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対空戦車の防弾盾。
無いよりは、マシだな。
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「対空戦車の機銃座の防弾盾ができたと連絡がありました。」
「そうか、では今日の午後にでも。」と、今野少尉が電話を切った。
午前の訓練が終わり、戦車開発工場へ・・・主任が出迎える。
「よく来てくださいました。」「いえ、対空戦車の防弾は急務ですからね。」と、今野少尉だ。
「じつは、防弾は無理と現段階では。」「そうなんですか。」「無いよりはマシな程度です。」と、残念そうな主任である。
「まあ、見てくださいよ。」と、組み立て工場へ案内する。
「これは、けっこう良さそうに見えますが。」と、今野少尉だ。
灰色の防弾盾が機銃座についている。
「いえ、見た目は、そうなのですが、敵の攻撃戦闘機の、なんて言ったかな。」「ツポレフ。」
「そう、ドイツが苦杯をなめたツポレフの35ミリ機関砲ですか。」「その、35ミリ機関砲には無力なんですよ。」
「そう、見えないですが。」「これが、同程度の海軍の駆逐艦の機銃での試射ですよ。」と、穴のあいた防弾盾を見せる。
少尉は、穴の開いた盾を持ってみようと・・・重くて持てるモノではなかった。
いかに、機関砲が威力があるか・・・いまさら知った少尉だった。
「でも、けっこう厚さがありそうですが。」「そうなんですよ、これ以上の厚さだと、重すぎて機銃座の旋回速度が遅くて、使えないんですよ。」と、結論をいう主任だ。
「なら、いっそのこと乗員を減らしたら。」と、参考意見の少尉だ。
「えっ、3名を2名にするんですか。」「そうですよ、機銃員と機銃座の操作員だけで。」「つまり、機銃座の操作員が車長を兼ねるんですか。」「え、え、あの敵機だ。」と、言う代わりに方向をしめせば。」
「なるほど、3名が2名なら・・・・」 どうやら、主任は光明を見出したようである。
「わかりました、いいアイデアを、でも余分の乗員は?」と、主任だ。
「心配いりませんよ、兵は常に不足なんですから。」と、今野が不足する派遣軍の実情を・・・・
内地とは違い、はるばる満州まで希望するヤツは少ないのだ。
「では、7日ほどで、なんとかなりそうです。」「わかりました、いちおう幹部や司令のも言っておきますから。」 「え、え、では。」と、戦車開発工場を後にする少尉だった。
いまは、なんともいえないが・・・ツポレフ戦闘機は必ず出てくるはずだ。 そう、確信している少尉である。
そして、対空戦車が完成するまでに、対空戦車の乗員を3名に変更する事務手続きを・・・庶務が、なかなか承諾しなかったんだが。 なんとか、ごり押しで進めたのである。
それは、鹵獲敵戦車のT34へ日章旗を描いて、改造を施して人員を補充したのである。
これで、戦車隊は予備の戦車を含めて16両の大戦車隊へと・・・T34は4両で、2両は旧型のソ連軍戦車だ。
ソ連軍の戦車には、照準器と無線機を取り付けたりしたのである。 エンジンは同じデーゼルだから整備隊員は困らないのである。
整備隊員いわく、露スケのデーゼルは、造りが大雑把であり、扱いやすいとの話も聞くそうだ。
なんでも、燃料噴射ポンプも、詰まったりしたらトンカチで、ガツンらしい。 日本の燃料ポンプは、トンカチなら壊れてしまう。 まあ、日本のは詰まったことが無いんだが・・・
「隊長、対空戦車が台車で運ばれてきましたよ。」と、部下が知らせる。 「もう、7日も、経ったんかよ。」と、練兵場へ・・・
「あれか。」と、対空戦車を見る。
「防弾盾は。」「これは、これで、すごなぁ。」と、防弾盾の厚さに驚いた少尉だ。
どうみても、4センチくらいあるのだ。 それに、断面は重ねてあるのか、数枚の板らしい。
「あ、あ、今野さん、できましたよ。」と、主任だ。
主任の階級は兵科なら少尉とトントンだ。 それで、上でも下でもないのである。
「人員を2名にすることで、300キロ軽量になりました。」「それで、防弾に300キロ使いました。」
「なるほど。」と、納得の少尉である。
300キロなら、この厚さの防弾盾も納得であるのだ。
「これなら、ツポレフだろうと、我が軍の対戦車戦闘機の40ミリ機関砲でも耐えますからな。」
「なんと、我が軍の40ミリ機関砲でも、ですか。」「あ、あ、試射して試したから。」
「これは、安心して機銃座へ座れますな。」と、太鼓判である。
「でも、我が軍の試作戦闘機は40ミリなんですね。」と、少尉が・・・
主任は、「しまった、40ミリは内密でお願いします。」「ハァ。」「なんせ、最近は軍事機密がうるさいんで。」「え、え、わかりました。」と、少尉である。
たしか、20ミリと聞いていたが、やはり20ミリでは、敵の戦車の砲塔を抜けなかったんだな・・・
と、内心確信するのだ。 T34ショックは、我が軍でも大きかったのだ。
それに、鹵獲したT34の検証もあったからだ。
「しかし、主任。」「なんですか。」「40ミリ機関砲では、飛べないですよ。」「え、え、97式戦闘機では無理なので、双発の陸上攻撃戦闘機が・・・」「え、え、初耳ですよ。」「バラさないでくださいよ。」「え、え、私も軍人ですから。」と、少尉が答える。
