伊号式潜水艦。

ゆみすけ

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松本艇長、決断ス・・・

失敗は許されない作戦。

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 「松本少尉参りました。」
「うむ。」と、呉軍港の司令補佐が迎えた。
 「君を呼んだのは他でもない。」
「はぁ。」
 「この作戦を、やり遂げてもらいたいからだ。」と、指令書を渡す。
「ここで、拝見しても。」
 「うむ。」
許可を得たので、指令書をめくる少尉だ。
 「外地での作戦ですか?」
「そうだ。」
 「場所は上海港の側の桟橋と、ありますが。」
「あ、あ、上海を支配している軍閥の離宮がある、そこだ。」
 「ハァ。」
「どうした、軍事作戦かと思ったのか。」
 「そうです。」
「これは、軍事作戦ではない。」「拉致被害者救出作戦だな。」
 「満州国の姫とありますが、誰ですか。」
「うむ、それは言えない。」
 「その時間と場所に、その海面に浮上して舟からヒトをあずかり、潜水母艦へ連れてくればOKだ。」
「はぁ。」と、イマイチの返事の松本艇長であった。

 現在、日本は戦争を遂行していなかった。
キナ臭い紛争は・・・あくまで紛争だ。
 シナや満州国境で頻発していたが・・・開戦に至るほどではなかったのだ。
国際連盟の常任理事国として戦争を解決しなければならない立場だから・・・開戦なぞ、できないのだ。
 そして、朝鮮併合は時の総理であった伊藤博文の反対で否決されたのだ。(暗殺されなかった、なぜなら半島へは行かなかったのだ。)
 こうして、日本は建国から最大の朝鮮併合という危機を乗り越えていたのだ。(これは、妄想ラノベだ、朝鮮併合なぞ絶対に無いのだ。)
 日本は朝鮮と関わらない、助けない、教えない、という三原則を憲法に明記していたほどなのだ。
やつらと関わると、亡国なのである。
 鮮人と、関わってはならない。
鮮人と関わると開戦への道が・・・・周りの国を巻き込むヤカラが鮮人だ。
 日清、日露は鮮人と関わったからである。
日本海でソ連の覇権は防護すればイイのである。
 話がソレまくりだ・・・話を戻そう。

 「少尉殿、補佐はなんと?」と、軍属の電気技師が聞いた。
彼は、潜水艇の電気管理係の軍属技師だ。
 「あ、あ、上海から拉致被害者の救出らしい。」
「ほう、さすが潜航艇らしい作戦ですね。」
 「しかし、失敗は許されないらしい。」と、指令書を見せる。
「なんと、潜行して50カイリは進まないと。」(1カイリは1852メートルだ。)
 「そうだ、ギリなんだ。」
「まあ、出来ないことは無いですが。」と、軍属の技師だ。
 「本当か、ならOKといってくるが。」
「まあ、大きい声では言えんですが、蓄電池は6ノットを5ノットにすると倍も航行できるんですよ。」
 「なんだと、オレは聞いてないぞ。」
「え、え、先日の試験航行で判明したばかりですから。」と、技師が小声でいう。
 「余分な能力は隠していたほうがイイですから。」
「うむ、そうだな。」
 実際のところ、先の大戦でイ号潜水艦は8ノットを5ノットに減速するだけで運用時間が倍に伸びたのだ。
つまり、エコ運転ということである。
 そのエコ運転なら、往復90キロ以上が可能ということなのだ。
あとは、搭載する空気の量しだいとなるのだ。
 酸素とも考えたが、酸素は火花が機器から散ると・・・潜航艇が爆発して・・・全員が・・・海の藻屑だ。
潜航艇のモーターの接点からは火花が出やすかったのだ。

 潜水母艦に載せられて呉鎮守府を出港した潜航艇ちくま号である。
上海沖の公海上で潜航艇ちくま号は海面へクレーンで降ろされる。
 タラップから乗組員が乗り込んだ。
「空気ボンベは多めに積んだな。」「ハイ。」
 「蓄電池のガス検知の鳥は。」「ハイ、載せました。」と、カナリヤのカゴだ。
「では、各機器点検して、出るぞ。」「了解です。」と、隊員らの掛け声だ。
 7号潜航艇ちくま号は、初の拉致被害者救出という作戦へスタートを切ったのである。
「艇長。」「なんだ。」
 「そろそろ、潜航位置です。」と、海図を睨んでいた航海士が進言だ。
「よしっ、行くぞ。」と、ハッチが締まっているか確認だ。
 「ベント開け。」「空気弁開け。」「電気推進へ切り替え。」
「潜航っ。」
 やがて、波の音が聞こえなくなる。
そして、モーターの唸る音だけが・・・艇内に聞こえる。
 「艇長、5ノットで、セイホクセイへ進行中です。」と、航海士だ。
「うむ、会合地点は上海港の離宮沖、1カイリだ。」「時間は18時だが。」
 「艇長、18時なら月が出ていないので暗闇ですが。」「うむ。」 かなり、時間がすぎた。
「そろそろ、ですが。」と、海図を睨んでいた航海士が伝える。
 「潜望鏡の深度まで浮上。」「了解です。」
空気圧で海水が出る音が・・・すこし、潜航艇が・・・「潜望鏡深度です。」と、空気弁操作していた隊員が伝える。(潜航深度計が深度6メートルを示す。)
 潜航艇の潜望鏡は高さが船体から2メートル出ている。
つまり、伸び縮みはしない作り付けなのである。
 松本少尉は潜望鏡を覗いて・・・小舟からのカンテラの合図を待つ・・・チラ、チラと2回の光が・・・
「うむ、確かに小舟が・・・」と、つぶやく松本艇長だ。
 「よしっ、浮上しろ。」と、指示が出た。


 
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