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まさか、エンジンなのかっ!

まさか、日本製だとは・・・思っていなかったよ・・・

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 「おや、これはエンジンじゃないのか。」と、見学していたパツキン野郎が言い出した。
旋盤で加工されてるエンジンブロックを見れば、わかるからだ。
 「おい、オレが機体に使ってる、02エンジンだぞ。」
「あっちは、40エンジンだぞ。」と、別の工程のエンジンを指す。
 通訳を通じて質問が出たのだ。
「コレハ、ココデ造ッテルノデスカ。」「そうです。」
 「設計ハ、誰デスカ?」
「うむ、私だ。」と、サイトウ君だ。
 通訳がサイトウ君を示して、なんか言う。
まさか、の顔の青い眼の生徒らだ。
 生徒の一人が・・・質問を通訳へ・・・
通訳が、「キャブという部品の調整方法が説明文で、わからないらしいいですが。」
 「うむ、では説明しよう。」と、サイトウ君が駄弁りだした。
通訳は専門用語の英訳に困った風だったが、図で解説すると、生徒が納得したようだ。
 「じつは、機体を持参しているそうです。」「なるほど。」
「それで、エンジンを見て欲しいと。」と、通訳がいう。
 「では、そうしましょう。」と、試験飛行場へ見学の生徒らとサイトウ君が出かけるのだ。
 
 「これが、そうか。」と、フリーフライト機を見るサイトウ君だ。
「うむ、エンジンは02番か。」
 フリーフライト機はエンジンコントロールが無い。
つまり、キャブレターは空気穴への調整針だけで調整して飛ばす機体だ。
 エンジンの燃料が無くなると不時着して回収する機体である。
日本は広大な地所が無いから普及はしなかったのだ。
 なんせ、山が多いからね。
しかし、欧州のフランスなどは広大なブドウ畑など・・・場所はあるのだ。
 機体は飛行クライダー風な翼が細長い高翼機だ。
設計は、サイトウ君である。
 確か、3番目に設計したスカイトーン号だ。
エンジンが一番小さいが・・・なかなか安定して飛行する名機である。
 「これは、空気量を調整する針が曲がってるじゃないか。」と、キャブの調整針を外す。
そして、別の曲がっていない針を交換する。
 そして、小さな燃料タンクへ10ccほどグロー燃料(混合ガソリン)を入れる。
生徒へ、「飛ばしてもOKか。」と、了解を得るサイトウ君だ。
 もちろん、OKの生徒である。
一番小さなエンジンだ。
 点火プラグへ電池をつないで・・・手で1回クランクしたら、かんたんにエンジンは廻りだした。
「ブル、ブル、ブル。」と、廻るエンジンだ。
 調整針を廻すと回転があがり・・・「ビーーーーーーーン。」と、勢いよく廻りだす。
そして、両手で機体を持って、ひょいと・・・離した。
 スカイトレーン号は、高度10メートルほどを軽く飛行する。
エンジンが小型で馬力も無いから速度は20キロ毎時ほどだ。
 300メートルほどで、燃料が尽きて・・・ストンと不時着した。
あまりにカンタンに調子がよくなったので生徒は大喜びである。
 欧州視察団の信頼を得た、サイトウ君だ。

 工場見学を終了した生徒らは、かなり満足した顔だった。
が、その顔が驚愕することが待っていたのだった。
 そう、試作無線操縦機のお披露目である。
無線通信が船舶や国同士で行われることは、生徒らも知っていた。
 しかし、飛行機の無線操縦は軍の研究段階で、一部の有識者のみの話題であった。
「これから、御見せするのは、我が社の研究段階の飛行機です。」
 「まだ、市販はされていませんが・・・」
と、通訳が説明する。
 「ガラ、ガラ。」と、犬塚君が手押し車で運んでくる。
そこには、無線操縦の機体で各学校へ渡している機体が乗っていたのだ。
 大きさは、翼が2メートル、長さが1,5メートルで、エンジンは60クラスの大型エンジンだ。
「みなさん、これがわが社の無線操縦機です。」と、犬塚君が説明する。
 そして、無線機を両手にもって、操作レバーを倒す。
すると、機体の尾翼の舵が左右に振れるのだ。
 「お、お~っ。」と、歓声が生徒らから・・・あがる。
サイトウ君がエンジンを掛ける。
 「バリ、バリ、バリ。」と、五月蠅いエンジン音だ。
そして、無線機のボタンを3回押す、犬塚君だ。
 すると、エンジン回転が高回転となり、「ビーーーーーーーン。」と、ペラが廻りだす。
どうやら、無線装置は異常無いようだ。
 機体を動かないように押さえていたサイトウ君が合図で機体を離した。
「スル、スル、スル。」と、滑走を始める。
 そして、演じ恩回転がさらにあがり・・・機体は軽く飛び上がったのだ。
「ブーーーーーーーン。」と、いうエンジン音で上昇する機体だ。
 やがて、左旋回を45度だ。
そして、また旋回する。
 つまり、生徒らの頭上を旋回してるのだ。
口を開けて、空を飛ぶ機体を見上げる生徒らである。
 エンジン回転が落ちる、機体は急降下だ。
そして、エンジン回転が急に上がる。
 機体は急降下から上昇して、そのまま宙返りを・・・
「わあ~っ。」と、歓声があがる。
 エンジンコントロールだけで宙返りができるのだ。

 やがて、15分くらいで燃料が尽きて・・・グライダーのように滑空して・・・そのまま着陸する・・・
「わぁ~っ。」と、生徒らは無線操縦機へ駆けよる。
 そして、矢継ぎ早に質問の嵐だ。
どうやら、この機体は欧州での販売を考えてるか・・・ということらしい。
 自分が思うとうりに操縦できる模型飛行機は・・・夢の世界の話であると、皆が思っていたのだ。
それが、現実となり目の前にあるからだ。
 
 
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