戦車がすべての世の中。

偵察の意義

聞くより見ることだ。

　　「点検は、どうだ。」　「はい、今のところ問題ないようですね。」　「ネジのゆるみもありません。」　「サスペンションに亀裂はないと。」　と板バネを点検していた砲手がいう。　「エンジンはどうだ。」　「プラグは掃除しました。」　「そうか、では搭乗して、出発だ。」　シャーマンより小さい車室だが、軽だからガマンだ。　車内は広いにかぎるのだ。　「言い忘れたが、用は足したな。」　「してきましたよ。」　トイレの確認だ。　偵察では、トイレといって車外で用を足していては、すわッ攻撃されたとき逃げるのが遅れるのだ。　用足しは、替わりばんこだ。　しかし、偵察では車外にはでたくはない。　狙撃される恐れもある。　戦車にトイレは基本的に装備されていない。　あの、独逸帝国の怪物、マウスにもトイレはなかった。　では、戦闘中はどうしたか？　88ミリ砲弾の薬莢に小便ならＯＫだ。　そして、車外にポイだ。　ウンチは、わからんし聞けなかった。　コーヒーは飲むと尿意を催す、だから帰隊してからだそうだ。　「さて、行くぞ。」　「ダダダダダダダダダ。」とエンジンが唸り、走り出したスチァートだ。　オトコ臭い車内の臭いにも慣れた頃、「ん、なんだ。」　「まだ、攻撃されたシャーマンが・・・」　「まあ、回収も独逸軍がいるから出来ないからな。」　回収しようにも、専用のクレーン戦車がない。　履帯と車輪がヤラれては、牽引は無理だ。　夜間にこっそりと、「米軍がそんなマネできるか。」　で、夜間には無しだ。　数ある、シャーマンだ。　1両欠など問題はないのだ。　「しかし、あまりいい、見世物でもないからな。」　そうだ、ヤラれた自軍の戦車なぞ、誰も見たくはない。　「まあ、そのうちだろう。」　車長はキューポラからの見張りにいそがしい様だ。