上 下
9 / 60
これが、陸軍の空母かっ!!!

全通甲板だが、停止させるワイヤーが無いぞ。

しおりを挟む
 「これパット見、空母に見えますけど・・・」「着艦用の停止させるワイヤーが・・・」と、斎藤君がいう。
「君、痛いことろを突くねえ。」と、陸軍の士官だ。
 「それは君、着艦用のワイヤーを知ってるなんて、スミに置けないね。」
「いえ、子供の科学という雑誌に空母が記述されて、米軍の空母の写真がありましたから。」と、斎藤君がいいわけだ。
 「確か、甲板の下にコイルバネで・・・」と、説明する。
「そうなんだが、うまいかんのだ。」と、陸軍の士官がいう。
 「海軍へ教えてもらえば・・・」
「ヤツらから教えてもらうくらいなら、米軍の方がマシだ。」と、陸軍が怒りの鉄拳を・・・あげる。
 まあ、陸軍が自前の空母を持ってる段階で気づくべきなのだが・・・
猿と犬より仲が悪い、海軍と陸軍だ。
 それも、昨日今日ではない歴史と伝統とメンツがあるのだ。
飲み屋で顔を合わせると、ケンカだ。
 酒が入ってるから・・・殺し合いまでにはならなおが・・・けが人は多々・・・出るそうだ。
欧米でも、陸軍と海軍同志は仲が悪いそうだが・・・日本ほどではないようだ。
 島国根性が日本は強いから・・・その影響が大きいからだそうだが・・・
なんとも言えない。

 互いに兵器の使う修理工具から差があるのだ。
陸軍機と海軍機とは、機器も違いがあるのだ。
 規格からして差があるのだ。
現在の自衛隊でも、その伝統は引き継いでいるのだ。
 もちろん、表面上は言わないが・・・内心はあるに決まってる!
ヒトは、そう簡単に性格は変わらない。(臨死体験でもすれば性格が変わるらしい。)
 制服でも、海軍の紺色7つボタンはカッコイイのだ。
陸軍のカーキー色の制服は・・・やぼったいのだ。
 「まてよ、これなら甲板から発艦できそうだな。」と、斎藤君だ。
「このフネなら飛行爆弾が使えそうですよ。」と、参考意見だ。
 「なんだと、それもそうだな。」と、士官が頷いた。
「この空母は敵艦への対抗武器が無いからな。」と、機銃を示す。
 機銃は敵戦闘機用だ。
「魚雷は、海軍が渡してくれないからな。」と、飛行爆弾へ期待する陸軍士官だ。
 「まあ、満州で実用化試験しだいですけど。」と、言い訳する斎藤君だった。

 数日で大連の港へ・・・
そこから、輸送トラックで奉天市へ・・・
 荷台で積荷と同乗する斎藤君である。
それからが、大変だったのだ。
 道路は凸凹だ。 
そして、砂埃がすごいのだ。
 「これでは、エンジンへ砂埃が入って・・・エンズトしかねないぞ。」と、危惧する。
なんせ、エンジンのキャブレターは霧吹き式のカンタンなやつだ。
 それで、空気清浄の細かいアミなどは・・・考えていなかったのだ。
「代用品はないものか。」と、積荷を漁るが・・・あるわけない!
 「どうしたものか。」と、思考をめぐらすが・・・良いアイデアなぞ浮かばないのだ。
「なんとか、実験する平原に着くまでに・・・」と、考える斎藤君である。
 突然、トラックが停止した。
別に、なにかあったのかな?
 運転手がボンネットを開ける。
単なる故障のようだ。
 当時の自動車は路上でよくエンコしたのだ。
オーバーヒートで煙を吐くクルマなんて、いくらもあったらしい。
 「くそっ、キャブが詰まったらしい。」と、屁垂れる運転手だ。
「原因はキャブですか。」と、斎藤君がシャシャリ出る。
 まあ、カンタンな焼き玉エンジンを設計、製造できる腕があるから・・・その辺の整備士より、はるかにマシなのだ。
 「見せてください。」と、エンジンを覗く。
「燃料はキャブまできてますね。」と、黄色いゴム管を見る。
 「なら、このキャブはフロート式ですから・・・」と、ネジ回しで空気清浄器を外して・・・
「空気清浄器が・・・砂だらけですよ。」と、紙が茶色に砂でなってる・・・
 その紙を外して、砂を払った・・・
そして、キャブのフロートをトントンとつついて・・・動くように・・・
 そして、プラグを外して、点火する接点のススを取り除く。
「あんた、さすがだねぇ~。」と、感心する運転手だ。
 
