日本戦車を改造する。

ゆみすけ

文字の大きさ
上 下
190 / 393
ソ連軍の様子見かな?

懲りない熊だな。

しおりを挟む
 「偵察隊から前線基地。」「こちら、前線だ。」「偵察隊だ、ヤツらがルビコン川を渡った。」「了解だ。」
通信が終わる。 ルビコン川を渡るとは、重大な決断や行動の事を指す。 古代ローマの逸話である。
 賽は投げられたと同意味だ。 つまり、ソ連軍が国境の河を渡るに例えたのだ。
「司令、ヤツらが・・・」「何、今年で3回目だぞ。」「懲りないヤツらですね。」「ガッンと、やらねば懲りないらしいな。」と、副官と駄弁る司令官だ。
 「で、台数は。」「まだ、報告が。」「うむ、随時知らせろ。」「了解です。」と、敬礼して無線室へ・・・
「偵察隊へ。」「こちら、偵察隊です。」「ヤツらの数は。」「いま、確認しています。」「追って知らせろ。」
「了解です。」 ・・・・・
 そして、しばらくして。 「偵察隊より。」「こちら基地だ、どうぞ。」「敵は、いまだに途河中だ。」「おそらく、20両は越えそうだ。」「・・・了解だ。」
 「司令、大変です。」「うむ、なんだ。」「敵の数は20は越えるとの。」「・・・・」「司令。」「わかった、総員集合を掛けろ。」「ハイ。」と、副官が伝令へ走る。
 やがて、サイレンが基地内に不穏な音をまき散らした。
ぞく、ぞく、と隊員らが・・・整備工場の技師や工員らもである。
 総員とは、満州人の用人も含めるのである。
 約300人余りの人員が司令部前に集結した。
時間がないからか、司令が拡声器で・・・
 「ソ連軍が20両以上、侵攻してきた。」「全員で敵に当たってほしい。」「予備の戦車も含める。」
「この戦いに負ければ、満州国は無いと思え。」 副官が「解散。」と、敬礼を略すほどの緊急事態ということのようだ。
 「作戦は追って無線で指示を。」「とりあえず、出撃だ。」「敵への展開が遅れては・・・」と、指示が乱れ飛ぶ。 
 「やはりか。」と、今野少尉は予感が当たったようだ。
6輪機動戦闘車が実戦配備される前に、ソ連軍が侵攻作戦を展開したのだ。
 ヤツらは6輪機動戦闘車が配備されたら・・・その前に決着をつけるつもりだ。
いくら6輪機動戦闘車が無双でも、1両では・・・せめて、3両あれば・・・と、思う少尉だった。
 
 「いま、予備の戦車へ燃料や砲弾を、その前に行けるヤツは、出撃だ。」と、指示が飛ぶ。
今野少尉も部下の10両の戦車と2両の対空戦車を従えて出撃である。
 「敵の位置はB地点付近らしい。」と、伝令が飛ぶ。
「Bだと、ならD地点で待ち伏せだな。」と、即断する少尉だ。
 「基地へ返信、D地点だ。」「了解。」と、基地の無線係が即応だ。
いまは、一時も無駄にはできない。 
 T34が渡河して30分過ぎた。 時速30キロでも15キロは内陸へ入ってる。
「これは、D地点が危ういかな。」と、予備の作戦を思考する少尉である。
  「くそっ、こんなときは速度が欲しい。」と、6輪機動戦闘車を思う少尉だ。
あれなら、あれがあれば、日本陸軍は無双だ。 
 それほど、試験運用で実感が湧いたのだ。
五式戦闘機を手に入れた空中勤務員のごとしである。
 飛燕の液冷エンジンをヤメて、慣れた空冷星形エンジンへ換装した戦闘機だ。
マスタングに勝てると、当時の陸軍が歓喜した改造戦闘機だ。
 なんせ、急降下の制限速度が亜音速の飛燕の機体だ。 
そこへ、使い慣れた星形空冷エンジンだ。 
 マスタングとタイマンを張れるだろう。
6輪機動戦闘車は、最高速度が80キロだが・・・だが・・・本当は100キロなのだ。
 試験運用した少尉は、そう思ったのだ。
ところが、攻撃型戦車でも、最高速度は40キロが限界なのだ。
 これは、大きいのである。  なにより、余裕が生まれるからだ。
戦いに余裕があれば、負けることは無い。
 
 「D地点だ。」「まだ、ヤツらは着てないな。」と、あたりを見回す少尉だ。
「基地へ返信だ、配置完了。」「基地了解。」と、返信がある。
 「予備戦車隊より今野隊。」「こちら、今野隊だ。」「いま、隊舎を出た、指示を。」「なら、E地点で背後からの攻撃を防いでくれ。」「了解だ。」「基地司令、了解。」と、基地司令からも返答がある。
 日ごろの訓練が光る行動である。
だから、D地点での待ち伏せができるのだ。 
 基本、日本軍はゲリラ戦が得意だ。 待ち伏せ攻撃なぞ、十八番(オハコ)なのである。
ベトコンゲリラへゲリラ戦を教えたのは、敗戦で帰国しなかった日本陸軍の敗残兵である。
 その日本軍のなかでも、大阪の部隊は関西人だけあって、なかなか図太いのだ。
東北の部隊は、正直者ばかりで、バンザイ突撃で全滅だが・・・大阪の部隊は、なんやかんやで生き残るのだ。
 ゲリラはエグイやつほど強いのだ。 商売人なのである。

