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四発旅客機、海を渡る。
目標が・・・
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見渡す限り、海しかない。 「いま、高度は。」 「3000ですが。」 「高度3000から、見渡しても、なんも見えないな。」 ここは、太平洋の・・・ どこか著者には、わからない。 「フネの1艘も見えないとは・・」 「堕ちたら、助からないな。」 「救助のフネがこないからな。」 たぶん、見つかるまでに、干からびるだろう・・・ 「燃料タンクは、ほぼ翼の補助タンクがカラですから。」 「夜間の天測で方向修正だな。」 六分儀で緯度経度を計測できるのだ。 かなり、正確にである。 四発旅客機には天井が開くところがあり、そこから正確な天測ができるのだ。 まあ、単なるハッチだが・・ 「なんとかハワイ島には着けるだろう。」 「でないと、海に不時着だからな。」 「フカのエサにはなるたくないからな。」 大東亜戦争で、海に不時着して、フカのエサになった米軍や日本軍の兵は少なくない。 「ハワイからの電波は聞こえたか。」 「なんとか、方向は修正できるとは思うが・・」 「あと、燃料は・・」 「うむ、巡行速度で、6時間か・・」 「ギリかよ。」 「ギリだな。」 「カラの翼のヤツは落とすなよ。」 「わかってるよ。」 「落としたら、帰れないからな。」 つまり、帰りの燃料が不足するからだ。 「用心のため、レバーを縛って動かないようにしておこう。」 「おまえは、心配症だな。」 やがて、機内にハワイアンが流れる。 なかなか、異国的な音楽である。 「ほう、だいぶ近づいたな。」 「え、え、まあ、これで半分成功ですよ。」 つまり、無給油でハワイまで飛んだんだ。(単発の飛行機で太平洋横断は昭和6年に米国人が成功している。) ハワイで、腰みの美人にレイを首に掛けてもらい、ご機嫌な二人であった。 「燃料は米軍のハイオクタンかな。」 「えっ、そうなのか、なら飛べるな。」 馬力がハイオクタンは出るのだ。 つまり、日本製燃料より馬力がでるなら、速く飛べるのだ。 同じ量で速度が早ければ、もらったも同然なのである。 この当時は軍の飛行場しかなかったから、軍のハイオクタン燃料を日本製の四発旅客機に入れるのだ。 「おい、補助タンクも忘れるなよ。」と機長が注文だ。 車軸が、かなり沈んでいる。 まあ、ほとんどが燃料タンクだからだが・・・ ここまで、着いた段階で日本製の四発旅客機は乗員も慣れてきて、整備の手順も、なかなかの手際となっていた。 この経験は、日本軍が四発爆撃機を製造するカテとなったのである。 つまり、同乗している航海士がレポートを詳細につけていたのである。 経験をカテとするのは大切なことである。 フネの船長が航海日誌をつけるのと同じである。 これが、船長としてのカテになるのである。 民間機(本当は陸軍)が米国まで四発旅客機を飛ばしたことは、日本にとり、貴重な経験となったのだ。 いきなりの四発爆撃機は運用は無理だ、ということが、わかっただけでも成果である。
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