ラジオコントロール飛行機物語。

ゆみすけ

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蒸気圧が足りない・・・

爆装したら、無理だぞ。

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 97式戦闘機は、陸軍において万能戦闘機として鳴らしているのだ。
敵戦闘機との戦いから、爆弾を積んで地上攻撃から偵察までもこなすのだ。
 それに、最大で3名も乗せられるのだ。
操縦士の後ろの空間へ簡易の座席があり、そこへ3名のヒトを乗せることができるのだ。
 もちろん、爆弾やロケット弾などは無しである。
それで、胴体の日の丸の部分が扉になっていてパカリと開くのだ。
 つまり、250キロ爆弾1発か、ロケット弾4発か、3名のヒトを乗せるかができるのだ。
それは、頑丈な草原でも着陸できる固定脚のおかげなのである。
 そして、その頑丈な脚は空母へ着陸する絶対条件だったのだ。
そう、なのである。
 97式戦闘機は空母への着艦をみこして造られていたのである。
原因は海軍の96式艦上戦闘機のパクリだからだが・・・
 海軍の96式は単座で、3名も余分には乗せられない。
胴体に扉なんて無い。
 無線機やら防弾鋼板も無い。
海軍との差別化を図るための措置だったんだが・・・それが利点になってしまったようである。
 それで、重量が400キロほど重くなってしまったのだ。
それで、海軍用のエンジンでは、飛び立てない・・・
 仕方がないから・・・陸軍の双発爆撃機の1200馬力の星形18気筒エンジンに換装されたのだ。
96式は500馬力だった・・・それが、いきなり1200馬力だ。
 蒸気式カタパルトで蒸気圧が6でも・・・
「もうすこしだ。」とのテスト操縦士の感想だ。
 ギリで飛べたのだが・・・武装や3名の乗員を乗せるとなると・・・不安だからだ。
「よし、今度は最大圧の9だぞ。」
 「いいか、首に負担がかかるから、注意しろよ。」「了解だ。」
信号が赤から青に・・・
 シュパーーーーーーーーーーーン。」と、かなりのショックが・・・
あっという間に空中だ。
 「いかん、操縦桿が・・・」と、あわてて操縦桿で機体を立て直す。
「ふう、ショックで気絶するところだったぞい。」と、テスト操縦士は冷や汗だ。
 ショックで風防が開いて・・・風で飛んでしまったほどだ。
「へたに、爆弾を積んでいたら・・・ショックで爆発しかねないぞ。」と、憂慮する操縦士だ。
 地上を見ると・・・飛行甲板が・・・大量の水蒸気で見えない・・・
「どうしたんだ。」と、無線で聞く。
 「大変だ、水蒸気爆発だ。」「収まるまで、降りてくるなよ。」
つまり、あまりに水蒸気圧が高かったので・・・シリンダーが・・・圧力に耐えられなくて爆発したらしい。
 水蒸気タンクが爆発すると危険だから、その前にシリンダーが破裂するように造ってあるのだ。
「これは、シリンダーを定期的に交換しなければならないようだ。」と、技師らが・・・
 つまり、それほどの水蒸気圧ということである。

 そして、今度は250キロ爆弾を積んでのカタパルト射出試験だ。
250キロ爆弾の替わりにコンクリート片を250キロ積み込んだのだ。
 外見は爆弾だが、中身はコンクリだ。
「蒸気は収まったな。」「シリンダーは交換したな。」
 「よし、今度は爆装試験だ。」
テスト操縦士の顔が緊張する。
 赤いランプが青に・・・
「シュパーーーーーーーンンン。」と、重い戦闘機を台車が押し出した。
 風防から操縦士が勢いで振られるのが見える。
停止状態から1秒から2秒ほどで、200キロ越えの速度になるのだ。
 かなりの負担が体にかかるのだ。
危険手当は付くのだが・・・そんな程度では、焼け石に水だ。
 「これは、座席や操縦服をショックに耐えるように改造しなくては・・・」と、心配する技師らである。

 250キロのコンクリのカタマリを載せて、無事に地上へ降り立ったテスト操縦士が・・・
「これじゃ、体がいくつあっても持ちませんよ。」「危険手当の倍増を要求しますよ。」と、もう二度とゴメンなようである。
 それほど、体への衝撃がカタパルトにはあるようだ。
「機体がリベット留めなんだが・・・リベットで留めるのは衝撃に弱いのだ。」と、金属疲労が始まった翼の付け根を調べる。
 「機体の定期検査の回数をカタパルトの使用回数で増やさねばならないようだ。」
「空中分解の事故になりかねんぞ。」と、注意喚起である。
 機体の翼の桁は超々ジュラルミンという日本独自の合金だが・・・溶接ができないのだ。
それで、リペットで固定するのだが・・・その穴が金属疲労で広がる危険があるようだ。
 しかし、主翼の桁の交換なんて無理な相談だ。
それくらいなら、新造した方が安価なくらいなのだ。
 「これは飛行時間は2000時間が限度だな。」と、技師が言い出した。
つまり、空母で運用する戦闘機は合計飛行時間が2000時間で廃棄ということである。
 もったいない話だが・・・事故で墜落の危険があるからである。
こうして陸軍に、空母運用のノウハツが段々と造られていくのである。
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