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75ミリに耐えたぞ。
命拾いしたぞ。
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ソ連軍は、河の向こう側へ・・・去っていった・・・
「ふう、ヤツら帰っていきやがったな。」と、息をつく今野だ。
今回は、あぶなかった。 賭け事なぞ、もうゴメンだ。 勝負には、あまり運が無い今野少尉だ。
なぜなら、コイコイの勝負が、からっきし弱いからだ。 (コイコイは花札の賭け事だ。)
隊長車が先頭でクサビ型での突撃(ドイツ軍のパンツァーカイル)を、半ば命がけでカマしたのだ。
前面装甲がソ連軍の75ミリ砲に耐えるか、ろくざま考えもしなかったのだ。 そう、突撃チャンスを逃すことの方がリスクが大きいからである。
数で勝る、ソ連軍に勝つには、一か八かの突撃しかないからだ。 虚を突く作戦だ。
それが、相手の混乱を誘い、勝利の女神を呼べるのである。
戦利品の4両のソ連軍の戦車(ソ連軍の印に×だ。)と共に、駐屯地へ凱旋である。
陸軍の旗と戦車隊の旗、それに祖国の旗と満州国の旗もひるがえる前線の駐屯地の門を・・・
隊の残留員や事務員、技師や工員らが、バンザイで迎えてくれる。
やはり、勝って帰るのは気持ちがいいものである。
そして、今野少尉は主任の元へ・・・「見てもらいたいのだが。」「なんですか。」
「敵の砲撃に耐えたんだが・・・」「まさか・・・見せてください。」「あ、あ、これだよ。」
「・・・・・」「なぜか、わかるか。」「・・・・・」主任は、前面装甲をなでまわしている。
「敵戦車との水平軸の角度は?」「角度・・・そうだな、おそらく45度斜めかな。」
「正面だと、後ろの味方に砲撃が当たるかもしれん、それで斜めだ。」 つまり、先頭を狙った砲弾が戦車で跳ね返り、後ろの味方に当たるのを防ぐために、突撃は斜め突撃である。
「わかりました、砂袋を使ったんですね。」「そうだ、よくわかったな。」 伊達に主任技師ではない、とドヤ顔だ。
「跳弾の跡がないですから。」「ふむ。」「砂袋で敵の砲弾が爆発したんですよ。」「なるほど。」「そして、爆発の衝撃は前面装甲で耐えることができますから。」「なるほど。」
「では、砂袋がなかったら。」「今頃は、戦車隊が全滅もあるかも・・・」と、恐ろしいことをいう主任である。
米軍はシャーマン戦車がドイツのティーゲル戦車に勝てないから、盛んに砂袋を積んだのである。
ドイツ本土への進撃の写真は、そんな米軍戦車の写真が多いのだ。
それが、ドイツ軍の戦車は砂袋なんて載せてない。 つまり、米軍の砲撃なぞ・・・なのである。
唯一の欠点は、米軍の砲撃が当たると、釣鐘を叩いた、釣鐘の中らしい。 耳の鼓膜が・・・なのである。
ドイツ軍のティーゲル戦車で、50個以上の地雷を踏んで、50発以上の砲撃が当たり、それでも帰還したティーゲル戦車があったそうだ。
かたや、米軍は5両のシャーマンで、1両のティーゲルに向かって、五分五分らしいのだ。
数の米軍、質のドイツ軍なのである。
ドイツ軍敗退の原因はソ連戦線である。 冬将軍には、ドイツ軍も勝てなかったのだ。 ナポレオンと同じである。
「では、主任は斜めの位置関係と砂袋が、装甲を守ったと・・」「そうです、でなければ抜かれてますよ。」
「ブル、ブル。」「どうしたんです。」「いまになって、震えが・・・」
「次回はどうだか、わかりませんから。」「そうだな。」「それで、対策を考えようかと。」「それは、ありがたい。」 まあ、とやかく言っても、勝ちは勝ちである。
しばらくは、駐屯地の酒保がにぎわったのだ。 そう、お疲れさん会である。
祝勝会ではない、なぜなら戦争ではないからだ。 紛争を戦争にならないように防いだのである。
「今回は、上がなかったからな。」と、ソ連軍戦闘機が飛来しなかったのも、勝てた要素なのだ。
「なんとしても、飛行場の整備が先決だ。」と、本郷司令である。 飛行場があれば、内地から戦闘機を呼べるからだ。
三式連絡機は戦闘機ではないのだ。 遅いし、武器も貧弱だ。 たしか、今は、重いから外してあるとも聞いている。
荒れ地への着陸を考慮しての軽量対策だそうだ。
まあ、ソ連軍戦闘機には、ハナっから勝てないだろう。 なんせ、STOLの短距離、離着陸機なのだ。
戦闘機ではない。 やはり、最新の97式か隼が欲しいのだが・・・
97式戦闘機は、海軍の96式のパクリのヤツだ。 しかし、命中精度がいいから空の狙撃兵とのあだ名もあるほどなのだ。
