163 / 393
行軍の訓練だ。
エンジンの、ご機嫌とりも楽ではない。
しおりを挟む
「今日は、行軍の訓練だな。」と、副官が今野少尉へ。 「え、え、もう集合してると思いますが。」「では、司令へ伝えておくぞ。」「え、え。」
「敬礼。」の声が響く。 お立ち台へ司令が登壇である。 答礼で返す司令官だ。
「うおっ、ほん。」と、咳払いで・・・「諸君、平素の訓練こそが勝利への道である、以上だ。」「敬礼。」
長々と無駄話をしない司令である。
「よし、各車へ乗車。」「おう。」戦車隊員らは、自己の車両へ靴のドロを払って乗り込む。 戦車隊員らはゴム底の靴だ。 皮底の靴は金属との相性が悪いからだ。 頭部には、戦車隊員用の車内用のヘルメットである。 これは、戦車内が狭いからである。 頭部を鉄のカタマリで打たないようにである。
「エンジン始動。」「エンジン始動します。」補助エンジンを駆ける。 でかい戦車のデーゼルエンジンは手動では無理なのだ。 もちろん、戦車外からクランクで数人で動かせないこともないんだが・・・まず、すぐには掛からない。 まずは、スターターエンジンを駆けるのだ。 これは、小型エンジンだから手動でカンタンに掛けられるのだ。 手回しで始動用エンジンを掛ける。 「グルルルルン。」と、小型エンジンが動き出した。 そして、デーゼルエンジンのグロープラグに電流を流す。 グロープラグはニクロム線だ。 つまり、シンンダー内を温めるのだ。
そして、小型始動用のエンジンの動力をクラッチで、でかいデーゼルエンジンと繋いだ。 「キュルン、キュルン。」と、デーゼルエンジンが廻りだす。 燃料噴射ボタンだ。 デーゼルはガソリンと真逆だ。 ガソリンエンジンはガソリンの霧へ空気を送り込む。 デーゼルは軽油を空気へ吹くのだ。 だから、ガソリンエンジンのキャブレターは無い。 軽油を吹く燃料ポンプがあるのだ。 燃料ポンプがデーゼルエンジンを決めるカナメなのだ。
しばらく、暖気運転だ。 エンジンオイルが温まるまでである。 15分前後である。 オイルの油温計の針が動き出せばOKだ。
「よし、出発だ。」と、今野少尉が砲塔の席から指示を出す。 駐屯地内は、誘導員が旗で進路を確保してくれる。
これは、駐屯地への出入りの業者などへの危険防止のためである。 駐屯地内はは緊急時を除いて、30キロ規制である。 旗振り誘導員も慣れたモノである。
やがて、出入り口の遮断機が上がり、戦車隊は行軍訓練のため、満州平原の大海原へくりだしたのだ。
満州平原は広大である。 それで、燃料給油のトラックとの会合訓練も兼ねているのである。
戦車は燃費が1ℓあたり、300メートルくらいである。 下手なアメ車より酷い燃費なのである。
まあ、30トン前後の重量だ。 それに、エンジンは常にぶん回しているのだ。 でないと、動かないからである。
それで、戦車のエンジンは数年も使えないのだ。 交換である。 それで、各戦車にはカルテのような整備記録書があるのだ。 いつエンジンオイルを交換したかとか、変速機のギアも摩耗で交換したとか。 細かな整備の記録である。 それにより、交換する部品の量が予測できるのである。 そして、その記録により、どこが欠点かも判明するのだ。
先日も、ギアの3段目が摩耗が激しいので、原因を追究したら、ギアオイルの循環に問題があったのだ。 それで、新しいオイルのパイプを足して、解決したばかりだ。
その努力が、満州平原を40キロ巡行で行軍ができるのである。
「おい、対空戦車が遅れているぞ。」「まだ、まだ、整備が慣れてないんだな。」「はじめは、我が攻撃型も40キロ巡行ができませんでしたからね。」「そうだな。」 はじめは、30キロでもエンコするくらいであった。
それで、整備部隊がトラックで追従していたくらいである。 行軍となると、長時間の行動である。
エンジンも数時間以上も運用するのである。 短時間なら起きない故障も、耐久性などから思わぬ故障が・・・
それで、エンジンのベアリングなどが耐久性がないから、素材から作り直したほどである。
ベアリングからオイルが漏れるので、オイルに耐性があるゴムを開発するために、わざわざ内地の石油化学工場まで足を運んでいるのである。
満州平原を行軍する、我が戦車隊の陰には、多くの技師らの努力が隠れているのだ。
「そろそろ、B地点ですが。」「うむ、いたぞ。」 今野少尉が燃料給油トラックを見つけた。 給油も訓練である。 戦場で燃料切れは死を招くのだ。 いかに、はやく給油するかも訓練なのである。
