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飛行爆弾を爆撃機から投下する。

爆弾は1個で、いいのだ。

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 「ふむ、飛行爆弾を爆撃機から投下するということなんだな。」と、陸軍の軍司令の参謀がいう。
「そうです、とりあえずは現行の飛行爆弾が爆撃機からの投下で使えるかということです。」と、サイトウ君が説明する。
 「その、飛行爆弾は飛行というからには、飛行するんですよね。」と、空中勤務員が聞く。
陸軍では、操縦士を空中勤務員と呼ぶのだ。(搭乗員は海軍式の呼び方だ。)
 「地上からの離陸しての飛行は成功してますから。」と、サイトウ君がいうが・・・
陸軍の操縦士は半信半疑のようである。
 なんせ、陸軍内でも飛行爆弾は十分に知られていないからだ。
戦艦大和の主砲が終戦後でも46サンチとは知られていないごとしだ。
 そして、九七式重爆撃機での飛行爆弾の実験が行われることとなったのだ。
まだ、飛行機に乗ったことがないサイトウ君だ。
 はっきり言って、うれしくてしょうがないのである。
陸軍の飛行場へ飛行爆弾を持参して・・・試験運用へ望むサイトウ、犬塚君両人だ。
 しかし、爆弾庫は2メートルも幅が無いのだ。
爆弾庫ではなく、翼へ吊り下げるのであった。
 「まてよ、エンジンをどうするんだ。」と、なる。
胴体の扉を開けて飛行爆弾を機外へ放出することとするのである。

 機内は幅が2メートルも無いから・・・機内では翼は外しておかねばならない。
そして、エンジンをかけて翼を付けてから機外へ放出しなければならない。
 つまり、結構難しいのである。
「では、行きますよ。」と、機長がいう。
 九七式重爆撃機は滑走路を走り出す。
機内は騒音で互いの声は聞こえないほどだ。
 そこで、持参したマイクつきイャフォンを飛行帽へ付けて・・・互いの通信をするサイトウ君と犬塚君だ。
それの通信装置は無線電話を応用したもので、有線ではない。
 腰に弁当箱ほどの装置があるだけだ。
軍用機は旅客機と違って機内の騒音を考えていないからである。
 それは、現在の軍用機も同じだ。
特にヘリは騒音が酷くて・・・会話がイャホンマイクがないと無理である。
 そして、そのイャフォンマイクを見て感心する陸軍の隊員らであった。
なぜなら、手信号が会話なのだから・・・カンタンな言葉しか無理だからだ。
 そして、地面には的である赤い印が・・・
そして投下地点からの距離や方角や高度から・・・飛行爆弾の飛行コースを操縦装置へ入力する犬塚君だ。
 そこは、帝大出の秀才だから暗算で即なのである。
機長が振り向いて片手を上げる。
 そろそろ、投下地点ということだ。
陸軍の隊員が胴体の扉を開ける。
 風がすごい・・・さすが、高速爆撃機の九七式重爆撃機である。
扉は胴体の日の丸が上と下に開くのだ。
 左右では風圧があるから無理だ。
機長の片手が下がる。 合図だ。
 サイトウ君が飛行爆弾を、「行けぇい。」と、叫んで機外へ放り投げた。
飛行爆弾は九七式重爆撃機から離れて降下していく。
 高度が地上から、3000メートルという爆撃するには高々度だ。
水平爆撃では、まず的には命中しないのだ。
 それで、何発も爆弾をばらまくのである。

 飛行爆弾は左右に舵を切り、廻るように的をめがけて降下していくようだ。
「まるで、コントロールされてるようだった。」と、機長が感想を後で言っていたのだ。
 吸い込まれるように、的へぶつかった飛行爆弾だ。
爆発物は試験投下なので、当然無い。 爆弾のかわりに砂袋が積んであるのだ。
 地上の赤い点の印の上にぶつかった飛行爆弾の胴体が機上からでも確認できたのだ。
これが、無線操縦なら標的まで飛行爆弾を操作しながら投下できるのだ。
 それも、1発あればいいのである。
1発必中なのである。
 たとえ、敵が動く標的でも無線操縦なら誘導できるのだ。
無双の兵器である。
 敵の戦艦なら、艦橋へ命中させることもできるのだ。
軍隊は司令部がやられたら・・・負けである。
 九七式重爆撃機は飛行爆弾の投下に成功して・・・もう、満面の笑みの陸軍幹部の出迎えを受けたのである。
「これは、今後の戦争に革命を起こす武器になるぞ。」と、声を大にして幹部がいうのだ。
 「話にあった無線操縦の予算は、まちがいなく国会を通過させますぞ。」と、満面の笑みである。
なぜなら、いままで百発百中の武器なんて夢だったのだ。
 それが、我が陸軍の手にあるのだから・・・
日本は海軍国家である。
 それは、現在も変わらないが・・・それが、陸軍にとり負の部分だったのである。
決定的な秘密兵器が・・・我が陸軍にあるのだ。
 相手への攻撃をピンポイントで正確にできるのだ。
それも、相手から攻撃されないアウトレンジからである。
 あとは、この秘密兵器が敵の手に渡らないように注意するだけなのだ。
「貴殿の会社へ特高警察の詰め所を設けたいが。」と、言い出す陸軍幹部だ。

 
 
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