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追撃ロケットの試射。
飛行軌道を変えるのか!
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「さて、今日が試射の日だ。」 「とう、とう、オレ達が陽(ひ)の目を見る日が来たんだ。」 「いままで、底辺で頑張ってきたんだ。」 そうなのだ、ロケットの研究は華々しくはなかった。 なぜなら、固形ロケット燃料の研究は土と火薬を混ぜる研究だ。 爆発しないで、徐々に燃えて、ガスを噴射する固形燃料の研究なぞ目立たないのだ。 追撃戦闘機や爆撃機、駆逐艦や空母などの研究が人々の関心を集めるし、尊敬も得てきたのである。 研究員も鼻高々なのだ。 まあ、学問に優劣はない、とは建前だ。 本音は金になる研究が、名誉も地位も得るのである。 まあ、理不尽な世の中なのは、建前では語れないのである。 それが、試射に成功すれば、ロケット研究も人々に理解が得られて、少しは、いい思いもできそうなのだ。 だから、自然と力が入るのだ。 「いいか、絶対に成功するぞ。」 「おう、絶対だ。」 気合十分だが・・・ うまく行くだろうか? 誘導装置が、うまく働けばいいのだが。 機械的に金属の小型真空管は信頼性が・・・ つまり、試験的に作った真空管だから、信頼性に欠けるのである。 一応、実験では、机の上では成功したのだが、空の上では試していないのだ。 「しかし、1発しかないし、標的の飛行機も1機しかないぞ。」 「まあ、1発勝負だ。」 「丁半バクチだな。」 「ここは、拝んでおくか。」 「どこに、お寺?」 「いや、神社しかないだろう。」 「試射の時間に間に合うか?」 「氏神様だから、遠くないから大丈夫だ。」 二人で、機械搬送用のトラックで・・・ 自家用車なんて無い。 予算の都合だ。 田んぼの中に森が見えてきた。 鎮守の森だ。 あぜ道にトラックを停める。 「ついたぞ。」 「あ、あ、ここか?」 「村祭り以来だな。」 「あ、あ、ガキの頃だな。」 なんと、彼らは村の同級生だったのか・・・ 神社の鳥居をくぐる。 桶で手を清める。 「しまった、お賽銭が。」 「しょうもないな。」 「オレが出そう。」 そして、10円が・・ 予算がないからチャリだ。 チャリでお願いをする方も、する方だが。 聞く、神様も堪らないだろう。 神社の参拝は二礼、パンパンと拍手、一礼だ。 パンパン、一礼のヒトも観るが。 「できることは、やった。」 「あとは、天祐あるのみだ。」 ・・・そして、試射の時間となった。 追撃戦闘機開発から技師や役員らが見学だ。 そして、政府の補佐官も数人いたのだ。 もちろん、一般人は居ない。 軍事機密だから、憲兵を置している。 場所は陸軍の飛行場だ。 どこに墜ちるか、わからない実験だからだ。 見学者は全員が兵隊の鉄ヘルである。 「あ~、あ~、聞こえますか。」 拡声器だ。 「合図で標的の飛行機を飛ばします。」 「その飛行機に向けて、ロケットを発射します。」 「爆発物はありませんが、墜落する危険もあります。」 「十分に注意してください。」 ありきたりの挨拶が終わる。 「では、15分後に飛行機が飛びます。」 15分、準備にかかるからだ。 2枚のペラを手で廻す。 「パラン、パララン、パラ、パラ、パラ。」 ペラが廻りだした。 「調整したら、離せよ。」 「えっ、聞こえんぞ。」 しょうがない、手信号である。 「わかった、わかった。」 の合図の手サインだ。 「今だ。」 の手サインだ。 「ブルルン、ブルルン。」 と標的の飛行機は滑走を始める。 技師は追いかけるが、すぐに離されて、息が切れた。 「いけーっ。」 と叫んだ。
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