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飛ぶだけの、模型飛行機。
操縦は、できないが・・・
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「それで、どう操縦するんだ?」と、今野が聞いた。 「えっ、操縦はできないですよ。」と、佐藤君だ。 「飛ぶだけなのか。」「え、え、それでも標的としては十分ですよ。」「でも、墜ちないか。」「いえ、障害物が無い限り墜ちませんよ。」「うむ。」と、イマイチな今野少尉だ。 はっきり、わからないのだ。 なんせ、模型飛行機は竹ひごで作るヤツしか知らないからだ。 「でも、こんな大きさで模型なら、竹ひごと和紙では無理じゃないか。」「そうですね、エンジンで飛ぶんですよ。」「なに?」「簡単なエンジンですよ。」「君は、作れるのか。」「え、え、旋盤があれば。」と、整備工場の旋盤を示す。 そして、佐藤技師は、その簡単なエンジンを旋盤でつくることとなった。 もちろん、空冷だ。 1気筒、の焼玉エンジンである。 2サイクルだ。 簡単なキャブレターを作り、ネジで調整するのだ。 エンジンの焼玉のプラグは、はじめはニクロム線を電気で熱するのだ。 エンジンが廻りだせば、電池はいらない。 燃料は、ガソリンとオイルの混合である。 戦車のエンジン部品の不要な部品を使って作るのだ。 材料は、いくらも転がっている。 プロペラは木製の2枚だ、1本の木を削る。 シャフトにネジを切り、ボルトでプロペラを止める。 エンジンの大きさは、手を握るくらいだ。 だいたい、三日で完成した。 もちろん、エンジンだけだ。 そして、テスト台へ取り付ける。 混合ガソリンを缶からゴムホースの細いやつ(戦車のエンジン部品)で手作りエンジンへ、そして、キャブレターのニードルバルブ(針の先みたいなヤツ)を適当に締める。 すこし、間隔がいるからネジを戻す。 プラグに戦車の蓄電池からのコードをつないだ。 そして、エンジンのシャフトへ付けたプロペラを手で廻す。 「プルン、プリン。」と、音だ。 また、廻す。 「バルン、バルン。」と、音が。 「きたぞ。」と、言いながら、さらに廻す。 「バリ、バリ、バリ。」と、マフラー(消音器)が無いから、すごい五月蠅い音だ。 「なんや、どうしたのだ。」と、人だかりができるほどである。 佐藤君は、キャブレターのニードルバルブを閉める。 エンジンはストンと止まった。 「おう、動いたのか。」「すごい音がしたが。」「よく、出来たものだ。」と、仲間が言い合う。 「これで、あとは飛行機だな。」と、今野少尉だ。 「しかし、エンジンは複雑だと思っていたが、意外に簡単なのだな。」と、今野がいう。 「まあ、模型ですからね。」と、佐藤君だ。 「それに、ガソリンとオイルの混合ガソリンを使うヤツは構造が簡単なんですよ。」と、謙遜する佐藤君だ。 実際、仕組みを理解していても、旋盤で作れるモノではないのだ。 蒸気で動く首振りエンジンから始めて、模型飛行機用の2サイクルエンジンまで苦労した経験があるからである。 あとは、朴の木の角材を削り、和紙を張って、模型飛行機を作る作業が・・・ もちろん、好きなことだ、休みなしに飯を食う間も惜しんで作る佐藤君であったのだ・・・・
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