日本戦車を改造する。

ゆみすけ

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長春へ・・・

吉林へ近づいた。

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 「隊長さん、長春あるよ。」と、馬賊の案内人が指さした。(数キロ先に・・・村が・・・)
「うむ、まずは斥候だ。」と、目前の村を指示する加藤中尉だ。
 数人の隊員が戦車から降りて・・・徒歩で村を目指す。
陸軍の戦車隊員の戦闘服は黄土色だ。
 つまり、大地の色である。
満州平原に緑は無い・・・いや、少ない。
 一面の黄土色の大地が、あるのみなのである。
三八式歩兵銃は、戦車兵には配備は無い。 
 車内で取り回しができないからだ。
それで、拳銃である。
 南部十八年式拳銃である。
本来は将校用なのだが・・・
 加藤中尉はレンコン式(レボルバー)拳銃が好みだったが・・・装備品で好きかっては言えないからだ。

 しばらくして、斥候が下見をして帰隊報告だ。
「ソ連軍の戦車は、見当たりません。」「ソ連兵と思われる兵もです。」「戦車の通過した跡はありませんでした。」
 「村人は?」と、加藤中尉だ。
「テントや小屋にはヒトが住んでる雰囲気はありませんでした。」
 「うむ、誰もいないということか。」
「隊長さん、オラが見てくるアルヨ。」と、馬賊の案内人だ。
 騎馬で・・・速攻である。
数分で帰ってきた。
 「誰も、居ないアルヨ。」
「たぶん、ロシア兵のウワサを聞いて、逃げたアルヨ。」
 なんとも、判断に迷う加藤中尉だ。
「食料の略奪を恐れたんでしょう。」と、軍曹がいう。
 「ウワサでは、シナの軍閥と同じらしいですからな。」
古代ローマの時代から、軍隊は略奪するものだからである。

 基本、満州の街は河沿いだ。 
もしくは、オアシス(池や井戸)があるところにできるものである。
 「よし、水を補給して休憩だ。」と、指示を出す加藤隊長である。
井戸の水といっても、煮出してから飲まないと・・・下痢で・・・
 それで、食事を兼ねて、飲料水を煮出す隊員らである。
煮出す燃料は軽油を使ったコンロである。
 なぜなら、燃やす材木が手に入らないからだ。
森や林が無いから、芝刈りもできない。(燃やす材木が無い。)
 枯草では・・・お湯は沸かせないからだ。
この、コンロは冬季に戦車のエンジンオイルを温めることにも使えるのである。
 氷点下30度近い満州平原の冬である。
不凍剤をエンジンオイルへ添加していても、さすがにマイナス30度は・・・キツイのだ。

 「隊長さん。」と、馬賊の案内人が進言する・・・
「なんだ?」と、問う加藤中尉だ。
 「ひょっとして吉林に、すでにソ連軍がきてるかもアルヨ。」と、言い出した。
どうやら、この長春の村がカラなのが気になるらしいのだ。
 「うむ、それは可能性が無いでもないな・・・」と、思案する加藤中尉である。
遊牧民は牧草を求めて移動する。
 それで、遊牧民同士の情報(牧草の生育などの)は生死に関わることも・・・あるのだ。
牧草が枯れれば・・・家畜のヤギや羊は餓死してしまうからである。
 季節や自然に左右される生活なのである。
移動方向を間違えれば・・・部族が全滅も・・・ありうるのだ。
 そして、吉林にソ連軍が・・・との、情報が長春へ・・・
「よし、この長春で網を張るぞ。」と、加藤隊長は決断したのである。

 「工兵隊とトラック部隊は退避してくれ。」「了解です。」
3台のトラックと整備工兵は村の外へ退避する。
 そうして、小屋の中に戦車を隠して・・・ソ連軍を待ち伏せすることとなったのだ。
オアシスの井戸は村の真ん中に大抵ある。
 この、長春の街もそうだ。
それで、街の中ほどが広場(水飲み場)となっている。
 アルプスの少女ハイジのアニメの噴水(水飲み場)の雰囲気である。
「さて、どう網を張るかだ。」と、思案する加藤中尉である。
 
 地面に図を描く、中尉である。
「うむ、おそらく敵は街へ進軍したら広場へ進むだろう。」「そうですね。」と、賛同する軍曹だ。
 敵が居ないとなれば、兵たちを休ませるだろうからだ。
「では、広場を囲んで小屋に戦車を隠しますか。」「うむ。」
 「小屋は広場を囲んで40戸ほどありますが。」と、軍曹だ。
「では、ここと、ここと、ここと。」と、隠れる場所を選定する中尉である。
 そこへ、街の入り口で見張りをしていた兵卒から・・・急報である。
「街の東方向から、砂煙が・・・」と、注進だ。
 「もう、来たのかっ!」と、軍曹が叫んだ。
「では、おびき寄せ作戦開始だっ!」と、少尉が指示を出した。
 我が日本陸軍は、迫りくるソ連軍戦車隊に対処することができるのか!
ここに初めて、ソ連軍戦車T26と日本軍戦車八九式との対戦の幕が切って落とされたのである。

 

 
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