 「エンジンを掛けてみてください。」「おう、そうか。」
ちなみに、エンジンは手動でクランクを廻すのだ。
 スターターモーターは当時は、まだ無い。(米国では使われていた。)
クランクは下手に廻すと、エンジンが掛かって反動でクランクが跳ね返り・・・ケガをすることもあるらしい。
 「ブル、ブル、ブルルン。」と、エンジンがかかった。
「行くぞ、予定より遅れたぞ。」と、陸軍の士官が叫んだ。
 満州平原を目指して実用化試験隊は進んでいく。
やがて、陸軍の自動車部隊が待機している場所へ到着する。
 「おう、遅いぞ。」と、陸軍のお偉いさんが自動車から降りる。
「遅れました。」「実験隊、ただいま到着しました。」と、士官が敬礼だ。
 「うむ、ごくろう。」と、幹部が答礼だ。
「それで、飛行爆弾は、どれだ。」と、興味深々なようだ。
 「50キロ先の目標へ爆弾を投下できるとは信じられんからな。」と、幹部がいう。
当時の陸軍の最大火力が野砲である。
 しかし、10キロ先も飛行機から着弾観測なしでは無理だ。
普通、10キロ先なんて地平線のむこうだからだ。
 「聞いた話だが・・・丘の向こうへも届くらしいな。」と、遥か先を示す。
「え、え、そこまでの距離と方向がはっきりすればですが。」と、斎藤君だ。
 「つまり、偵察した場所へだな。」
「そうです。」
 まさか!の顔の陸軍幹部だ。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

本能のままに

揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください! ※更新は不定期になると思います。

旧式戦艦はつせ

古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。

小童、宮本武蔵

雨川 海(旧 つくね)
歴史・時代
兵法家の子供として生まれた弁助は、野山を活発に走る小童だった。ある日、庄屋の家へ客人として旅の武芸者、有馬喜兵衛が逗留している事を知り、見学に行く。庄屋の娘のお通と共に神社へ出向いた弁助は、境内で村人に稽古をつける喜兵衛に反感を覚える。実は、弁助の父の新免無二も武芸者なのだが、人気はさっぱりだった。つまり、弁助は喜兵衛に無意識の内に嫉妬していた。弁助が初仕合する顚末。 備考 井上雄彦氏の「バガボンド」や司馬遼太郎氏の「真説 宮本武蔵」では、武蔵の父を無二斎としていますが、無二の説もあるため、本作では無二としています。また、通説では、武蔵の父は幼少時に他界している事になっていますが、関ヶ原の合戦の時、黒田如水の元で九州での戦に親子で参戦した。との説もあります。また、佐々木小次郎との決闘の時にも記述があるそうです。 その他、諸説あり、作品をフィクションとして楽しんでいただけたら幸いです。物語を鵜呑みにしてはいけません。 宮本武蔵が弁助と呼ばれ、野山を駆け回る小僧だった頃、有馬喜兵衛と言う旅の武芸者を見物する。新当流の達人である喜兵衛は、派手な格好で神社の境内に現れ、門弟や村人に稽古をつけていた。弁助の父、新免無二も武芸者だった為、その盛況ぶりを比較し、弁助は嫉妬していた。とは言え、まだ子供の身、大人の武芸者に太刀打ちできる筈もなく、お通との掛け合いで憂さを晴らす。 だが、運命は弁助を有馬喜兵衛との対決へ導く。とある事情から仕合を受ける事になり、弁助は有馬喜兵衛を観察する。当然だが、心技体、全てに於いて喜兵衛が優っている。圧倒的に不利な中、弁助は幼馴染みのお通や又八に励まされながら仕合の準備を進めていた。果たして、弁助は勝利する事ができるのか? 宮本武蔵の初死闘を描く! 備考 宮本武蔵(幼名 弁助、弁之助) 父 新免無二(斎)、武蔵が幼い頃に他界説、親子で関ヶ原に参戦した説、巌流島の決闘まで存命説、など、諸説あり。 本作は歴史の検証を目的としたものではなく、脚色されたフィクションです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

独裁者・武田信玄

いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます! 平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。 『事実は小説よりも奇なり』 この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに…… 歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。 過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。 【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い 【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形 【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人 【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある 【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。 (前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)

トノサマニンジャ

原口源太郎
歴史・時代
外様大名でありながら名門といわれる美濃赤吹二万石の三代目藩主、永野兼成は一部の家来からうつけの殿様とか寝ぼけ殿と呼ばれていた。江戸家老はじめ江戸屋敷の家臣たちは、江戸城で殿様が何か粗相をしでかしはしないかと気をもむ毎日であった。しかしその殿様にはごく少数の者しか知らない別の顔があった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...