日本戦車を改造する。

ゆみすけ

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いざ、1本松へ。

我が国の興廃、この1戦にあり。 Z旗、あげろ。

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 日露戦争で東郷元帥が旗艦、三笠に掲げたZ旗。
Zは、ABCの最期だ。 つまり、もう後がないということだ。
 日本海海戦で、破れれば日本の未来は無い。
日露戦争の敗戦は確実だ。
 絶対に負けるわけにはいかない・・・と、東郷元帥は信号旗の最期の文字であるZ旗を掲げたのだ。
「皇国の興廃この一戦に在り、各員一層奮励努力せよ。」と、激をℤ旗で飛ばしたのだ。
 この戦いに負ければ、帰る家が無くなるのだ・・・その気概で日本軍人は戦ったのだ。
タイマン勝負だが・・・この1戦に負ければ、満州国は侵攻を・・・ひいては日本本土へ事は及ぶのだ。
 「よしっ。」と、顔をパチンと叩いて・・・飯田伍長が気合を入れる。
7号車と隊長車が勝負へ出撃だ。
 そして、すこし置いて、残りの車両が待機するために、出撃である。
なんせ、熊公のソ連軍相手だ。
 信用なんて、鮮人、シナ人の次に信用できないのだ。
まあ、現場に立ち会いの2両だけなら・・・そこは、信用するしかないのである。

 「よし、そろそろ行くか。」と、イワン隊長が腰を上げる。
「1号車は、用意できてるか。」と、マキシム軍曹を・・・
 呼んでも、声がしない。
「何処へ、あいつは・・・」「まさか、トンズラじゃないだろうな。」
 「隊長。」と、キリル伍長が・・・
「マキシム軍曹がいません。」「なんだと、まさかっにげやがったんじゃあ。」
 「時間が無い。」「おい、おまえでいいから、出るんだ。」「ハァ。」
「キリル伍長、タイマン勝負を命ずる。」「・・・・・」
 「わかったか。」「ハァ、わかりました・・・」顔が真っ青だ。
「負けなければいいんだ。」「わかったな。」
 仕方なく、戦車の準備を・・・
「早くしろ、エテ公より遅れるわけには、いかんからな。」と、自分のT34に乗り込むイワン隊長だ。
 「仕方がない、まさか戦死はないだろう。」と、仕方が無くタイマン勝負へ・・・

 そして、ハルピンから1本松を目指す、ソ連軍戦車だ。
1本松はハルピンが吉林より近いのだ。
 1時間くらいで到着するのだ。(T34の巡行速度で、1時間くらいだ。)
さすがに、ソ連軍も自分から言い出した勝負だ。
 卑怯な手は使わないようである。
それに、欧州での対ドイツ戦では、無双のT34なのだ。
 まともに、ぶつかればT34が勝つとイワン隊長は信じてるのである。
タイマン勝負に勝てば・・・日本軍へ条件を提示できるのだ。
 そう、紛争を終わらせるための条件だ。
もちろん、満州の土地をソ連側へ割譲する条件だ。
 広さは重要ではない。 すこしでも、ソ連軍へ有利ならモスクワへ成果として報告できるのだ。
そうなれば、イワン隊長はモスクワへ戻れる話も湧いて出るのだ。
 あこがれの、モスクワだ。
いつかは、また・・・モスクワ勤務へ・・・の、夢があるイワン君である。

 1本松へは、日本軍の戦車が・・・すでに、待っていた・・・
ソ連側から旗が振られる。(話し合いの合図だ。)
 「おや、はじめにルールの話かな。」と、今野少尉が通訳を連れて1本松へ・・・
すると、イワン隊長も・・・片言が話せる日本語の通詞を連れて・・・1本松へ歩いてくる。
 戦車隊長同士の会見である。
「こちらが、日本側立会の今野隊長です。」と、通訳がロシア語で解説だ。
 「こちらが、ソ連軍の立会のイワン隊長です。」と、通詞が紹介する。
そして、ルールの話である。
 タイマン勝負だ、ルールがないと始められないからだ。
それで双方の通訳が、互いの距離や砲撃の弾数や勝負判定のルールをカンタンに決めたのである。
 それによると・・・双方の距離は500から始める。
砲弾は10発まで、そして自身の戦車が動けなくなったり、または白旗で降伏したら負けと決定すること。
 時間は30分制限とすることなどを決定したのだ。
そして、立会者は絶対に手をださないこと、これは鉄板だ。

 立会者のイワンや今野が相手の戦車の砲弾の数などを確認する。
そこは、厳格にやらないと不利だから・・・である。
 イワン隊長は日本陸軍の魔改造戦車が元はT25B型とは・・・全く気が付かないようだ。
まあ、それほど別物ということか。
 しかし、ソ連側の戦車隊員らが・・・かなり悲壮な顔なんだが・・・どうしてだ?
まさか、強制的な任命じゃないだろうか・・・
 互いに4名の戦車隊員らは、勝負の前の顔見せである。
互いに、握手だ。 そこは、戦う前のルールに則っとった勝負でということなのである。
 「オレが合図の旗を振ろう。」と、イワン隊長が・・・階級が一番上だからだが・・・
そこは、文句を言わない、今野少尉だ。
 1本松を真ん中にして、互いの距離を500メートルほど離す。
ギリ視認できる距離だ。
 「どうだ、ヤレそうか。」と、7号車の砲手へ聞く、少尉だ。
「え、え、照準器が新品なので、綺麗に見えますよ。」と、砲手が自信を見せる。
 プリズムが新しいと画面がクリアで精密な射撃ができるからだ。
鹵獲したソ連軍の戦車の照準器は、空気の泡が混入したり、曇りがあったりと・・・使えないことはないが・・・の、程度だった。
 つまり、日本の光学技術の差が顕著なのだ。
ドイツが光学技術は、すぐれているのだが・・・日本も捨てたモノではないのだ。
 現在、世界を席巻している日本製カメラを見ればわかるだろう・・・
ドイツのライカのレンズも・・・部品は日本で造ってるらしい。
 OEMというヤツである。

 ソ連軍のイワン隊長が、トコトコと旗振りおじさん役に出てきたようだ。
双方の隊員は戦車へ乗り込んで、準備ができたようだ。
 それを確認して、旗を大きく上げるイワン中尉だ。
そして、大きく振って、あわてて射撃線上から離れる・・・
 まだ、死にたくはないのである。
さあ、タイマン勝負のはじまりだ。
 双方の戦車の主砲が動き出した・・・
 

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