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防空戦車、いや対空戦車だ。
機銃の弱点。
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「詰まるって、よくわからないんだが。」と、今野が聞いた。 「あ、あ、あのですね、銃身へ弾を機関銃に込めるとき詰まるんですよ。」と、上野技官だ。 「では、撃てないじゃないですか。」「え、え、そうです。」「なんか、対処法はあるんですか。」「それは、装弾数を減らせば。」「なるほど。」と、納得の今野少尉だ。 このころの銃には、当たり外れがあったのだ。 そう、精度の問題である。 旋盤で製造するんだが、手作業が多いのだ。 職人により差がでるのだ。 最終的にはヤスリを使って、手作業でスリ合わせである。 それで、銃同士の部品交換ができないこともあったのだ。 なんせ、半世紀前は江戸時代である。 チョンマゲの武士の時代だったのだ。 木造和船が半世紀で鋼鉄の軍艦だ。 そのような急速な発展をした国は、日本だけなのだ。 「戦車の機銃は詰まらないぞ。」と、今野がいう。 「それは、連続に銃撃しないじゃないですか。」と、上野だ。 つまり、駆逐艦用の対空機銃と戦車の機銃とは別物なのだ。 戦車内は狭いから、機関銃の装弾数は少ない。 それで、ババババ、なんて撃たない。 バ、バ、バ、バ、であるのだ。 「間隔をおいて撃てば詰まらないですからね。」と・・・「知らなかった。」と、今野少尉である。 まあ、専門外だ。 「上を飛ぶ飛行機へは連続射撃ばかりですからな。」とも、加える。 「じゃあ、弾倉を交換する人員が・・」と、今野だ。 「また、増員が・・」人材不足なのだ。 「佐藤君は、どう思うんだ。」と、今野が聞いた。 「海軍は弾倉を運んで、機銃へ装填する兵がいますからな。」と、佐藤主任だ。 「しかし、この戦車の機銃台では、無理ですよ。」と、言い切る。 「確かに、何人も入れない。」と、納得の今野だ。 「さすが、整備主任ですな。」と、上野技官だ。 「この防空戦車の肝といいますか、苦労したところが、自動装てん装置なんですよ。」と、上野技官がこぼす。 「えっ、なんですと。」「まさか、そこまで。」と、少尉と主任が驚愕だ。 自動装填は考えたこともない二人だったのだ。 「仕組みは?」と、佐藤主任だ。 「まあ、チェーンと歯車の組み合わせですが。」と、機構を解説する上野技官だ。 「なんか、振動に弱そうですね。」と、佐藤君だ。 そこは、さすが現場の整備主任だ。 弱点を、すぐさま見抜いてのである。 「しかし、このチェーンは他の仕組みへ改変できないんですよ。」と、苦労話を・・・ 「油圧シリンダーなら。」と、佐藤君だ。 「油圧シリンダー、油圧シリンダーか!」と、叫ぶ上野だ。 「そうだ、できるぞ、ありがとう。」と、上野技官は佐藤君へ感謝である。 「油圧シリンダー?」と、今野が佐藤君へ・・・ 「あ、あ、最近できたんですが、要は注射器ですよ。」「注射器の中がオイルで、注射針が作動する腕ですよ。」「どうも、パット浮かばないんだが・・」と、今野だ。 「では、図で説明しますよ。」と、手近の黒板に図を描く。 「飛行機の主脚のオレオとして考えられたのですが・・」 と、爆撃機の主脚のオイル・サスペンションを描く。 そして、「この原理で、穴掘り機械のシャベルを造ったそうですよ。」とも解説するのだ。
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