B29を撃墜する方法。

ゆみすけ

文字の大きさ
上 下
84 / 344
追撃ロケットの試射。

飛行軌道を変えるのか!

しおりを挟む
 「さて、今日が試射の日だ。」 「とう、とう、オレ達が陽(ひ)の目を見る日が来たんだ。」 「いままで、底辺で頑張ってきたんだ。」 そうなのだ、ロケットの研究は華々しくはなかった。 なぜなら、固形ロケット燃料の研究は土と火薬を混ぜる研究だ。 爆発しないで、徐々に燃えて、ガスを噴射する固形燃料の研究なぞ目立たないのだ。 追撃戦闘機や爆撃機、駆逐艦や空母などの研究が人々の関心を集めるし、尊敬も得てきたのである。 研究員も鼻高々なのだ。 まあ、学問に優劣はない、とは建前だ。 本音は金になる研究が、名誉も地位も得るのである。 まあ、理不尽な世の中なのは、建前では語れないのである。 それが、試射に成功すれば、ロケット研究も人々に理解が得られて、少しは、いい思いもできそうなのだ。 だから、自然と力が入るのだ。 「いいか、絶対に成功するぞ。」 「おう、絶対だ。」 気合十分だが・・・ うまく行くだろうか? 誘導装置が、うまく働けばいいのだが。 機械的に金属の小型真空管は信頼性が・・・ つまり、試験的に作った真空管だから、信頼性に欠けるのである。 一応、実験では、机の上では成功したのだが、空の上では試していないのだ。 「しかし、1発しかないし、標的の飛行機も1機しかないぞ。」 「まあ、1発勝負だ。」 「丁半バクチだな。」 「ここは、拝んでおくか。」 「どこに、お寺?」 「いや、神社しかないだろう。」 「試射の時間に間に合うか?」 「氏神様だから、遠くないから大丈夫だ。」 二人で、機械搬送用のトラックで・・・ 自家用車なんて無い。 予算の都合だ。 田んぼの中に森が見えてきた。 鎮守の森だ。 あぜ道にトラックを停める。 「ついたぞ。」 「あ、あ、ここか?」 「村祭り以来だな。」 「あ、あ、ガキの頃だな。」 なんと、彼らは村の同級生だったのか・・・ 神社の鳥居をくぐる。 桶で手を清める。 「しまった、お賽銭が。」 「しょうもないな。」 「オレが出そう。」 そして、10円が・・ 予算がないからチャリだ。 チャリでお願いをする方も、する方だが。 聞く、神様も堪らないだろう。 神社の参拝は二礼、パンパンと拍手、一礼だ。 パンパン、一礼のヒトも観るが。 「できることは、やった。」 「あとは、天祐あるのみだ。」 ・・・そして、試射の時間となった。 追撃戦闘機開発から技師や役員らが見学だ。 そして、政府の補佐官も数人いたのだ。 もちろん、一般人は居ない。 軍事機密だから、憲兵を置している。 場所は陸軍の飛行場だ。 どこに墜ちるか、わからない実験だからだ。 見学者は全員が兵隊の鉄ヘルである。 「あ~、あ~、聞こえますか。」 拡声器だ。 「合図で標的の飛行機を飛ばします。」 「その飛行機に向けて、ロケットを発射します。」 「爆発物はありませんが、墜落する危険もあります。」 「十分に注意してください。」 ありきたりの挨拶が終わる。 「では、15分後に飛行機が飛びます。」 15分、準備にかかるからだ。 2枚のペラを手で廻す。 「パラン、パララン、パラ、パラ、パラ。」 ペラが廻りだした。 「調整したら、離せよ。」 「えっ、聞こえんぞ。」 しょうがない、手信号である。 「わかった、わかった。」 の合図の手サインだ。 「今だ。」 の手サインだ。 「ブルルン、ブルルン。」 と標的の飛行機は滑走を始める。 技師は追いかけるが、すぐに離されて、息が切れた。 「いけーっ。」 と叫んだ。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大東亜戦争を回避する方法

ゆみすけ
歴史・時代
 大東亜戦争よ有利にの2期創作のつもりです。 時代は昭和20年ころです。 開戦を回避してからのラノベです。

満州国馬賊討伐飛行隊

ゆみすけ
歴史・時代
 満州国は、日本が作った対ソ連の干渉となる国であった。 未開の不毛の地であった。 無法の馬賊どもが闊歩する草原が広がる地だ。 そこに、農業開発開墾団が入植してくる。 とうぜん、馬賊と激しい勢力争いとなる。 馬賊は機動性を武器に、なかなか殲滅できなかった。 それで、入植者保護のため満州政府が宗主国である日本国へ馬賊討伐を要請したのである。 それに答えたのが馬賊専門の討伐飛行隊である。 

零式輸送機、満州の空を飛ぶ。

ゆみすけ
歴史・時代
 ダクラスDC-3輸送機を米国からライセンスを買って製造した大日本帝国。 ソ連の侵攻を防ぐ防壁として建国した満州国。 しかし、南はシナの軍閥が・・・ソ連の脅威は深まるばかりだ。 開拓村も馬賊に襲われて・・・東北出身の開拓団は風前の灯だった・・・

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

大東亜架空戦記

ソータ
歴史・時代
太平洋戦争中、日本に妻を残し、愛する人のために戦う1人の日本軍パイロットとその仲間たちの物語 ⚠️あくまで自己満です⚠️

永艦の戦い

みたろ
歴史・時代
時に1936年。日本はロンドン海軍軍縮条約の失効を2年後を控え、対英米海軍が建造するであろう新型戦艦に対抗するために50cm砲の戦艦と45cm砲のW超巨大戦艦を作ろうとした。その設計を担当した話である。 (フィクションです。)

よあけまえのキミへ

三咲ゆま
歴史・時代
時は幕末。二月前に父を亡くした少女、天野美湖(あまのみこ)は、ある日川辺で一枚の写真を拾った。 落とし主を探すべく奔走するうちに、拾い物が次々と縁をつなぎ、彼女の前にはやがて導かれるように六人の志士が集う。 広がる人脈に胸を弾ませていた美湖だったが、そんな日常は、やがてゆるやかに崩れ始めるのだった。 京の町を揺るがす不穏な連続放火事件を軸に、幕末に生きる人々の日常と非日常を描いた物語。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

処理中です...