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追いつけるか、エンジン。
喰らいついてやるぞ。
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「うむ、勝負する気だな。」と、佐々少佐は悟った。 追いつけないと、負けなのだ。 「しかし、この高度で最高速度の争いはヤバイくないか・・」とも思う少佐である。 なんせ、一瞬のミスが命取りどころか、多数の見物人を巻き込みかねないからである。 しかし、マスタングは速度を上げたのだ。 「さすが、王者ということか。」と、マスタングの性能に再度びっくりする佐々である。 「アダムス隊長、いいんですか?」と、部下が苦言だ。 「この高度で勝負をかけるのは、事故の・・」「サムソン軍曹、気持ちはわかるが、ヤツらも侮れんのだ。」と、アダムスだ。 「うむ、では高度を400へ上げるぞ。」と、アダムスだ。「おう。」と部下の無線が入る。 一斉にマスタングは高度を400へ上げた。 爆撃機と違って、戦闘機は機体が12メートルほどである。 それで、観衆に見えるように、高度を300で飛んでいたんだが・・・ 「事故の危険は回避せねばならん。」と、アダムスの判断である。 米軍も事故は避けたいのである。 (日本の機体と違って、高度を維持する電子機器は搭載してないのだ。) 「高度を400で、周回するぞ。」と、アダムスが指示を出す。 そこは、さすがマスタングだ、鮮やかな飛行である。 「やはり、高度を上げたな。」と、佐々少佐だ。 「この高度では、さすがのマスタングもヤバいと思ったのだな。」とも思う。 ヤツらも、オレ達とトントンの感触が伝わるのだ。 計器盤には、青いランプが・・ 「どうだ、いけそうか。」と、偵察員へ聞く、佐々少佐だ。 「相性はいいみたいです、行けますよ。」と、偵察員が告げる。 100式戦闘機は翼は層流翼だ。 そこは、マスタングと同じである。 パクリではない。 独自の空気層流理論から設計した翼型である。 マスタングもエンジンで飛ぶ戦闘機だ。 100式も同じである。 それで、翼型が似ているのだ。 偵察員は機内の電子機器の様子を把握できる計器盤を操作して、常に電子機器のバランスと状態を最高に保ってるのだ。 ようは、ご機嫌取りである。 あまりに複雑な豆粒真空管だ。 個性もハンパないのだ。 それを、おだてて状態を把握するのが偵察員の仕事であるのだ。 最初とは、ずいぶん役目が違うのである。 それで、偵察員ではなく、電子機器操作員と呼び名を変えようとの意見も少ないくないのだ。 電波探信儀を見れば、付近は把握できる、それで風防なぞイラネーとも言えるのである。 しかし、外部が見えないと不安心をアオルのだ。 風防はなくならない。 ちなみに、計器盤が巨大で、前席の操縦士は全く見えなくなっている。 通話は飛行帽の耳のイヤフォンと首のマイクだけである。 「高度維持の電子装置は。」と、佐々が聞いた。 「安定してます、センチ単位もOKですよ。」と、偵察員だ。 「よし、マスタングを追いっくぞ。」「フル・スロットルだ。」と、指示する佐々である。 一度、言ってみたかったのだ。 なかなか、フル・スロットルと指示する機会がなかったのである。 排気タービンの、「キーーーーン。」が、さらに高音へ・・・
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