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エンジンは生きてるのだよ。

電気モーターとエンジンの差は野郎とオナゴだな。

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 「キャブレターへのコントロールの棒の長さを短くしなければ。」と、ネジで調整するサイトウ君だ。
「えっ、でも、先ほどまで調子よく廻っていたじゃないか。」と、犬塚君だ。
 「そうなんだが、エンジンというヤツは機嫌を取らないと・・・」と、生き物扱いするサイトウ君だ。
「まるで、生き物だな。」と、冗談をいう犬塚君だが・・
 「エンジンは調子がいい時と悪いときがあるからな。」
「そんなもんなのか。」と、犬塚君がいう。
 「とくに、カンタンなエンジンほど、そうなるな。」と、サイトウ君だ。
「モーターとは違うんだな。」「モーターは機嫌を取らなくてもいいぞ。」と、犬塚君が・・・
 「いや、オレは人間臭いところが好きなんだ。」と、焼玉エンジンをなでるサイトウ君だ。
「まあ、モーターとエンジンは別物だからな。」と、今更な意見を犬塚君がいう。
 「エンジンや野郎ならモーターはオナゴだな。」と、サイトウ君だ。
「エンジンは騙し騙しでも、なんとか動かせるが・・・モーターはダメなら、全くダメだからな。」と、加える。
 「・・・・」なんも言えない犬塚君である。
確かに、そうだからだ。
 モーターは犬塚君の専門なのだから、よくわかるのだ。

 「さあ、なんとか廻るように調整できたぞ。」と、スターターを廻す。
「バ、バ、バ、バ、バァ。」と、エンジンが廻りだした。
 キャブのネジを少し廻す。
「ブーーーーーーン。」と、勢いよくプロペラが廻りだした。
 手で、行けそうだと合図するサイトウ君だ。
あわてて、無線送信機を手に持つ犬塚君である。
 さすがに、2メートルの機体だ。
手に持って・・・放りなげるなんて無理である。
 そこは、実機と同じだ、滑走させるのだ。
機体を押さえていた手を離す。
 「スル、スル、スル、スル。」と、機体が走り出した。
なんか、サイトウ君が叫んでるようだが聞こえない。
 離陸するから、エンジンは最高の回転になるようにセットしてある。
やがて、無線操縦の飛行機は、「フワリ。」と、浮かんだ・・・
 なんか、サイトウ君が叫んでるが・・・聞こえない。
こっちへ駆けてくる、そして、「機体を見逃すなよ。」「見えなくなったらダメだぞ。」と、叫んでるのだ。
 そうだ、あまり離れると・・・電波が届かないのだ。
送信機の出力真空管は超小型のマイクロ真空管だ。
 
 機体が空へ飛んだ。
そうだ、旋回させなければ、ならない。
 あわてて、「トン。」と、尾翼を左へ動かす信号を送る。
機体は左へ傾いて・・・「おい、落ちるぞ戻せ。」と、叫ぶサイトウ君だ。
 あわてて、ボタンから手を離す。
機体は旋回していたが・・・態勢を立て直して直進する。
 「次の、旋回を忘れるなよ。」「ボタンは押してすぐに離すんだ。」と、サイトウ君が叫んだ。
エンジンのコントロールを操作してみたいが・・・そんな余裕は無い!
 どうにか、視界から機体が消えないように旋回させるのが・・・精一杯なのだ。
「よし、旋回だ。」と、ボタンを、「トン。」
 そして、また「トン。」だ。
うまく45度の旋回を・・・・
 なんか、サイトウ君が叫んでるが・・・犬塚君には聞こえていないようだ。
「パラ、パラ、パラ。」と、エンジンが停まりそうな音が・・・
 「おい、燃料がなくなるぞ。」
「着陸させるのだ。」と、サイトウ君が叫んでるが・・・
 「どうすんだよ。」と、頭がカラッポになる犬塚君だ。
「あわわわわわわ。」と、わめいてるが・・・
 やがて、エンジンの音が・・・プロペラが止まってるのが・・・
機体は・・・そのまま高度を下げて・・・
 草むらへ・・・「ストン。」と、落ちるように着陸したのだ。
機体は、そのままでも飛ぶように設計してあるのである。
 そこは、飛行爆弾の機体設計と同じであるのだ。
時間にして、約15分間の無線操縦飛行だった。
 日本で初めての無線操縦模型飛行機の飛行であったのだ。
惜しいのは、写真が1枚も無いことだが・・・

 「機体は大丈夫かな。」と、不時着した機体を見る。
もとより、不時着しても無線装置は壊れないように綿(わた)で包んであるから問題ないようだ。
 翼も無理な力が加わると外れるように考えてあるのだが・・・そこまでの不時着ではなかったようである。
「よいしょっと。」と、機体を草むらから運び出した。
 「脚が曲がったくらいで、そのほかは、まあまあだな。」と、カンタンに点検する。
「よし、一旦かえって、機体の整備だな。」と、サイトウ君だ。
 「無線装置は問題なかったな。」と、犬塚君が嬉しそうにいう。
まあ、誤作動はしなかったからね。
 「まあ、陸軍の幹部へのお披露目は、まだ先の話だがな。」
「でも、これなら行けそうじゃないかな。」と、サイトウ君がいう。
 「誘導飛行爆弾となるぞ。」「敵の移動へ対処できるから、もしかして敵の戦闘機や爆撃機へ命中させたら・・・」
 と、妄想が膨らむサイトウ君だ。
「しかし、現実の飛行機に追いつけるほど速度がでないぞ。」と、犬塚君がいうが・・・
 「そこは、エンジンしだいだぞ。」と、夢をいうサイトウ君である。
確かに、相手が敵の戦闘機なら、爆弾は少なくてもいいからだ。
 最悪、敵の戦闘機へぶつかるだけでも・・・かなりのダメージを与えるだろう。
それも、操縦士は搭乗していないのだ。
 そうなのだ、戦死しなくてもいいのである。


 
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