219 / 393
日本兵は取説が命だ。
軍人手帳とは・・・
しおりを挟む
日本軍の兵士には全員へ軍人手帳が配布されている。
高校の生徒手帳みたいなモノだ。 紙質は薄いが丈夫な和紙製だ。
明治時代からの軍人勅諭が、最初の見開きだ。 そして、階級制度や部隊の編制などである。
そして、軍服や礼服の図式だ。 カラー印刷だよ・・・海軍用と陸軍用に別れている。
そして、救急法だ。 戦場でのケガの応急手当がカンタンに描かれている。(図示してある。)
あとは、小銃や機関銃の分解図などだ。 使うグリスの指示やネジ締めのトルクまで書いてある。
もちろん、軍事機密ではない。 当然、戦闘機の照準器や無線暗号などは描かれていないのだ。
外部へ漏れても、差しさわりがないことばかりである。
そして、その手帳へ配属された部隊の機械や兵器の取説を足すことになっているのだ。
戦場でエンコしたり故障したとき役立つ手帳なのである。
高校の生徒手帳より、はるかに優れモノなのだ。
そして、ジーゼルエンジンの整備や修理は軍事機密ではないからである。
「なに、なに、エンジンが掛からないときは、まずは燃料フィルターから疑うべしか。」
この満州の地の軽油は混じり物(ゴミ)が多く、すぐにフィルターが詰まるのだ。
「それでも、ダメなら空気フィルターを疑うべしか。」 満州平原は粉塵がすごいのだ。
空気フィルターも。詰まりやすかったのだ。
「それでも、ダメなら燃料パイプの順を追うべしか。」と、燃料タンクから経路の燃料パイプを調べる。
「あっ、ここの繋ぎが振動で外れてる。」と、原因が・・・(戦車は振動がすごいのだ。)
しかし、ジーゼルエンジンは燃料ポンプまで軽油がきて無いと、噴射ポンプが作動しない。(カラ回しは壊れるからだ。)
シコシコと手動ポンプで軽油を送り込む。
満州は内地と違って気候や環境が差があるのだ。
それで、満州独特の整備や点検が必要なようなのである。
それが、取説に描いてあるのだ。 もちろん、図面付きだ。
こうして、現場に強くなっていく戦車隊員らである。
「偵察戦車から隊長。」 おっ、なんだろう。
「こちら、今野だ。」「国境の河の対岸へ敵と思われるヤツが・・・」「なんだとっ。」
「そやつの行動を見腫れ。」「了解です。」「なお、られないようにだぞ。」「ハイ。」
「戦車では無いんだな。」「え、え、農夫みたいですが、こんな所では変ですから。」
ふむ、偵察にしてはカンが働くな、と感心する少尉だ。
確かに、河に農夫なぞ? たぶん、敵の下見だろう・・・
ソ連の農地からも、国境の河は離れてるからね。
やがて、農夫は数人になり、小屋を建て始める。
場所は国境といっても対岸だ。 ソ連の領土である。
今のところ、手出しはできないのである。
偵察戦車が夕刻に戻ってきた。
「隊長、敵と思われる農夫が小屋を建てました。」「うむ、見張り小屋というやつだな。」
「それで、数人の農夫が常駐してますが。」「なに、当方には気が付いてるか。」「おそらく。」
「加藤戦車隊に追い払われたからな、用心してるんだな。」と、今野少尉が。
「あれから、3ヶ月だ、そろそろかな。」と、予想を・・・
「じゃあ。」「そうだ、小屋ができたということは侵攻が近いということだな。」
「よし、明日から実弾演習だ。」「ハイ。」「砲弾が少ないが、実弾を撃たねば訓練にならんからな。」
「とりあえす、加藤戦車隊の引継ぎの古い砲弾を使うぞ。」「では、用意をしておきます。」
「うむ、任せたぞ伍長。」 敬礼して下がる伍長だ。
加藤戦車隊が残した古い砲弾が50発ほど残っていたのだ。 砲弾も寿命があるのだ。
どうしても火薬は湿気に弱いのだ。 完全密封なぞ無理だからである。
湿った花火が使えないのと同じである。
それなりの管理をしてないと不発弾になりかねない。
それに、まだ火薬庫が完成しないから、木箱に防水テントで野詰みなのだ。
一応、見張りの歩哨は立ててあるが・・・
いつまでも、実弾を野詰みでは・・・内地では考えられんことだが・・・
