日本戦車を改造する。

ゆみすけ

文字の大きさ
上 下
329 / 393
対戦車の魔改造なのだ。

T26型の魔改造は、使える魔改造だ。

しおりを挟む
 我が国の戦車は車台を前後に傾けることができる。
それは、油圧で車台を傾けるのだが・・・どうしてなのか?
 それは、砲身の下げ角を稼ぐためなのだ。
日本は地形が山野である。 当然、待ち伏せ攻撃が得意な自衛隊だ。
 そして、敵が来るのが下り坂だったら・・・砲身が下へ・・・下がらない。
なら、車輪のサスを油圧で傾ければ・・・丘の上から砲撃ができるのだ。
 それが、61式の後継戦車の70式だ。
その伝統は現在の新型ヒトマル式にも受け継がれている。
 70式のころは、油圧装置からオイルが漏れて・・・悲惨なことに・・・
最近のヒトマルはさすがに無いそうだが・・・
 
 そして、鹵獲戦車にも・・・その万が一の改造が・・・してあるのである。
もちろん、車台を油圧で傾斜させることではない。
 まして、当時は油圧サスなぞ空想の世界だ。
砲塔内の砲弾を込める部分や、遊底といって砲撃の衝撃緩和する部分もある。
 それで、砲塔内部の一番広い空間を占領しているのだ。
それで、戦車の砲身は上下が30度もないのだ。
 戦車砲で上空の爆撃機を狙うなんて無理なのである。
ところで、戦車砲を安定して砲撃するには・・・戦車の車台に転輪のサスを固定すればいいんだが・・・
 それでは、悪路走行に無理がある。
転輪(戦車の車輪のことだ。)にサスペンションは必ずあるのだ。
 では、どうすれば・・・
そう、砲撃の衝撃を支える足を後部へ付ければいいのである。
 そして、それを長くすると、足を後部から地面へ倒せば車台が砲撃でブレるのを防げる。
そして、その足が長いと・・・後部が上がり、地面に対して斜め前へ車台を傾けることができるのだ。
 すると、砲塔の下げ角が下がったと同様になるのである。
砲身を下げても、水平より1度くらいだったのが・・・20度近く傾斜砲撃ができるようになった。
 これは、待ち伏せ作戦に最高のメリットが生まれたのである。
ちなみに、後部の足は2本ある。
 1本だと、ふらつくからだ。

 「魔改造戦車の後ろ脚を使おうと思うんだ。」と、今野少尉が案をだした。
「あの、袋小路の丘から下を普通は狙えないだろう。」
 「だが、我が改造戦車は後ろ足で、下げ角が取れるから・・・」
「なるほど。」と、納得の隊員らである。
 なんせ、後ろ足を使うのは行軍して、初めてなのだ。
「操縦手は後ろ足に慣れておくことだ。」
 「コツをつかむまで、何度も練習しておいてくれ。」
 後ろ足は、戦車の後部に軸を通してついてる凹型の後ろ足である。
精密遠距離射撃のときの車台を支える脚にもできる。
 そして、車台を前へ傾ける足にも使える。
鋼鉄のH型の角材で、廻すのはヒトでは無理でクラッチが別にあって、そこから変速歯車で減速して廻すことになる。
 もとより、トルクがあるジーゼルエンジンだ。
魔改造して重くなった戦車でも、カンタンに持ち上がるのである。
 また、この後ろ足の回転軸だけの動作まで可能なのだ。
つまり、ウインチとしても使えないこともないのだ。
 そう、故障した仲間をワイヤーで、牽引することも可能なのだ。
使い方はゴマンとある、後ろ足なのである。
 この、後ろ足という呼び名は戦車隊員らが言い出したあだ名だ。
正式には、外部動力緩衝転輪装置なる、何だソレというセンス無い名前である。
 それで、後ろ足と呼ばれるのだ。
現在の四駆のオフロード車に付いてるワイヤー巻き取り装置と同じと・・・なのだ。
 付いてるところが後ろか前のバンパーの違いである。
ある意味、戦車は工事のブルドーザーであり、外部動力取り出し装置で、無限の可能性が生まれるのだ。

 元馬賊の斥候が1騎・・・駆けてきた。
「隊長サン敵ハ、動イタアルヨ。」と、伝達だ。
 ハルピンから馬で駆けて200キロあまり・・・当然、馬は乗り継いでいる・・・
時間は馬賊なら4時間程度で走破できる。
 これで、砂金粒1個は安いくらいだ。
「よし、時間だ。」「ハルピン方面へ進軍する。」と、号令がかかる。
 砲塔から身を乗り出した隊長が指揮棒を前へ倒す。
「戦車隊、前進!」 
 すでに、アイドル運転で準備万端のジーゼルエンジンが吠える。
「ガラ、ガラ、ガラ、ゴーーーーーッ。」
 巡行速度40キロ毎時で袋小路の丘を目指す、今野戦車隊である。
馬賊の偵察のおかげで、無駄な動きの必要が無い今野隊だ。
 彼ら馬賊もソ連軍の侵攻は部族の存亡を賭けた戦いなのだ。
それで、日本陸軍の戦車隊へ協力を惜しまないのである。
 なにも、満州政府への忠誠なぞ、皆無の馬賊だ。
満州政府は元馬賊にとり、脅威でも何でもない・・・数にも入らないのだ。
 ところが、ソ連軍は別だ。
皆殺しになった満州国軍は馬賊部隊である。(日本軍が派遣される前の話だ。)
 ソ連軍相手に、話し合いは通用しないのだ。
それが、わかっているから日本陸軍の戦車隊への協力なのだ。 
 砂金粒1個で、200キロを騎馬で走破するものかっ!
現在のトラック輸送ではないのだ。
 荒野を騎馬の1騎で、吉林目指して休憩なしで(馬は1時間で替える。)駆け抜けるのだ。
半分、命がけなのである。
 もちろん、満州国民が国を守りたいとの気概が無いと、日本陸軍は協力なんかしないのだ。 
日本に居る米軍も、同じだ。
 日本人が命がけで国を守らないと、米軍も助けてはくれない・・・
すくなくとも、山へ逃げるなんてヤツが居れば、助けない。
 なぜなら、著者もそう思うからだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ねえ、センセ。―粘着系年下男子の憂鬱

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:25

糸目令嬢はなんにも見たくない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:88

婚約破棄されたのでボクシング習ってボコボコにすることにした

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:15

処理中です...