 「敵は、倍だが・・・ここはゲリラ戦でいくぞ。」と、激を飛ばす少尉だ。
「配置は各個に任せる。」「おう。」「対空戦車は後方で待機だ。」「対空、了解だ。」
 「予備戦車隊が隊舎を出た、E地点へ向かってる。」「ゲリラ戦法で、敵をE地点へ誘い込むぞ。」「おう。」
指示はだした、あとは戦うだけだ。 攻撃戦車は砂袋で対戦車砲対策を・・・そこへ、草木で迷彩をほどこしてるのである。 
 砲塔へ車長が半身をだしてるから戦車が居ると判別ができるほど、迷彩が効いている。
敵がくれば、砲塔のペリスコープでの視界となるから、無線のやり取りで位置を判別するしかないほどだ。
 「偵察隊より、位置を伝える。」「C地点を越えた。」
「もうすぐ、来るぞ。」「各戦車は確固撃破とする、砲撃が重ならないように無線だ。」と、注意事項を・・・




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

大東亜戦争を回避する方法

ゆみすけ
歴史・時代
 大東亜戦争よ有利にの2期創作のつもりです。 時代は昭和20年ころです。 開戦を回避してからのラノベです。

満州国馬賊討伐飛行隊

ゆみすけ
歴史・時代
 満州国は、日本が作った対ソ連の干渉となる国であった。 未開の不毛の地であった。 無法の馬賊どもが闊歩する草原が広がる地だ。 そこに、農業開発開墾団が入植してくる。 とうぜん、馬賊と激しい勢力争いとなる。 馬賊は機動性を武器に、なかなか殲滅できなかった。 それで、入植者保護のため満州政府が宗主国である日本国へ馬賊討伐を要請したのである。 それに答えたのが馬賊専門の討伐飛行隊である。 

旧式戦艦はつせ

古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。

下田物語 -幕末の風景-

夢酔藤山
歴史・時代
幕末、下田。 どこよりも真っ先に海外に接した場所。少女・きちや、のちの通辞・村山滝蔵と西川助蔵に写真家・下岡蓮杖など、若い力が芽吹いた場所。そして、幕末の世相に翻弄された彼女たちの涙と笑いの染みた場所。 いざ。下田から、ニッポンが始まる。

三国志 群像譚 ~瞳の奥の天地~ 家族愛の三国志大河

墨笑
歴史・時代
『家族愛と人の心』『個性と社会性』をテーマにした三国志の大河小説です。 三国志を知らない方も楽しんでいただけるよう意識して書きました。 全体の文量はかなり多いのですが、半分以上は様々な人物を中心にした短編・中編の集まりです。 本編がちょっと長いので、お試しで読まれる方は後ろの方の短編・中編から読んでいただいても良いと思います。 おすすめは『小覇王の暗殺者(ep.216)』『呂布の娘の嫁入り噺(ep.239)』『段煨(ep.285)』あたりです。 本編では蜀において諸葛亮孔明に次ぐ官職を務めた許靖という人物を取り上げています。 戦乱に翻弄され、中国各地を放浪する波乱万丈の人生を送りました。 歴史ものとはいえ軽めに書いていますので、歴史が苦手、三国志を知らないという方でもぜひお気軽にお読みください。 ※人名が分かりづらくなるのを避けるため、アザナは一切使わないことにしました。ご了承ください。 ※切りのいい時には完結設定になっていますが、三国志小説の執筆は私のライフワークです。生きている限り話を追加し続けていくつもりですので、ブックマークしておいていただけると幸いです。

B29を撃墜する方法。

ゆみすけ
歴史・時代
 いかに、空の要塞を撃ち落とすか、これは、帝都防空隊の血と汗の物語である。

Millennium226 【軍神マルスの娘と呼ばれた女 6】 ― 皇帝のいない如月 ―

kei
歴史・時代
周囲の外敵をことごとく鎮定し、向かうところ敵なし! 盤石に見えた帝国の政(まつりごと)。 しかし、その政体を覆す計画が密かに進行していた。 帝国の生きた守り神「軍神マルスの娘」に厳命が下る。 帝都を襲うクーデター計画を粉砕せよ!

鎮西八郎為朝戦国時代二転生ス~阿蘇から始める天下統一~

惟宗正史
歴史・時代
鎮西八郎為朝。幼い頃に吸収に追放されるが、逆に九州を統一し、保元の乱では平清盛にも恐れられた最強の武士が九州の戦国時代に転生!阿蘇大宮司家を乗っ取った為朝が戦国時代を席捲する物語。 毎週土曜日更新!(予定)

処理中です...