高校の生徒手帳みたいなモノだ。 紙質は薄いが丈夫な和紙製だ。
明治時代からの軍人勅諭が、最初の見開きだ。 そして、階級制度や部隊の編制などである。
そして、軍服や礼服の図式だ。 カラー印刷だよ・・・海軍用と陸軍用に別れている。
そして、救急法だ。 戦場でのケガの応急手当がカンタンに描かれている。(図示してある。)
あとは、小銃や機関銃の分解図などだ。 使うグリスの指示やネジ締めのトルクまで書いてある。
もちろん、軍事機密ではない。 当然、戦闘機の照準器や無線暗号などは描かれていないのだ。
外部へ漏れても、差しさわりがないことばかりである。
そして、その手帳へ配属された部隊の機械や兵器の取説を足すことになっているのだ。
戦場でエンコしたり故障したとき役立つ手帳なのである。
高校の生徒手帳より、はるかに優れモノなのだ。
そして、ジーゼルエンジンの整備や修理は軍事機密ではないからである。
「なに、なに、エンジンが掛からないときは、まずは燃料フィルターから疑うべしか。」
この満州の地の軽油は混じり物(ゴミ)が多く、すぐにフィルターが詰まるのだ。
「それでも、ダメなら空気フィルターを疑うべしか。」 満州平原は粉塵がすごいのだ。
空気フィルターも。詰まりやすかったのだ。
「それでも、ダメなら燃料パイプの順を追うべしか。」と、燃料タンクから経路の燃料パイプを調べる。
「あっ、ここの繋ぎが振動で外れてる。」と、原因が・・・(戦車は振動がすごいのだ。)
しかし、ジーゼルエンジンは燃料ポンプまで軽油がきて無いと、噴射ポンプが作動しない。(カラ回しは壊れるからだ。)
シコシコと手動ポンプで軽油を送り込む。
満州は内地と違って気候や環境が差があるのだ。
それで、満州独特の整備や点検が必要なようなのである。
それが、取説に描いてあるのだ。 もちろん、図面付きだ。
こうして、現場に強くなっていく戦車隊員らである。
「偵察戦車から隊長。」 おっ、なんだろう。
「こちら、今野だ。」「国境の河の対岸へ敵と思われるヤツが・・・」「なんだとっ。」
「そやつの行動を見腫れ。」「了解です。」「なお、られないようにだぞ。」「ハイ。」
「戦車では無いんだな。」「え、え、農夫みたいですが、こんな所では変ですから。」
ふむ、偵察にしてはカンが働くな、と感心する少尉だ。
確かに、河に農夫なぞ? たぶん、敵の下見だろう・・・
ソ連の農地からも、国境の河は離れてるからね。
やがて、農夫は数人になり、小屋を建て始める。
場所は国境といっても対岸だ。 ソ連の領土である。
今のところ、手出しはできないのである。
偵察戦車が夕刻に戻ってきた。
「隊長、敵と思われる農夫が小屋を建てました。」「うむ、見張り小屋というやつだな。」
「それで、数人の農夫が常駐してますが。」「なに、当方には気が付いてるか。」「おそらく。」
「加藤戦車隊に追い払われたからな、用心してるんだな。」と、今野少尉が。
「あれから、3ヶ月だ、そろそろかな。」と、予想を・・・
「じゃあ。」「そうだ、小屋ができたということは侵攻が近いということだな。」
「よし、明日から実弾演習だ。」「ハイ。」「砲弾が少ないが、実弾を撃たねば訓練にならんからな。」
「とりあえす、加藤戦車隊の引継ぎの古い砲弾を使うぞ。」「では、用意をしておきます。」
「うむ、任せたぞ伍長。」 敬礼して下がる伍長だ。
加藤戦車隊が残した古い砲弾が50発ほど残っていたのだ。 砲弾も寿命があるのだ。
どうしても火薬は湿気に弱いのだ。 完全密封なぞ無理だからである。
湿った花火が使えないのと同じである。
それなりの管理をしてないと不発弾になりかねない。
それに、まだ火薬庫が完成しないから、木箱に防水テントで野詰みなのだ。
一応、見張りの歩哨は立ててあるが・・・
いつまでも、実弾を野詰みでは・・・内地では考えられんことだが・・・
1
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる