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切り札に使えるか?
1機しか無いが・・・
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「それは、本当ですか。」 プロペラを試作した新米技師の斎藤君は驚く。 そうなのだ、まだ考えただけで実際の機体で試してはいないのだ。 ヒョウタンから駒だ。 他の技師らは、「本当かよ?」と疑問が満々だが。 「では、いま試してますから、見に来てくださいよ。」 の職工の声に、技師らは続々と(15人しかいないが)格納庫へ見学だ。 そこには、「キーーーーーーン。」 と甲高い音で吠えるエンジンとペラが廻っていた。 回転数は技師らには見れば大体わかるのだ。 「確かに、すごい、いや、まさかだよ。」 「これは、勝てそうだ。」 「そうだな、これを使えば、あるいは・・・」 皆、内心は米軍の爆撃機には勝てないと思っていた。 そんなこと言えないが・・・ 米国で米国の工業力の実力を観てしまったのだ。 内心、勝てないかもと思うのは当然なのだ。 「問題は、このペラが1機分しかないことだ。」 そうなのだ、今から音速を超えるペラを造る時間は無い。 「つまり、切り札の機体は1機か・・・」 普通、切り札とは1枚だ。 「1機では、なんともならんじゃないか!」 「イヤ、そんなことはない。」 「どうすれば?」 「米国の爆撃機は、おそらく日本の技術を油断してるだろう。」 「なぜなら、昨年は油断からドローになってと思っているからだ。」 「米国がか?」 「そうだ、空母から運ぶ際も、ここで組み立てるときも米国側はお祭り気分だ。」 「所詮、黄色い猿のヤルことだと思ってるんだ。」 それは、皆が感じていたことだ。 (米国在住の日本人は、現在でも人種差別をヒシヒシと感じるそうだ。) 「そこに、ヤツらの油断がある。」 「そこに、付け込むのさ。」 「ううむ・・・」 「まあ、ともかく飛行してみれば、わかるだろう。」 「さっそく、翼を組み込むぞ。」 「テスト飛行は明日だ。」 いま、午後九時だ。 「4時間休憩で、完成できるだろう。」 職工たちは、機体と翼を組み立て始めた。 はやく、音速ペラの効果を観たいのだ。 いつのまにか、斎藤君が考案したペラは・音速ペラ・とあだ名がついていた。 音速を超えるときの衝撃波を散らす工夫のペラだ。 日本へ帰還したら、試作段階から、実用まで試験を繰り返さなければならない。 米国の工業力のすごさを実感して、気分が落ち込んでいた職工らが、そして技師らが、すこし見えた希望の光を逃すまじと奮闘努力である。 「試作双発エンジンが完成したら、この音速ペラを2重反転で廻すぞ。」 「速度700キロも目じゃないぞ。」 音速は870キロくらいからだ。 つまり、亜音速である。 音の速度は温度で変化するのだ。 気温15度で、気圧が1気圧なら、だいたい340メートルを1秒だ。 時速1200キロなら音速越だ。 「排気タービンと音速ペラで、無双も夢ではないぞ。」 日本軍、追撃戦闘機の無敗伝説が誕生しつつあった・・・・・
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