日本戦車を改造する。

ゆみすけ

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満州国への上陸。

ここが、異国の土か・・・

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 「今野さん、もうすぐ着きますよ。」と、輸送船の船長が知らせにくる。
民間の船長は少尉とか隊長とか呼称はしない。 役職同士の・さん・つけである。
 「そうですか、船酔いしそうでしたよ。」「まあ、三日ですからね。」
日本海を横断するから三日だ。
 「よし、伍長、総員起こしだ。」「了解です。」と、車長(伍長)が部下の隊員を招集へ・・・
陸軍が徴用した輸送船は1万トンクラスの大型だ。
 でないと、戦車が15両も乗せられないのだ。
重さが15トンの九七式中戦車だ。 クレーンの耐荷重の15トンにギリなのだ。
 もちろん、空送重量だ。 燃料、弾薬無しの重さである。
そして、クレーンから降ろしたら、戦車の製作会社からの作業員が燃料をドラム缶からポンプで入れてくれた。
 「よし、順に広場まで運ぶんだ。」と、戦車隊員らが波止場の広場へと・・・
そこでは、歓迎、戦車隊御一行と描かれた横断幕が。 
 そして、歓迎式典の準備が・・・なんか、軍楽隊までいるぞ。
まあ、そこは満州国だ。 銅鑼(どら)やラッパのシナ風である。 軍楽隊もシナ風の異国的なモノだ。
 「今野さん、整備隊員らは、後の便でとのことです。」と、戦車製作会社の技師が告げる。 
そして、申し訳なさそうに輸送船で帰国していったのだ。
 現地には、今野少尉以下、21名の戦車隊員が・・・まだ、現地の言葉も下話だけで、さっぱりなのである。
 
 満州語は難解だ。 清王朝が科挙の試験に使うので、平民は学べなかったのだ。
アラビア語を縦書きしたような文字なのだ。 
 それで、満州でも民衆はシナ語を使っていたのだ。
まあ、方言的なシナ語だが。
 それでも、漢字だから書いた文字は日本人にも理解ができないことはないのだ。
満州の国境にソ連軍が侵攻して、満州国軍の騎馬隊が立ち向かって・・・
 ソ連軍は戦車だ。 満州国は馬だ。 勝てるわけがない。 そう、全滅だ。
たしか、300騎の騎馬隊が・・・数両のソ連軍戦車に機銃掃射で全滅である。
 騎馬隊も弓矢ではない。 小銃だ。 歩兵銃の銃身を短くした騎馬用の銃だ。
それで、応戦したが戦車に通用する訳が無いのである。
 もちろん、騎馬隊だけではなく。 砲撃隊もあったんだが・・・
戦車は動きまわるのだ。 1発砲撃するに何分もかかるから、当たるわけがないのだ。
 そう、シナ軍には通用するが、近代的軍隊のソ連軍には・・・
それで、日本へ泣きついた満州国政府である。
 それで、即席の戦車隊が加藤中尉以下の戦車隊として臨時に派遣されたのである。
もとより、臨時編成の戦車隊である。 数ヶ月の活動で帰国となるのである。
 本来、内地の国土を守備する戦車隊だ。 虎の子をいつまでの貸し与えるほど政府もバカではないのだ。
それで、貸し与えても、いいような戦車隊が作られたのである。
 それが、今野戦車隊の15両と21名なのだ。
15両の九七式は、新型が配備されたお古だ。 そして、戦車隊員らは、落ちこぼれる寸前の21名である。
 そう、日本としては惜しくないモノなのであったのだ。
そうとは、知らない今野少尉以下の21名は歓迎の嵐の中を駐屯地へ・・・・
 戦車を15両連ねてパレードである。
これは、満州国が画策したパレードでもあるのだ。
 なんせ、300騎の全滅は痛いのである。 馬、300頭に騎馬兵300名だ。
遺族への葬儀費もバカにならないのだ。 (葬儀は満州政府が。)
 戦って戦死した軍人は盛大に葬儀を・・・でないと、誰も戦ってくれなくなるのだ。
戦車が15両、地響きを蹴立てて進む。 
 満州国は道路が舗装なぞ・・・無いのだ。 それで、舗装が痛むとかいう運輸省なる役人もいないのだ。
沿道には戦車の轟音で集まった民衆が・・・ゴマンと・・・
 「おお、これが日本の鉄虎かっ。」「すごいぞ。」「これで、ロシアも逃げてくぞ。」
盛んに手を振る満州国民である。
 もう、満州政府の画策は成功なのである。
騎馬隊敗北の責任はうやむやである。 なぜって、もうソ連には負けないのだ。
 正式な戦車隊が満州国にはあるのだからだ。


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