日本戦車を改造する。

ゆみすけ

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面で守備するソ連軍。

点で進撃する、日本軍。

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 20分なんて、あっと言う間だ。
白んできた夜空を背に・・・それは、やってきた・・・
 欧州の紛争でソ連軍の戦車部隊が・・・全滅した・・・
かろうじて・・・生き残ったソ連軍の戦車隊員が・・・
 その隊員から・・・パンツァーカイルをドイツ軍が、かましたことが判明したのだ。
同じ、陸軍国家のソ連とドイツの戦いは戦車戦ではドイツの軍配があがったのだ。
 戦車の数はソ連軍が勝っていたはずだ。
セオリー道理なら・・・ソ連軍の勝利だった。
 ハルピン郊外で日本軍を待ち構えるソ連軍は帯状に陣をかまえる。
敵の侵攻で帯を変化させるのである。
 ところが、日本軍が戦車部隊をヤリの穂先のような鋭角で、突撃してくるパンツァーカイルへ対処するために・・・
 あわてて、中央を敵に対して後退させて・・・日本軍を袋のネズミへ・・・
しかし、ソ連軍は無線機の連携が満足ではない。
 戦車の速度も・・・数キロ劣っていた。(八九式改は40キロ・T26Bは35キロ毎時だ。)
それに、暖気運転も・・・不運が重なったソ連軍戦車隊だ。
 そういえば、ドイツ軍は戦車すべてに無線電話が・・・
イワン司令は旗を振り・・・中央を後退させるべく・・・必死に下がれと・・・
 
 そこへ、「中央突破、最高速度、撃ち漏らしは後続が仕留めろ!」と、無線機で叫んだ。
音声通話に特化したカーボンマイクの指示は確実に無線電話機で各車へ・・・それも、戦車隊員全員へ伝わる。
 「正面の敵、徹甲弾テーーーッ。」
かねて狙いを定めていた砲手が引き金を引く。
 もちろん、戦車は最高速度で走ってるのだ。
普通なら、砲撃しても・・・当たらないのだ。
 しかし、しかしだ。
敵戦車までの距離、最高速の戦車だ。 距離は変化しているのだが弾道を予測した砲手だ。
 そこは、職人技なのだ。
砲手は・・・砲弾が砲身から出る時間を予測して、敵戦車の手前を狙った。
 「テーーーッ。」との掛け声だ。
砲手には、照準器に写る敵戦車と隊長の撃ての合図しか・・・見えないし聞こえないのだ。
 戦場で死ぬかも・・・なんて、微塵も考えて無いのだ。
「ドウ、ウ、ウ、ウ、ン。」と、徹甲弾が・・・高速回転しながら砲身から・・・敵戦車の正面へ・・・
 手ごたえが・・・あった。
そう、確信した砲手だ。
 そして、数秒後に装填手が肩をポンと・・・
次の砲弾が装填された合図だ。
 砲手は、無線機から送られてくる狙うべき戦車へ照準を・・・
耳にはエンジン音も砲撃の音も聞こえない・・・狙うべき戦車を探して・・・その距離と・・・
  
 パンツァーカイルはソ連軍の中央を突破することに成功した。
先頭の隊長戦車の初弾は敵中央の戦車の右側の履帯へ命中したのだ。
 そのため、中央の戦車は動ごけなくなった・・・当時のソ連軍の戦車は変速機の関係から左右の履帯が独立して動くことができなかったのだ。
 それで、片方が破壊されれば、もう片方も動かなくなる。
そして、我が軍の2号車は動かなくなった隣の戦車へ・・・徹甲弾をかました。
 後部のラジエターを破壊して・・・敵の戦車はエンコしてしまった。
これで、2両が減ったソ連軍だ。
 3号車の砲弾は・・・惜しいところで、地面で爆発した。
その爆発で、驚いた敵の戦車を4号車が狙う。
 ソ連軍も対抗して砲撃を・・・しかし、最高速度で移動しているモノに当たる訳が無いのだ。
敵戦車が停止している段階から狙いを定めていたのだ。
 動体視力も訓練された、我が戦車兵なのである。
伊達に訓練で泣いてないのだ。
 「こちら、5号、7両目をヤル。」「6号は隣をかますぞ。」
無線機のイヤフォンから隊員らの連携の声が続く。
 そろそろ、最後尾が敵陣から出るころあいだ。
「今野だっ。」
 「よしっ、左へ廻りこむぞ。」と、指示をだす。
パンツイァーカイルの突撃は左へ大きく敵陣の背後から廻り込んだ。
 そのころになって、やっとソ連軍は陣を立て直すことに成功したのだ。
「いまさら、遅いぞ。」と、今野少尉は・・・
 「再度かますぞ。」「了解です。」
「オレに続け!」と、カーボンマイクへ叫んだ。
 なお、マイクはヘッドセットといって・・・戦車帽にハーネスで留めているから、話すのにマイクは持たなくてもいいのだ。
 「15号から、隊長っ。」
「今野だ、どうした。」
 「砲身に弾が・・・」 どうやら、ソ連製の砲身に日本製の砲弾が詰まったようらしい。
ソ連軍の砲身の工作精度が劣るからだが・・・いかんとも、しがたいのだ。
 「15号は離脱しろっ。」「了解です。」
砲身内で砲弾が破裂しなくてよかった・・・破裂したら、砲身がバナナのカワをむくような・・・とてもカッコ悪いのだ。
 しかし、これで14両になってしまった・・・
「敵の数は。」と、砲塔から頭を出して、数秒で確認する今野だ。
 そのための訓練を欠かさなかったのだ。
「敵は12両だっ。」「この勝負、勝った。」と、確信する少尉だ。
 まだ、勝敗は決していないが・・・「勝てる、勝てるぞ。」と、実感するのだ。
戦ってみると、勝てるか・・・負けるかは・・・最初の一撃で判明するのだ。
 もちろん、助っ人が割り込んできたら・・・わからないが。
ここは、モスクワの遠方の満州の果てだ・・・
 ソ連軍の助っ人はやってこないのだ。
無線からは、砲弾を喰らった味方戦車は無いと踏んだ少尉だ。
 40キロあまりで走り回る戦車へ砲弾を当てるのは・・・不可能に近いのだ。
現在の高速計算機で弾道計算して照準する訳ではないのである。
 レーザー光線で敵戦車を狙うわけではない。
ヒトの眼で照準して、手動で砲身を操作して・・・これでは、命中なぞ無理なのだ。
 


 
 
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