それに、30ミリ機関砲を無理に載せて、敵戦車を・・・無双だな。
夢は広がる本郷司令である。
「ふう、ヤツら帰っていきやがったな。」と、息をつく今野だ。
今回は、あぶなかった。 賭け事なぞ、もうゴメンだ。 勝負には、あまり運が無い今野少尉だ。
なぜなら、コイコイの勝負が、からっきし弱いからだ。 (コイコイは花札の賭け事だ。)
隊長車が先頭でクサビ型での突撃(ドイツ軍のパンツァーカイル)を、半ば命がけでカマしたのだ。
前面装甲がソ連軍の75ミリ砲に耐えるか、ろくざま考えもしなかったのだ。 そう、突撃チャンスを逃すことの方がリスクが大きいからである。
数で勝る、ソ連軍に勝つには、一か八かの突撃しかないからだ。 虚を突く作戦だ。
それが、相手の混乱を誘い、勝利の女神を呼べるのである。
戦利品の4両のソ連軍の戦車(ソ連軍の印に×だ。)と共に、駐屯地へ凱旋である。
陸軍の旗と戦車隊の旗、それに祖国の旗と満州国の旗もひるがえる前線の駐屯地の門を・・・
隊の残留員や事務員、技師や工員らが、バンザイで迎えてくれる。
やはり、勝って帰るのは気持ちがいいものである。
そして、今野少尉は主任の元へ・・・「見てもらいたいのだが。」「なんですか。」
「敵の砲撃に耐えたんだが・・・」「まさか・・・見せてください。」「あ、あ、これだよ。」
「・・・・・」「なぜか、わかるか。」「・・・・・」主任は、前面装甲をなでまわしている。
「敵戦車との水平軸の角度は?」「角度・・・そうだな、おそらく45度斜めかな。」
「正面だと、後ろの味方に砲撃が当たるかもしれん、それで斜めだ。」 つまり、先頭を狙った砲弾が戦車で跳ね返り、後ろの味方に当たるのを防ぐために、突撃は斜め突撃である。
「わかりました、砂袋を使ったんですね。」「そうだ、よくわかったな。」 伊達に主任技師ではない、とドヤ顔だ。
「跳弾の跡がないですから。」「ふむ。」「砂袋で敵の砲弾が爆発したんですよ。」「なるほど。」「そして、爆発の衝撃は前面装甲で耐えることができますから。」「なるほど。」
「では、砂袋がなかったら。」「今頃は、戦車隊が全滅もあるかも・・・」と、恐ろしいことをいう主任である。
米軍はシャーマン戦車がドイツのティーゲル戦車に勝てないから、盛んに砂袋を積んだのである。
ドイツ本土への進撃の写真は、そんな米軍戦車の写真が多いのだ。
それが、ドイツ軍の戦車は砂袋なんて載せてない。 つまり、米軍の砲撃なぞ・・・なのである。
唯一の欠点は、米軍の砲撃が当たると、釣鐘を叩いた、釣鐘の中らしい。 耳の鼓膜が・・・なのである。
ドイツ軍のティーゲル戦車で、50個以上の地雷を踏んで、50発以上の砲撃が当たり、それでも帰還したティーゲル戦車があったそうだ。
かたや、米軍は5両のシャーマンで、1両のティーゲルに向かって、五分五分らしいのだ。
数の米軍、質のドイツ軍なのである。
ドイツ軍敗退の原因はソ連戦線である。 冬将軍には、ドイツ軍も勝てなかったのだ。 ナポレオンと同じである。
「では、主任は斜めの位置関係と砂袋が、装甲を守ったと・・」「そうです、でなければ抜かれてますよ。」
「ブル、ブル。」「どうしたんです。」「いまになって、震えが・・・」
「次回はどうだか、わかりませんから。」「そうだな。」「それで、対策を考えようかと。」「それは、ありがたい。」 まあ、とやかく言っても、勝ちは勝ちである。
しばらくは、駐屯地の酒保がにぎわったのだ。 そう、お疲れさん会である。
祝勝会ではない、なぜなら戦争ではないからだ。 紛争を戦争にならないように防いだのである。
「今回は、上がなかったからな。」と、ソ連軍戦闘機が飛来しなかったのも、勝てた要素なのだ。
「なんとしても、飛行場の整備が先決だ。」と、本郷司令である。 飛行場があれば、内地から戦闘機を呼べるからだ。
三式連絡機は戦闘機ではないのだ。 遅いし、武器も貧弱だ。 たしか、今は、重いから外してあるとも聞いている。
荒れ地への着陸を考慮しての軽量対策だそうだ。
まあ、ソ連軍戦闘機には、ハナっから勝てないだろう。 なんせ、STOLの短距離、離着陸機なのだ。
戦闘機ではない。 やはり、最新の97式か隼が欲しいのだが・・・
97式戦闘機は、海軍の96式のパクリのヤツだ。 しかし、命中精度がいいから空の狙撃兵とのあだ名もあるほどなのだ。
それに、30ミリ機関砲を無理に載せて、敵戦車を・・・無双だな。
夢は広がる本郷司令である。
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