日本戦車を改造する。

ゆみすけ

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甲型と乙型の差。

優劣つけがたし・・・

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 戦車隊へ満州国の戦車工場から技師が訪問である。 
もちろん、仕事である。 暇だから、ではない。 理由は乙型対空戦車の使い勝手の調査である。
 それで、連日の訓練に励む、隊員が技師と懇談であるのだ。
技師は、戦車開発主任の山本主任である。 そして、戦車隊の隊員は、新兵三名である。
 「はじめまして、私は主任技師の山本です。」「戦車隊の車長の谷坂です。」「機銃員の辰野です。「運転の新井です。」と、自己紹介である。
 階級は胸のバッチを見ればわかるが、階級でモノをいう技師はいないのだ。(主任技師は少尉クラスである。)

 「では、対空戦車の開発技師として、使い勝手を本音でお願いしたい。」「もちろん、君らの今後には影響しない。」と、始める。
 でも、なかなか本音なぞ言えるわけがないのだ。 
「ん、ん、遠慮なくお願いしたい。」と、続ける山本主任だ。
 「では、車長からの感想ですが。」と、谷坂君がはじめた。
「訓練は、実際に空を飛ぶ標的を使うんですが。」「そうらしいね。」「最近は1機ではなくて、数機同時に飛ばしての訓練がありまして。」「ほう~ぅ。」と、感心する山本主任だ。
「それで、狙いをつけた機を指示するのですが、なかなか相通がうまくいかんのです。」と、こぼす谷坂君だ。
 「つまり、あの敵機だ、がうまく伝わらないと。」と、主任が問う。
「そうです。」と、車長だ。 なるほどと思う、が対処方法は?だ。
 「機銃員からですが、やっとカンがつかめてきましたので、それなりに機銃座を旋回させるのですが。」「うむ。」「うまく、止まらないのです。」「ブレーキが無いんです。」「・・・・」と技師が絶句する。
 そうだ、ブレーキを付けていなかったのだ。 忘れていた。 やはり、現場の声は大切だ、と納得する主任技師である。
 機銃座の旋回はエンジンからの動力で、クラッチを介して左右にベダルがあり、操作できるがブレーキをどうつけようか・・・
 
 「運転士はどうだ、なにか思い当たることはないかな。」と、水をむけるが・・・基本、車台は攻撃型戦車と同じであるから、何もないかな・・・
 「そうですね、学校でデーゼルの取り扱いは習ったのですが、現場は違いますから現場に対応した学習をすればと。」 と、苦言だ。 
 確かに、機甲科のエンジン学習が、現場には通用しないのだ。 それは、山本も感じていたが、陸軍学校へ意見具申なぞ・・・できはしないのである。
 「まあ、二度手間になるが耐えてくれ。」しか言えないのである。
エンジン技術は日進月歩である。 今は、デーゼルも燃料噴射ポンプを使っているのだ。
 それが、精密機械で、型が替わるのだ。 毎年のことであるのだ。
その変化に学校の教材が附いていけないのである。
 
 「それで、これは個人的な感想なんですが、いいですか。」と、機銃員の辰野君が言い出した。
「いいよ、遠慮なくいってくれ。」と、主任だ。
 「あのう、機銃員は憶測射撃ができないと役に立たないんです。」「・・・」「敵機の速度と距離を計算して、射撃する銃弾の到達時間も加味して、敵機の未来位置へ射撃するんですが。」「あ、あ、そうだな。」
「それが慣れないと、つまり職人技なんですが、実際に飛んでる標的ですから・・・訓練を繰り返すしかないんですが・・・」と、なかなか話がまとまらない辰野だ。
 「ふむ、なんとなく君のいいたいことは、わかったよ。」と、主任技師が慰める。
「いづれ、将来的には機械で狙いが計算できる時代がくるやもしれんからな。」と、将来的願望を述べる主任技師の山本であった。
 
 とりあえず、工場へ帰ったら対空戦車の甲型に旋回を止める足踏みブレーキをつけねばならん。
そして、乙型の機銃座のブレーキは、少し時間がかかりそうだ。
なぜなら、機銃座の旋回はエンジンの動力である。 そして、クラッチで左右を切り替えている。 
そこへ、ブレーキとなると、油圧シリンダー^の油圧ブレーキとなるそうだ。 設計から時間がかかりそうなのだ。
  こうして、それなりに山本主任は満足して工場への帰途へついたのであった。
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