「いまから、各戦車への給油訓練だ。」 計測時計の針をゼロだ。 「はじめ。」 給油は、1号車からだ。
隊長の10号車は最後である。 それで、交互に偵察とトラックへの守りを固める。
トラックの燃料タンクへの攻撃は絶対に阻止しなければならない。
でないと、下手すると全滅も・・・
「よし、オレの番だな。」と、最後の給油の今野少尉だ。
攻撃型戦車の燃料タンクは400リットル入るのだ。 いままでは、300だったんだが・・・
これは、満州平原が広大だからである。 遠征だと、後ろへドラム缶(200リットル入る。)を積んで行軍することもあるほどである。 まあ、ガソリンではないからできることである。 デーゼルは軽油燃料だ。 ガソリンよりは発火の危険は少ないのである。
「よし、時間は15分か。」「以前よりは早いですね。」「数分だがな。」「数分が大きいですよ。」「そうだな。」
「さて、トラック隊が差し入れを持ってきてくれたそうだ。」「それは、うれしい話ですね。」「酒はダメだぞ。」「ハァ。」 満州平原での、休憩のひとときは・・・なかなか・・・・
「敬礼。」の声が響く。 お立ち台へ司令が登壇である。 答礼で返す司令官だ。
「うおっ、ほん。」と、咳払いで・・・「諸君、平素の訓練こそが勝利への道である、以上だ。」「敬礼。」
長々と無駄話をしない司令である。
「よし、各車へ乗車。」「おう。」戦車隊員らは、自己の車両へ靴のドロを払って乗り込む。 戦車隊員らはゴム底の靴だ。 皮底の靴は金属との相性が悪いからだ。 頭部には、戦車隊員用の車内用のヘルメットである。 これは、戦車内が狭いからである。 頭部を鉄のカタマリで打たないようにである。
「エンジン始動。」「エンジン始動します。」補助エンジンを駆ける。 でかい戦車のデーゼルエンジンは手動では無理なのだ。 もちろん、戦車外からクランクで数人で動かせないこともないんだが・・・まず、すぐには掛からない。 まずは、スターターエンジンを駆けるのだ。 これは、小型エンジンだから手動でカンタンに掛けられるのだ。 手回しで始動用エンジンを掛ける。 「グルルルルン。」と、小型エンジンが動き出した。 そして、デーゼルエンジンのグロープラグに電流を流す。 グロープラグはニクロム線だ。 つまり、シンンダー内を温めるのだ。
そして、小型始動用のエンジンの動力をクラッチで、でかいデーゼルエンジンと繋いだ。 「キュルン、キュルン。」と、デーゼルエンジンが廻りだす。 燃料噴射ボタンだ。 デーゼルはガソリンと真逆だ。 ガソリンエンジンはガソリンの霧へ空気を送り込む。 デーゼルは軽油を空気へ吹くのだ。 だから、ガソリンエンジンのキャブレターは無い。 軽油を吹く燃料ポンプがあるのだ。 燃料ポンプがデーゼルエンジンを決めるカナメなのだ。
しばらく、暖気運転だ。 エンジンオイルが温まるまでである。 15分前後である。 オイルの油温計の針が動き出せばOKだ。
「よし、出発だ。」と、今野少尉が砲塔の席から指示を出す。 駐屯地内は、誘導員が旗で進路を確保してくれる。
これは、駐屯地への出入りの業者などへの危険防止のためである。 駐屯地内はは緊急時を除いて、30キロ規制である。 旗振り誘導員も慣れたモノである。
やがて、出入り口の遮断機が上がり、戦車隊は行軍訓練のため、満州平原の大海原へくりだしたのだ。
満州平原は広大である。 それで、燃料給油のトラックとの会合訓練も兼ねているのである。
戦車は燃費が1ℓあたり、300メートルくらいである。 下手なアメ車より酷い燃費なのである。
まあ、30トン前後の重量だ。 それに、エンジンは常にぶん回しているのだ。 でないと、動かないからである。
それで、戦車のエンジンは数年も使えないのだ。 交換である。 それで、各戦車にはカルテのような整備記録書があるのだ。 いつエンジンオイルを交換したかとか、変速機のギアも摩耗で交換したとか。 細かな整備の記録である。 それにより、交換する部品の量が予測できるのである。 そして、その記録により、どこが欠点かも判明するのだ。
先日も、ギアの3段目が摩耗が激しいので、原因を追究したら、ギアオイルの循環に問題があったのだ。 それで、新しいオイルのパイプを足して、解決したばかりだ。
その努力が、満州平原を40キロ巡行で行軍ができるのである。
「おい、対空戦車が遅れているぞ。」「まだ、まだ、整備が慣れてないんだな。」「はじめは、我が攻撃型も40キロ巡行ができませんでしたからね。」「そうだな。」 はじめは、30キロでもエンコするくらいであった。
