日本戦車を改造する。

ゆみすけ

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奉天から熱河省へ・・・

地平線へ向かって・・・

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 奉天で燃料を給油した、我が八九式戦車隊は一路、北へ方向を変換する。
馬賊の案内人が、「隊長さん、ここからは熱河省アルヨ、何も無いところアルヨ。」と、わざわざ進言する。
 「河とかは?」「無いから、水の補給が大変アルヨ。」
「一旦、停止だ。」「給水だ。」
 八九式の戦車の車台の後部は生活用品が・・・バケツとか旗竿とかハンゴウやナベ、やかんが、載せてあるのだ。
旗竿は国旗や軍旗を掲げて突撃するための竿である。
 「ドラム缶へ給水だ。」ドラム缶は当時は日本軍には・・・だが、これはラノベである。
「いいか、一度沸騰させた水だけを入れるんだぞ。」と、軍曹が叫ぶ。
 隊員らは、たいてい生水で苦労した経験者である。 下痢にはなりたくない。
それに、チフス菌にも用心しなければ・・・日清戦争で衛生面で苦労した陸軍だったのだ。
 シナは病原菌の大陸なのである。 それは、現在も同じなのだ。

 「いいか、飲み水を制限するからな。」と、軍曹が厳命した。
そして、何も無い熱河省へ八九式戦車は隊列を編成して・・・・進軍する。
 と、突然、先頭車が・・・
「いかん、履帯が切れたわい。」と、車長が走って報告だ。
 「停止。」と、15両が停止する。 1両も遅れてはならない、修理しかない。
「いかんぞ、これは履帯がボロボロだ。」と、切れた履帯を外す隊員らである。
 「替えの履帯はあるが・・・この分じゃと・・・足りんかな。」と、工兵隊から進言だ。
どうやら、乾燥した悪路だ、履帯には・・・負担が大きすぎるようだ。
 「速度を40から30へ、落としてください。」「うむ、仕方がない、わかった。」
と、速度を30キロとする加藤中尉だった。
 「しかし、大幅に遅れそうだ。」「とても、今のままでは吉林へ廻り込むのは。」
「うむ、このままでは、無理かもだな。」と、加藤中尉が地図を観る。
 「どうするかだな。」と、思案する中尉殿である。
「やはり、熱河省はヤメて、長春を目指すべきかと。」と、軍曹が提案する。
 「しかし、ソ連軍の背後はつけないぞ。」と、中尉だ。
「しかし、30キロの進軍では、ソ連軍の背後は無理ですぞ。」
 「ううむ、そうだな。」「よし、長春へ直行するぞ。」と、決断する中尉だ。
馬賊の案内人は、「それは、ありがたいアルヨ。」「遼河があるから、水が補給できるアルヨ。」と、喜んだのだ。
 「なら、ドラム缶は降ろせますな。」と、軍曹だ。
多量の飲料水を運ばなくてもいいのは、朗報だ。
 軽くなれば、エンジンへも負担がなくなるからだ。
 
 しかし、もう少し早く・・・エンジンがエンコした八九式が・・・
工兵がエンジンを後部のカバーを開いて、調べた。
 「いかん、これは燃料が・・・」と、整備の工兵が叫んだ。
どうやら、満州国の粗悪な軽油を使ったようだ。
 ジーゼルエンジンは軽油や灯油、アルコールでも運用できるほど、使う燃料に左右されないが・・・
粗悪軽油には・・・燃料噴射ポンプが詰まってしまったようだ。
 ジーゼルエンジンはエンジン価格の半分が燃料ポンプといわれるほど燃料ポンプは高額であり、デリケートなのである。
 それに、エンジンオイルもカスが溜まりやすく、オイルフィルターは普通の紙フィルターではない。
なんと、遠心分離機でカスを飛ばして、オイルをクリーンにしてつかってるほどだ。
 「ゴミが多すぎるんだよ。」と、満州国の軽油を酷評する整備工兵だ。
しかし、文句を言っても・・・それで、戦車へ給油する軽油は一度、不純物を取り除いたヤツを使うこととなったが・・・いまの、エンコしたエンジンを修理せねばならない。
 まあ、燃料ポンプ以外はカンタンな構造だから・・・なんとでもなるのだ。
「すいぶん、おおきなシリンダーだな。」と、中尉が覗きこむ。
 「あ、あ、ジーゼルはシリンダーの大きさに制約がないからね。」と、工兵だ。
「ガソリンはあるんかい。」と、中尉が聞いた。
 「そうですね、ガソリンは800ccのシリンダーが限界ですが、ジーゼルは無いですからね。」と、工兵がいう。
豆知識が増える、中尉である。
 
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