日本戦車を改造する。

ゆみすけ

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加藤中尉の生の経験談・・・

兵器は使ってみて、ナンボだ。

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 「まずは、八九式戦車の満州国での実績ですが。」と、加藤中尉が具体的な話を始めた。
「あれは、大連港からの行軍ですが・・・」
 「満州国は鉄道の線路が無かったのです。」 なんせ、建国して数年だ・・・
「それで、戦車で行軍となったのです。」と、当時の事を駄弁りはじめたのだった・・・
 八九式は陸軍の大阪工廠が英国のビッカース戦車を参考に(パクリだ。)試作した戦車の量産版である。
昭和初年から試作を始めて、わずか1年と4ヶ月で完成した試作戦車である。
 皇紀2589年(昭和4年)のことだ。(皇紀とは、神武建国からの世紀だ。)
それで、末尾2ケタの89から八九式と命名されたのだ。
 「ジーゼルエンジンは耐久性もハンパ無くて、十分行軍に耐えました。」
「それに、満タンで200キロは走れましたので、給油は日に1回でよかったんです。」
 「ジーゼルは燃料がなくなると再始動が困難ですから、燃費がイイのは助かりました。」
「頑丈なエンジンで助かりましたよ。」と、感想を述べる中尉だ。
 これには、訳があるのだ。
ジーゼルエンジン開発中に陸軍工廠は、エンジンブロックにヒビが入ってダメになった廃棄エンジンが山積みだったのだ。
 それに懲りた結果なのである。
エンジンオイルさえ入れれば、燃料を入れれば動くエンジンが完成したのである。

 「はじめは満州軍の騎馬隊がハルピン近郊で全滅したと聞いたので、ハルビンを目指したんですが・・・」
「満州平原は悪路もあり、戦車といえども走破は苦労が絶えなかったです。」
 「・・・・」実感のこもった中尉の言に、なんも言えない・・・工廠の係官だ。
「それでも、案内人の騎馬には遅れることもなかったので、日本軍戦車の面目は大きいモノがありました。」
 「そのころには、隊員たちもエンジンの扱いに慣れてきました。」
「内地で訓練していましたが、現地の気候でエンジンも左右されますから。」「ふむ。」
 「一番、苦労したのは砂塵が舞い散る平原ですよ。」「なんと・・・」
「エンジンの空気取り入れ口の紙フィルターは定期的に埃を落とさねばならなかったのです。」
 「そして、燃料を給油するときに砂が・・・」
「それで、燃料パイプが詰まって・・・」「それほど、なんですか。」と、係官だ。
 「満州は内地とは、雲泥の差ですよ。」と、実感のこもった中尉の言葉だ。
「燃料パイプのゴミよけの金網が詰まるんですよ。」と、中尉が加える。
 「それほど、ですか・・・想像以上ですな。」と、係官だ。
「満州での燃料輸送は、それなりの対策が必要です。」と、言い切る中尉だ。
 「なぜなら、ジーゼルエンジンの燃料噴射ポンプが詰まったら。」と、中尉だ。
「わかります、噴射ポンプの圧力漏れにつながりますからね。」と、係官だ。
 「ジーゼルは空気を圧縮して、そこへ燃料を噴射するんですからね。」と、中尉だ。
係官は中尉が・・・もう、エンジンの技師としても通用するほどかと・・・
 
 中尉の前に鎮座する九七式中戦車の試作1号は・・・
とうぜん、そんな対策なぞ・・・やってない・・・
 なぜなら、内地は気候も温暖で砂埃なぞ・・・舞わないからだ。
エンジンがエンコして動かなければ・・・戦車は単なる砲台にしかならない・・・
 そして、九七式の砲身は57ミリの八九式と同じヤツなのだ。
「この57ミリ短砲身を長砲身にしなければ・・・」
 問題や改造点は山積なのだ。
「そうだ、1丁の45ミリ長砲身を持参してますから、参考にしてください。」と、中尉が・・・
 「そうですか、対戦車砲は欧州に学ぶところが多いですから助かります。」と、係官だ。
実際、欧州でドイツ帝国と争っていたソ連軍の戦車は学ぶべきところが多いのだ。
 なんせ、T26B型の後に・・・あの、ドイツ軍にトラウマを植え付けたT34型へと・・・
侮るべからず、ソ連軍の戦車なのである。
 戦場で使ってみて、初めて兵器の欠点や使い勝手が判明するのだ。
我が、自衛隊の兵器は演習でしか・・・これでは、抑止力にはなっても・・・
 いざ、鎌倉のときに米軍のお荷物にしか・・・ならない予感が・・・するのだ。
米軍は、常に新兵器を戦場で使って試しているのだ・・・
 核兵器も2発都市へ投下して・・・何十万人殺せるか試してるのだから・・・

 
 
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