日本戦車を改造する。

ゆみすけ

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カムにより、変幻自在に飛行する。

これは、まさに戦闘機だ。

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 技師のひとりが、模型飛行機の操縦カムに工夫を加えた。 カムを2個にして、エンジン出力と舵を独立して操作できるようにしたのだ。 飛行機は舵で旋回するとき、どうしても高度が落ちるのだ。 それで、旋回しながらスロットを徐々に上げるのだ。 
 そのカムを組み込みでなく、取り換えれるように考えたのだ。 
カムで、飛行動作が一定だと、訓練員にはつまらないからだ。
そして、カムはいくつもあり、どれを使うかは訓練員は知らないのである。
 「そうか、それは実戦並みの訓練ができるな。」と、今野少尉が・・・
「え、え、この2個カムの操縦装置は、実際の戦闘機の動きに使い物があるかと。」「うむ、いい訓練になりそうだ。」「それで、標的機の使うカムは訓練員には内緒にしてください。」「あ、あ、承知したぞ。」
 「でも、その前に試して見せてくれ。」「いいですよ。」「では、カムは24枚つくりました。」「いま、訓練用の標的機は4機あるから、3種類ということか。」「そうです。」と、丸い円形に切り込みがはいった円盤の金属片を見せる。
 「番号がふってあるので、エンジン調整用と、舵とり用にありますから。」「なかなか、ややこしいな。」「内地では、無線操縦の飛行機の実験がはじまったらしいですが。」「そうなのか?」「聞いてみたら、満州国では、とても予算が・・・」 模型の無線操縦ではない。 ヒトが乗る戦闘機のヤツらしい。 もちろん、ヒトの替わりに無線装置を載せるらしい。
 「内地のいる、仲間の技師から聞いてんですが、将来的に爆弾を積んで敵の戦艦へ衝突させるとか・・・」「それは、もったいないな。」「まあ、ヒトが乗るよりは。」「そうだな。」
 
 「今日からの訓練は、標的機の動きに注意しろ。」「ハイ。」「よし、では訓練をはじめる。」「おう。」
各、戦車隊員は自身の戦車へ・・・ ちなみに、攻撃型は砲弾が訓練用のコルク製の砲弾である。 数十回射撃すると、使えなくなるヤツだ。 それでも、味方に向けて砲撃できるから訓練用なのだ。 
 味方戦車でも、ソ連軍の役である。 もちろん、鹵獲したソ連軍戦車だ。 
国旗は日の丸である。 ソ連軍の戦車でも日の丸をつけると、なかなかいいものである。
 そして、満州国の日本陸軍派遣隊の印が・・・ 征露隊のマークの猛虎が描いてある。 
なぜ、猛虎かというと強そうであるからだそうだ。 まあ、単純なのだ、オトコというものは・・・

 さて、訓練がはじまった。 標的機の係員が飛行機の操縦カムを仕込む。 そして、燃料タンクにガソリンとひまし油を混ぜた混合ガソリンを入れる。 エンジンのプラグに蓄電池をつなぐ。 ペラを手で廻す。
 数回廻すと、「パラパラ、パラ。」と、廻りだす。 スロットを調整する。 やがて、安定してエンジンが廻りだした。 
 標的機は、カムが動作するにはタイムラグがつけてあり、その時間がくる前に、飛ばさなくてはならない。
なかなか、係員も職人技なのである。
  「いくぞ。」と、係員が標的機を両手で持って走る、そして斜め上へ投げる。
標的機は、ゆるやかに空(うえ)へ上昇する。 そして、十分なころ合いで、旋回を始める。
 やがて対空戦車の上へさしかかる。
「てーーっ。」と、車長が叫んだ。 「ダ、ダ、ダ。」と、短い連射だ。 吹き流しに銃弾が吸い込まれたような、吸い込まれないような。 吹き流しは、暖簾に腕押しだから実感が・・・贅沢な、悩みである。
 「つぎが、くるぞ。」と、誰かが・・・
「ん、どこだ?」「みえないぞ。」「音はするぞ。」「いかん、後ろだぞ。」
 あわてて、機銃座が廻りだす。 以前は手回しのクランクだ。 それなりだったが。
クラッチ操作で機銃座が、「おっとと・・・。」と、機銃手がバランスを崩した。
 「なにやっとる、間に合わんぞ。」と、車長が叱咤だ。
「うう、そんなこと言ったって・・」と、言いながら、「ダ、ダ、ダ。」と引き金だけは引いたのだ。
 「これは、いかん。」「座席ベルトをつけるか。」「でも、敵機から逃げられんぞ。」「ううむ。」

 こうして、対空戦車が対空戦の訓練である。 そして、攻撃型戦車は対空戦車を架空ソ連軍から守るべく・・・
「おい、そっちへ回り込まれたぞい。」「了解だ。」「間に合わんぞ。」「くそっ、地面のじゃりが・・・」
そうなのだ、戦車訓練場にはわざと砂利や丸太が転がしてあるのだ。 凸凹も造ってあるのである。
 「いったぞ。」「わかってるが・・・」「よし、ここはオレ達が喰いとめるぞ。」「いかん、動きが速いぞ。」
なかなか、架空ソ連軍は・・・なんせ、一杯がかかってるらしい。
 つまり、負けた方が酒保(軍隊内にある居酒屋)で、おごらねばならないらしい。
まあ、それくらいの賭け事は司令官も黙認であるのだ。
 方向を変えて飛ぶ標的機は、訓練に実感と相互の連携をもたらしたのである。


 
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