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エンジンの素人修理とは?
素人はヤルことがエグイのだ。
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エンジンは生きているとは、よく聞く言葉だ。
もちろん、本当に命があるわけではない。
言葉のアヤであるが・・・それでも、その言葉に嘘はないと思うのは著者だけではない。
エンジンは機嫌を取らないと、うまく動いてはくれないのだ。
そう、とくに現在の電子制御になるまでは・・・
エンジンオイルとガソリンを入れれば動く時代となったのである。
路上で故障したクルマを観なくなったのである。
今なら、路上でボンネットを開けていれば好奇の眼で観られるだろう。
それほど、クルマの故障やエンコは無い時代だ。
しかし、当時はエンコなんて当然の時代であった。
峠道の途中でオーバーヒートしてボンネットを開けてるクルマなぞ、珍しくなかったのだ。
ここに、加藤中尉の戦車隊が記した素人修理の虎の巻きがある。
専門家に見せたところ・・・とんでのない代物らしいが・・・
ちなみに、加藤戦車隊の八九式戦車はガソリンエンジンだった。
初期のころは、ジーゼルエンジンでなくガソリンだったのだ。
そして、満州は内地とは違い大陸性気候である。
ところが、八九式戦車のエンジンは内地の工場で造ったエンジンだ。
それで、気候が合わなくてエンコが頻発したのである。
ガソリンエンジンで、サイドバルブ式の6気筒エンジンだ。
馬力は50馬力ほどである。
速度は15キロ毎時から20キロ毎時だった。
まだ、改良された八九式戦車ではなかった・・・・
「まだ、エンジンは掛からないのか。」と、加藤中尉だ。
隊長車の砲塔から後ろを観る。
戦車のエンジンは砲塔の後ろにあるからだ。
そこで、エンジンのカバーを開けて、操縦手が苦戦していた・・・
先ほどから、エンジンを掛けようとクランクを砲手と装填手が廻している。
操縦手はエンジンが掛かるように、あちこちと操作して苦戦中だ。
ここは、大連港の埠頭だ。 あきつ丸からクレーンで満州の地へ降ろされたのである。
「隊長、しばらくエンジンを動かしてないから、機嫌が悪いんですよ。」と、操縦手が言い訳を・・・
日本の神戸港を出てから、戦車のエンジンは動かしていなかったのだ。
それまで、点検と称して連日エンジンは掛けていたのだった。
神戸から大連の港までの7日間、エンジンは動かしていなかったのだ。
それで、エンジンの機嫌がわるくなったのである。
「くそっ、仕方がない・・・プラグを見るか。」と、操縦手が工具を用意する。
それで、エンジンの点火プラグを点検するのだ。
プラグは6個ある。 それで、まずは1番のプラグを工具で外した。
プラグはガソリンで濡れていた。
「うむ、チヨークの掛けすぎだな。」と、乾いた雑巾でプラグを拭き拭きだ。
そして、次は2番の・・・こうして、6本のプラグを拭いた。
そして、エンジンのチョークレバーを戻した。
「いいぞ、クランクを廻してくれ。」と、合図だ。
「よし、廻すぞ。」と、二人でクランク棒を廻す。
一人ではエンジンの負荷が大きいから、廻せないのだ。
「ブルン。」「おっ、いい音だ。」
ところが、それからウンともスンとも・・・言わないエンジンだ。
「やはり、構わなかったんで、機嫌が悪いんだ。」と、操縦手が・・・・
「なんか、動かす方法は無いのか。」と、加藤中尉が顔をのりだした。
「そうですね、燃料パイプを見てみます。」と、ゴムの細いホーズを点検する操縦手だ。
「あかん、燃料のゴミで詰まってる。」と、ホースを突く操縦手だ。
どうやら、ガソリンをタンクで運んできたのだが・・・タンクの中の細かいゴミが詰まったようだ。
当時は燃料タンクもショボかった日本軍である。
「あまり遅くなると・・・満州国の奉天まで行けないぞ。」と、隊長だ。
今夜の宿は奉天の満州軍の宿舎で・・・と、聞いてる加藤隊長だ。
そうなれば、食事も・・・腹が減った隊員らである。
あきつ丸は帰り仕度で・・・忙しそうだった。
なんとか、ゴムホースのゴミを掃除して、再度の挑戦だ。
そのころには、15両の戦車の内・・・14両はエンジンが掛かっていたのだ。
情けない隊長戦車である。
しかし、隊長用の戦車には無線機が・・・それで、戦車を交換するなんて・・・できなかったのだ。
「仕方がない、空気清浄器を外してエンジンを掛けろ。」と、加藤隊長が奥の手だ。
エンジンのキャブレターの上の空気清浄器のフタを取って・・・中の和紙を外して・・・
再度のクランクだ。
「ガ、ガ、ガ、ガルン、ガルン、ゴ、ゴ、ゴ・・・・」と、機嫌が悪かったエンジンが・・・やっと掛かった。
