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それを、持ってきたのか。
まだ、試験もしてないよな?
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「ところで、オレに提案があるんだが。」 と技師のひとりがチャチャを入れた。 「ん、なんだよ。」 「オレの試作プロペラを・・・」 「あ、あ、あれか、あれはダメだ。」 「なんで?」 「あれは、いままで聞いたことない空力理論で、おまえが造ったヤウだろ。」 「しかし、あの理論は・・」 三流大学を出て、やっと入った新参者の斎藤君がいう。 「確かに、論文は認めてもらえなかったが、あれは空力理論の・・」 「ああ、おまえのウンチクは聞き飽きたよ。」 斎藤君は、音速の衝撃波の発生が温度に違いがあるとの理論だ。 つまり、高温なら衝撃波が発生しない、というプロベラ飛行機で、音速を超える理論だった。 まあ、妄想だな。 現在では、それが、ジェットエンジンに使われているのだが・・・ 「それで、プロペラを造ってみたんだ。」 「どんな?」 「見せようか。」 「うむ。」 そのペラは6枚で、先が変に曲がっていて、カッコ悪いのだ。 「なんで、ペラのさきが微妙なカーブなんだ。」 「それが、空力的にいいんだよ。」 「このペラなら回転数が4000までいけるぞ。」 「それは、盛りすぎだ。」 「試したのか。」 「まだに、決まっている。」 「そうだ、いくつあるんだ。」 「エンジン1基分だ。」 「なら、操縦士に聞いてみるよ。」・・ 「この斎藤君が造ったペラがあるが、斎藤君いわく、回転制限なしで、いいそうだ。」 「だれか、使ったもイイ者はいるか?」 まあ、誰もいない。 まあ、海のモノとも山のモノともわからんからな。 「まあ、おらんわな。」 しかし、助ける神は居たのだ。 「制限がないんですか。」 「4000回転まで、いいらしい。」 「4000もエンジンが廻らないから、事実上は制限ないと同じだよ。」 「なら、オレが試します。」 「では、整備に廻しておくよ。」 その志願者は、テスト操縦士のひとりで、鈴木という名前だった。 あだ名が、墜ちない君という。 つまり、事故で墜ちたことが1回もないのだ。 降りてから、整備して故障がわかるとか、運がいいのか? それとも、悪運が強いのか。 追撃戦闘機のペラは4枚だが、回転数に応じて、ペラの角度が変化する可変ピッチペラだ。 ところが、試作ペラは違うのだ。 2枚のペラを削りだして、2枚を合わせて6枚ペラにしたのである。 つまり、固定ピッチだ。 ピッチを可変させる仕組みが6枚ペラでは、先のスピナーにはいらなかったのだ。 まあ、手造りでは、無理である。 つまり、でかいペラなら6枚でも可変ピッチが造れるが、戦闘機の直径2メートルでは、所詮無理な相談なのだ。 まあ、2重反転ならできないことはないが・・・ 試作追撃戦闘機は2重反転ではない。 そのエンジンはまだ、試作中だ。 その2重反転なら4枚が2連だから、8枚ペラとなるんだが。 「しかし、斎藤君のペラの先は、潜水艦のスクリューの先と似てるね。」 気が付いたヤツが居た。 つまり、水流音が小さいスクリューと斎藤君の空力理論のペラと似てるのだ。 「パクリかよ。」 「いいや、海中と空中は違うからね。」 まあ、その無音スクリューを観て考えたことは内緒の斎藤君である・・・・・
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