それで、整備部隊がトラックで追従していたくらいである。 行軍となると、長時間の行動である。
エンジンも数時間以上も運用するのである。 短時間なら起きない故障も、耐久性などから思わぬ故障が・・・
それで、エンジンのベアリングなどが耐久性がないから、素材から作り直したほどである。
ベアリングからオイルが漏れるので、オイルに耐性があるゴムを開発するために、わざわざ内地の石油化学工場まで足を運んでいるのである。
満州平原を行軍する、我が戦車隊の陰には、多くの技師らの努力が隠れているのだ。
「そろそろ、B地点ですが。」「うむ、いたぞ。」 今野少尉が燃料給油トラックを見つけた。 給油も訓練である。 戦場で燃料切れは死を招くのだ。 いかに、はやく給油するかも訓練なのである。
「いまから、各戦車への給油訓練だ。」 計測時計の針をゼロだ。 「はじめ。」 給油は、1号車からだ。
隊長の10号車は最後である。 それで、交互に偵察とトラックへの守りを固める。
トラックの燃料タンクへの攻撃は絶対に阻止しなければならない。
でないと、下手すると全滅も・・・
「よし、オレの番だな。」と、最後の給油の今野少尉だ。
攻撃型戦車の燃料タンクは400リットル入るのだ。 いままでは、300だったんだが・・・
これは、満州平原が広大だからである。 遠征だと、後ろへドラム缶(200リットル入る。)を積んで行軍することもあるほどである。 まあ、ガソリンではないからできることである。 デーゼルは軽油燃料だ。 ガソリンよりは発火の危険は少ないのである。
「よし、時間は15分か。」「以前よりは早いですね。」「数分だがな。」「数分が大きいですよ。」「そうだな。」
「さて、トラック隊が差し入れを持ってきてくれたそうだ。」「それは、うれしい話ですね。」「酒はダメだぞ。」「ハァ。」 満州平原での、休憩のひとときは・・・なかなか・・・・
1
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
満州国馬賊討伐飛行隊
ゆみすけ
歴史・時代
満州国は、日本が作った対ソ連の干渉となる国であった。 未開の不毛の地であった。 無法の馬賊どもが闊歩する草原が広がる地だ。 そこに、農業開発開墾団が入植してくる。 とうぜん、馬賊と激しい勢力争いとなる。 馬賊は機動性を武器に、なかなか殲滅できなかった。 それで、入植者保護のため満州政府が宗主国である日本国へ馬賊討伐を要請したのである。 それに答えたのが馬賊専門の討伐飛行隊である。
16世紀のオデュッセイア
尾方佐羽
歴史・時代
【第12章を週1回程度更新します】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。
12章では16世紀後半のヨーロッパが舞台になります。
※このお話は史実を参考にしたフィクションです。
不屈の葵
ヌマサン
歴史・時代
戦国乱世、不屈の魂が未来を掴む!
これは三河の弱小国主から天下人へ、不屈の精神で戦国を駆け抜けた男の壮大な物語。
幾多の戦乱を生き抜き、不屈の精神で三河の弱小国衆から天下統一を成し遂げた男、徳川家康。
本作は家康の幼少期から晩年までを壮大なスケールで描き、戦国時代の激動と一人の男の成長物語を鮮やかに描く。
家康の苦悩、決断、そして成功と失敗。様々な人間ドラマを通して、人生とは何かを問いかける。
今川義元、織田信長、羽柴秀吉、武田信玄――家康の波乱万丈な人生を彩る個性豊かな名将たちも続々と登場。
家康との関わりを通して、彼らの生き様も鮮やかに描かれる。
笑いあり、涙ありの壮大なスケールで描く、単なる英雄譚ではなく、一人の人間として苦悩し、成長していく家康の姿を描いた壮大な歴史小説。
戦国時代の風雲児たちの活躍、人間ドラマ、そして家康の不屈の精神が、読者を戦国時代に誘う。
愛、友情、そして裏切り…戦国時代に渦巻く人間ドラマにも要注目!
歴史ファン必読の感動と興奮が止まらない歴史小説『不屈の葵』
ぜひ、手に取って、戦国時代の熱き息吹を感じてください!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜
紫 和春
SF
二〇二〇年の現代から、一九三六年の世界に転生した八人の若者たち。彼らはスマートフォンでつながっている。
第二次世界大戦直前の緊張感が高まった世界で、彼ら彼女らはどのように歴史を改変していくのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる