイシノ退役大佐だが・・・あとの祭りである。
　もう、言い訳ができなくなったのである。