「回転が安定したら、空気清浄器を忘れるなよ。」「ハイ、隊長。」
なんとか、隊長のメンツを保った加藤中尉だった。
もちろん、本当に命があるわけではない。
言葉のアヤであるが・・・それでも、その言葉に嘘はないと思うのは著者だけではない。
エンジンは機嫌を取らないと、うまく動いてはくれないのだ。
そう、とくに現在の電子制御になるまでは・・・
エンジンオイルとガソリンを入れれば動く時代となったのである。
路上で故障したクルマを観なくなったのである。
今なら、路上でボンネットを開けていれば好奇の眼で観られるだろう。
それほど、クルマの故障やエンコは無い時代だ。
しかし、当時はエンコなんて当然の時代であった。
峠道の途中でオーバーヒートしてボンネットを開けてるクルマなぞ、珍しくなかったのだ。
ここに、加藤中尉の戦車隊が記した素人修理の虎の巻きがある。
専門家に見せたところ・・・とんでのない代物らしいが・・・
ちなみに、加藤戦車隊の八九式戦車はガソリンエンジンだった。
初期のころは、ジーゼルエンジンでなくガソリンだったのだ。
そして、満州は内地とは違い大陸性気候である。
ところが、八九式戦車のエンジンは内地の工場で造ったエンジンだ。
それで、気候が合わなくてエンコが頻発したのである。
ガソリンエンジンで、サイドバルブ式の6気筒エンジンだ。
馬力は50馬力ほどである。
速度は15キロ毎時から20キロ毎時だった。
まだ、改良された八九式戦車ではなかった・・・・
「まだ、エンジンは掛からないのか。」と、加藤中尉だ。
隊長車の砲塔から後ろを観る。
戦車のエンジンは砲塔の後ろにあるからだ。
そこで、エンジンのカバーを開けて、操縦手が苦戦していた・・・
先ほどから、エンジンを掛けようとクランクを砲手と装填手が廻している。
操縦手はエンジンが掛かるように、あちこちと操作して苦戦中だ。
ここは、大連港の埠頭だ。 あきつ丸からクレーンで満州の地へ降ろされたのである。
「隊長、しばらくエンジンを動かしてないから、機嫌が悪いんですよ。」と、操縦手が言い訳を・・・
日本の神戸港を出てから、戦車のエンジンは動かしていなかったのだ。
それまで、点検と称して連日エンジンは掛けていたのだった。
神戸から大連の港までの7日間、エンジンは動かしていなかったのだ。
それで、エンジンの機嫌がわるくなったのである。
「くそっ、仕方がない・・・プラグを見るか。」と、操縦手が工具を用意する。
それで、エンジンの点火プラグを点検するのだ。
プラグは6個ある。 それで、まずは1番のプラグを工具で外した。
プラグはガソリンで濡れていた。
「うむ、チヨークの掛けすぎだな。」と、乾いた雑巾でプラグを拭き拭きだ。
そして、次は2番の・・・こうして、6本のプラグを拭いた。
そして、エンジンのチョークレバーを戻した。
「いいぞ、クランクを廻してくれ。」と、合図だ。
「よし、廻すぞ。」と、二人でクランク棒を廻す。
一人ではエンジンの負荷が大きいから、廻せないのだ。
「ブルン。」「おっ、いい音だ。」
ところが、それからウンともスンとも・・・言わないエンジンだ。
「やはり、構わなかったんで、機嫌が悪いんだ。」と、操縦手が・・・・
「なんか、動かす方法は無いのか。」と、加藤中尉が顔をのりだした。
「そうですね、燃料パイプを見てみます。」と、ゴムの細いホーズを点検する操縦手だ。
「あかん、燃料のゴミで詰まってる。」と、ホースを突く操縦手だ。
どうやら、ガソリンをタンクで運んできたのだが・・・タンクの中の細かいゴミが詰まったようだ。
当時は燃料タンクもショボかった日本軍である。
「あまり遅くなると・・・満州国の奉天まで行けないぞ。」と、隊長だ。
今夜の宿は奉天の満州軍の宿舎で・・・と、聞いてる加藤隊長だ。
そうなれば、食事も・・・腹が減った隊員らである。
あきつ丸は帰り仕度で・・・忙しそうだった。
なんとか、ゴムホースのゴミを掃除して、再度の挑戦だ。
そのころには、15両の戦車の内・・・14両はエンジンが掛かっていたのだ。
情けない隊長戦車である。
しかし、隊長用の戦車には無線機が・・・それで、戦車を交換するなんて・・・できなかったのだ。
「仕方がない、空気清浄器を外してエンジンを掛けろ。」と、加藤隊長が奥の手だ。
エンジンのキャブレターの上の空気清浄器のフタを取って・・・中の和紙を外して・・・
再度のクランクだ。
「ガ、ガ、ガ、ガルン、ガルン、ゴ、ゴ、ゴ・・・・」と、機嫌が悪かったエンジンが・・・やっと掛かった。
「回転が安定したら、空気清浄器を忘れるなよ。」「ハイ、隊長。」
なんとか、隊長のメンツを保った加藤中尉だった。
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