しかし、双発地上攻撃戦闘機なぞ、マジかよ・・・・これは、海軍の月光をパクった陸軍の・・・・
「そうか、では今日の午後にでも。」と、今野少尉が電話を切った。
午前の訓練が終わり、戦車開発工場へ・・・主任が出迎える。
「よく来てくださいました。」「いえ、対空戦車の防弾は急務ですからね。」と、今野少尉だ。
「じつは、防弾は無理と現段階では。」「そうなんですか。」「無いよりはマシな程度です。」と、残念そうな主任である。
「まあ、見てくださいよ。」と、組み立て工場へ案内する。
「これは、けっこう良さそうに見えますが。」と、今野少尉だ。
灰色の防弾盾が機銃座についている。
「いえ、見た目は、そうなのですが、敵の攻撃戦闘機の、なんて言ったかな。」「ツポレフ。」
「そう、ドイツが苦杯をなめたツポレフの35ミリ機関砲ですか。」「その、35ミリ機関砲には無力なんですよ。」
「そう、見えないですが。」「これが、同程度の海軍の駆逐艦の機銃での試射ですよ。」と、穴のあいた防弾盾を見せる。
少尉は、穴の開いた盾を持ってみようと・・・重くて持てるモノではなかった。
いかに、機関砲が威力があるか・・・いまさら知った少尉だった。
「でも、けっこう厚さがありそうですが。」「そうなんですよ、これ以上の厚さだと、重すぎて機銃座の旋回速度が遅くて、使えないんですよ。」と、結論をいう主任だ。
「なら、いっそのこと乗員を減らしたら。」と、参考意見の少尉だ。
「えっ、3名を2名にするんですか。」「そうですよ、機銃員と機銃座の操作員だけで。」「つまり、機銃座の操作員が車長を兼ねるんですか。」「え、え、あの敵機だ。」と、言う代わりに方向をしめせば。」
「なるほど、3名が2名なら・・・・」 どうやら、主任は光明を見出したようである。
「わかりました、いいアイデアを、でも余分の乗員は?」と、主任だ。
「心配いりませんよ、兵は常に不足なんですから。」と、今野が不足する派遣軍の実情を・・・・
内地とは違い、はるばる満州まで希望するヤツは少ないのだ。
「では、7日ほどで、なんとかなりそうです。」「わかりました、いちおう幹部や司令のも言っておきますから。」 「え、え、では。」と、戦車開発工場を後にする少尉だった。
いまは、なんともいえないが・・・ツポレフ戦闘機は必ず出てくるはずだ。 そう、確信している少尉である。
そして、対空戦車が完成するまでに、対空戦車の乗員を3名に変更する事務手続きを・・・庶務が、なかなか承諾しなかったんだが。 なんとか、ごり押しで進めたのである。
それは、鹵獲敵戦車のT34へ日章旗を描いて、改造を施して人員を補充したのである。
これで、戦車隊は予備の戦車を含めて16両の大戦車隊へと・・・T34は4両で、2両は旧型のソ連軍戦車だ。
ソ連軍の戦車には、照準器と無線機を取り付けたりしたのである。 エンジンは同じデーゼルだから整備隊員は困らないのである。
整備隊員いわく、露スケのデーゼルは、造りが大雑把であり、扱いやすいとの話も聞くそうだ。
なんでも、燃料噴射ポンプも、詰まったりしたらトンカチで、ガツンらしい。 日本の燃料ポンプは、トンカチなら壊れてしまう。 まあ、日本のは詰まったことが無いんだが・・・
「隊長、対空戦車が台車で運ばれてきましたよ。」と、部下が知らせる。 「もう、7日も、経ったんかよ。」と、練兵場へ・・・
「あれか。」と、対空戦車を見る。
「防弾盾は。」「これは、これで、すごなぁ。」と、防弾盾の厚さに驚いた少尉だ。
どうみても、4センチくらいあるのだ。 それに、断面は重ねてあるのか、数枚の板らしい。
「あ、あ、今野さん、できましたよ。」と、主任だ。
主任の階級は兵科なら少尉とトントンだ。 それで、上でも下でもないのである。
「人員を2名にすることで、300キロ軽量になりました。」「それで、防弾に300キロ使いました。」
「なるほど。」と、納得の少尉である。
300キロなら、この厚さの防弾盾も納得であるのだ。
「これなら、ツポレフだろうと、我が軍の対戦車戦闘機の40ミリ機関砲でも耐えますからな。」
「なんと、我が軍の40ミリ機関砲でも、ですか。」「あ、あ、試射して試したから。」
「これは、安心して機銃座へ座れますな。」と、太鼓判である。
「でも、我が軍の試作戦闘機は40ミリなんですね。」と、少尉が・・・
主任は、「しまった、40ミリは内密でお願いします。」「ハァ。」「なんせ、最近は軍事機密がうるさいんで。」「え、え、わかりました。」と、少尉である。
たしか、20ミリと聞いていたが、やはり20ミリでは、敵の戦車の砲塔を抜けなかったんだな・・・
と、内心確信するのだ。 T34ショックは、我が軍でも大きかったのだ。
それに、鹵獲したT34の検証もあったからだ。
「しかし、主任。」「なんですか。」「40ミリ機関砲では、飛べないですよ。」「え、え、97式戦闘機では無理なので、双発の陸上攻撃戦闘機が・・・」「え、え、初耳ですよ。」「バラさないでくださいよ。」「え、え、私も軍人ですから。」と、少尉が答える。
しかし、双発地上攻撃戦闘機なぞ、マジかよ・・・・これは、海軍の月光をパクった陸軍の・・・・
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