日本戦車を改造する。

ゆみすけ

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日本兵は取説が命だ。

軍人手帳とは・・・

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 日本軍の兵士には全員へ軍人手帳が配布されている。
高校の生徒手帳みたいなモノだ。 紙質は薄いが丈夫な和紙製だ。
 明治時代からの軍人勅諭が、最初の見開きだ。 そして、階級制度や部隊の編制などである。
そして、軍服や礼服の図式だ。 カラー印刷だよ・・・海軍用と陸軍用に別れている。
 そして、救急法だ。 戦場でのケガの応急手当がカンタンに描かれている。(図示してある。)
あとは、小銃や機関銃の分解図などだ。 使うグリスの指示やネジ締めのトルクまで書いてある。
 もちろん、軍事機密ではない。 当然、戦闘機の照準器や無線暗号などは描かれていないのだ。
外部へ漏れても、差しさわりがないことばかりである。 
 そして、その手帳へ配属された部隊の機械や兵器の取説を足すことになっているのだ。
戦場でエンコしたり故障したとき役立つ手帳なのである。
 高校の生徒手帳より、はるかに優れモノなのだ。 
そして、ジーゼルエンジンの整備や修理は軍事機密ではないからである。

 「なに、なに、エンジンが掛からないときは、まずは燃料フィルターから疑うべしか。」 
この満州の地の軽油は混じり物(ゴミ)が多く、すぐにフィルターが詰まるのだ。
 「それでも、ダメなら空気フィルターを疑うべしか。」 満州平原は粉塵がすごいのだ。
空気フィルターも。詰まりやすかったのだ。
 「それでも、ダメなら燃料パイプの順を追うべしか。」と、燃料タンクから経路の燃料パイプを調べる。
「あっ、ここの繋ぎが振動で外れてる。」と、原因が・・・(戦車は振動がすごいのだ。)
 しかし、ジーゼルエンジンは燃料ポンプまで軽油がきて無いと、噴射ポンプが作動しない。(カラ回しは壊れるからだ。)
 シコシコと手動ポンプで軽油を送り込む。 
満州は内地と違って気候や環境が差があるのだ。
 それで、満州独特の整備や点検が必要なようなのである。
それが、取説に描いてあるのだ。 もちろん、図面付きだ。
 こうして、現場に強くなっていく戦車隊員らである。

 「偵察戦車から隊長。」 おっ、なんだろう。
「こちら、今野だ。」「国境の河の対岸へ敵と思われるヤツが・・・」「なんだとっ。」
 「そやつの行動を見腫れ。」「了解です。」「なお、られないようにだぞ。」「ハイ。」
「戦車では無いんだな。」「え、え、農夫みたいですが、こんな所では変ですから。」
 ふむ、偵察にしてはカンが働くな、と感心する少尉だ。
確かに、河に農夫なぞ? たぶん、敵の下見だろう・・・
 ソ連の農地からも、国境の河は離れてるからね。
やがて、農夫は数人になり、小屋を建て始める。
 場所は国境といっても対岸だ。 ソ連の領土である。
今のところ、手出しはできないのである。

 偵察戦車が夕刻に戻ってきた。
「隊長、敵と思われる農夫が小屋を建てました。」「うむ、見張り小屋というやつだな。」
 「それで、数人の農夫が常駐してますが。」「なに、当方には気が付いてるか。」「おそらく。」
「加藤戦車隊に追い払われたからな、用心してるんだな。」と、今野少尉が。
 「あれから、3ヶ月だ、そろそろかな。」と、予想を・・・
「じゃあ。」「そうだ、小屋ができたということは侵攻が近いということだな。」
 「よし、明日から実弾演習だ。」「ハイ。」「砲弾が少ないが、実弾を撃たねば訓練にならんからな。」
「とりあえす、加藤戦車隊の引継ぎの古い砲弾を使うぞ。」「では、用意をしておきます。」
 「うむ、任せたぞ伍長。」 敬礼して下がる伍長だ。
加藤戦車隊が残した古い砲弾が50発ほど残っていたのだ。 砲弾も寿命があるのだ。
 どうしても火薬は湿気に弱いのだ。 完全密封なぞ無理だからである。
湿った花火が使えないのと同じである。
 それなりの管理をしてないと不発弾になりかねない。
それに、まだ火薬庫が完成しないから、木箱に防水テントで野詰みなのだ。
 一応、見張りの歩哨は立ててあるが・・・
いつまでも、実弾を野詰みでは・・・内地では考えられんことだが・・・
 

 
 
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