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眼の錯覚は恐ろしい。
高速キリモミが意味するのだ。
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一瞬、消えたように見える日本軍戦闘機。 それは、高速キリモミ回転がなせる技である。 翼が回転で見えにくくなったのだ。 そして、陸軍機は灰色である。 灰色は、すべての色が混ざった色でもある。 それで、背景に溶け込んで、一瞬見えなくなったような錯覚を感じたのである。 あれっ、と見直すと判別できるのだが・・・ 互いに高速で飛行してるのだ。 なかなか、できるものでもないのだ。 この高速スピン回転は100式の翼が層流翼の小ぶりだからできる技なのだ。 まさに、忍者戦闘機なのだ。 「なんだ、モンキー野郎は忍者なのか!」と、アームストロング隊長は、一瞬の判断を迷う。 そのスキを尽いて、日本軍と米軍の前後が入れ替わったのだ。 「隊長、これはヤバイですぜ。」と、僚機が・・「あ、あ、ここは、いったん退避するぞ。」「了解だ。」 マスタングはすばやい動きで・・・ 「ヤツら、逃げにかかりました。」と、偵察員が佐々少佐へ告げる。 「うむ、ここは逃がさんぞ。」と、キリモミを停止して、スロットを上げる。 ピタリと5機がキリモミ回転を停止して、隊長機に続く。 そこは、さすが陸軍航空隊である。 練度が、わかるのだ。 米海軍相手に、引けを取らない日本陸軍である。「各自、マークする機番を逃すなよ。」と、佐々少佐が吠える。 佐々は1番機の前である。 そう、指揮官機は先頭なのだ。 小隊単位の空戦だからである。 中隊や大隊なら、違ってくるんだが。 小隊なら、先頭で指揮がセオリーである。 それは、米軍も同じだ。 自然と、1番機は1番機へ、2,3番機は2,3番機へと喰らいつくのだ。 とうとう、混戦となった模擬空戦である。 それで、空中衝突を避けるために、会場一杯の空戦の展開となったのだ。 観客は、あそこだ、イヤこっちだ、と・・・・ もう、眼の廻る忙しさである。 互いに、相手の後ろを盗ろうと必死である。 「こう見ると、マスタングと欲張り型は大差ないですね。」と、司会者が駄弁る。 いい勝負に見えるからだ。 「そうですね、あそこまで欲張り型がマスタングに迫るとは思わなったんですが。」と、解説者だ。 「とうとう、マスタングも時代は終わりですか。」と、司会だ。 「それは、早急ですね、まだマスタングは、まだまだと思いますが。」と、解説が援護だ。 「現に、日本軍は変態めいた戦闘機で対処してるじゃないですか。」と、解説者がいう。 「確かに、なんせ欲張り型ですからね。」と、ニガ笑いの司会者である。 解説者が言うのももっともなことなのだ。 なんせ、電子機器と風変わりな機体でしか、日本軍はマスタングへ対抗できないのだから。 いかに、マスタングがすごいか再認識する会場の観客であった。 しかし、混戦はいつまでも続けられない。 互いに高度が低くなるからである。 高度は400だが、それでも混戦する高度では無いのだ。 1000以上が望ましいのだ。 下手すると、地面へ激突だ。 100式は、高度な電波反射式高度計が高度を維持してくれるのだが・・・ マスタングは、電波反射式高度計は無い。 従来の気圧式である。 大まかな高度しか判別できないのだ。 100式はメートル単位なのである。 誤差は0,5メートル以下だそうだ。 もちろん、平均値を示してるのだが。 「くそっ、このままではラチがあかんぞ。」と、アームストロングが焦る。 「仕方がない。」と、アームストロングが無線で、「日本機へ、仕切りなおさないか。」と、告げる。 佐々少佐も同感である。 「では、いったん離れるぞ。」と、返答だ。 「周回飛行で仕切り直しだ。」と、両軍は互いに離れて、距離を取る。 「あっ、米軍と日本軍が離れます。」と、司会者が。 「これは、仕切り直しですな。」と、解説者だ。 そこは、軍事解説専門である、見ればわかるのだ。 互いに、互角だということが・・・・
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